にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
頰がふれあいそうなほど近いところに松本さんがいる。
ムスクの香り。二宮さんとは、違う香り。
少しして松本さんは離れた。でも、手は握ったままで。その手は、大きくて。ごつごつしていて。それも…二宮さんとは違う。
「直生ちゃん。男の人を好きになったことある?」
優しい声。煮え切らない私に、怒ってもいいはずなのに。
「わ…からないです…」
「男性とお付き合いしたことは?」
「ありません」
「そうかあー……」
大きな手が私の手から離れて、そしてふわりと頰を包む。
びくっと体が震える私を宥めるように、親指が唇をそっと撫でた。
「残念だな。直生ちゃんの第1号になりたかったんだけど」
松本さんは寂しげに笑った。
「二宮さん、向かいの店にいるよ」
「……え?」
外に向けようとした顔を、松本さんの手がそっとおさえた。
「ふふ。気付かないふりしてようか。二宮さん、どうするかな?」
その言葉に、ふいに寂しくなる。
「…なんにも、しないです、きっと」
琥珀色の…二宮さんの瞳の色のカクテルを口に含む。
苦いけど、甘い。期待を持たせるような甘さ。
急に腹立たしいような気持ちになってカクテルグラスを一気に傾けた。
「直生ちゃん!」
慌てたような松本さんの声が届くと同時に飲み干した。
「甘いのはいりません。辛いのください」
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店の中は薄暗い。それでも、ふたりの顔が触れ合うほどに近づいたことくらいはわかる。
しかし……どこか、おかしい気がする。ただの勘だけど…
あいつは俺がここにいることに気付いているんじゃないか?
俺に見えるように…わざと……
腹の底がざわざわする。
挑発…?でも、なんのために?
「カズ。吸い過ぎだよ」
翔ちゃんにそっと手を抑えられ、見ると灰皿は山になっている。
チッと思わず舌打ちがもれた。
「帰る」
「カズっ!」
翔ちゃんと水野の制止の声を聞きながら、俺は店を出た。