にのちゃんとの妄想小説です。BLではありません。女性との絡みがあります。苦手な方はご遠慮ください。
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人気のない道を選んで、俺たちは川沿いの道に出た。
アスファルトの道路から階段がのびていてそこを降りたところに遊歩道があり、
朝夕は犬の散歩をする人やこどもと散歩する人がたくさんいる。
それでもさすがに24時を回った今は、そんなところにいるのは自分たちのことしか目に入らないカップルか、
脇目もふらずに走るランナーくらいだった。
りんご飴を握りしめ、時折目の高さまでそれをあげて見つめながら、俺の手をぎゅっと握り歩夢は機嫌よく歩く。
そんな様子が無邪気で可愛らしくて、近頃ふさぎがちだったから俺も次第に心が晴れてくる。
気付けば俺は歌を口ずさんでいた。
明日を眩しいくらいにうまく描こうとして
僕らはキレイな色を塗りすぎたみたい
ちょっとカッコ悪いことも壊れたユメの色も
パレットに広げもう一度明日を描こう
俺はこの歌の翔ちゃんのソロが好きだ。
「明日を眩しいくらいに」の「あー」と伸びる部分を、なんの技も効かせずに歌えるのは本当にすごい。
翔ちゃんの真っ直ぐな歌声は本当にキレイで…何度聴いても胸を打つ。
そんな翔ちゃんの声を思い出しながら歌っていたら。
隣から、1オクターブ高い小さな声が聞こえた。
悲しいページなんてなかったことにしようとして
ぼくらはいくつも色を重ねてしまった
きっと塗りすぎた色って白に戻れないけど
それでいい 新しい色で明日を描こう
まだまだ空気の洩れる声量のない弱い声。
それでもその声には全く雑味がなく、空間をただただ真っ直ぐ進む光のような神々しささえ感じた。
俺は思わず歩夢を凝視した。
歩夢は、仕事部屋で見せた、あの女神のような表情で歌う。
俺の視線に気付いて照れたように笑い、
【これすき】
と手の平になぞった。
そして
【ちょっとずつ】
【うたうれんしゅう】
【してた】
鬱ぎ込む気持ちを歩夢は自分でなんとかしようと、俺のいないところで努力していたんだと思うと、
ふつふつと湧き上がる感情が抑えきれなくなって俺は歩夢の腰を強く引き寄せた。
このときの感情を、今でも俺は名付けることが出来ない。
強いて言えば…独占欲に近いだろうか。
この声を誰にも渡したくはない、いつまでもおれの腕の中に囲っていたい、そんな気持ちのようだったと記憶している。
歩夢の本当の気持ちを、俺は全く読み取れていなかったことにこのとき気付いていれば。
俺たちは同じ道を歩いていけたのかもしれなかったのに。