嵐・二宮くんの妄想小説です。BLではありません。
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トイレに入り、個室に駆け込む。
震えが止まらない。
こわかった…。目に涙が滲む。
久しぶりの宴会で、久しぶりに触られた。
若い頃はしょっちゅうあることで、さわさわと手を這わせてくるおっさんは気持ち悪かったけど、
毎度のことで慣れてもいた。少しの間我慢すればいいことだったし。
でも結婚してからは宴会自体にほとんど出席しなくなってそんな慣れはなくなってたし、
年を取ったしもう触られることなんてないと思い込んでて。
…智からも長い間触られていなかったから…。
男性そのものに触れられることにすごい恐怖を感じてしまった。
二宮くんに助けて貰えて良かった…。
早く出て行かないと二宮くんが心配してしまうかも。
ふうっと深呼吸して、自分で自分をぎゅっと抱きしめたら、良かった、震えはおさまった。
個室を出て手を洗い鏡を見ると、ちょっと顔が青いようにも見えたけど、蛍光灯の加減だと言えるレベル。
よし、大丈夫。
トイレを出て外の喫煙所に向かった。
うーん。ちょっと頭がふらふらする…。
でも多分、はたから見たらわからない程度に早足で歩けるし、頭を急に動かさなければ大丈夫なことは経験上わかってる。
気をつけて歩こう。
ドアを開けて外に出ると、二宮くんが新しいタバコに火をつけるところだった。
コツコツとヒールの音で気付いてこっちを見る。
「ありがとう二宮くん、助けてくれて。」
二宮くんの隣に立って、タバコに火をつける。
酔ってるときのタバコはあんまり美味しくない。
しかも、次長の相手をするのに甲高い声を出していたから、喉が痛くて、煙が喉を直接攻撃してきて思わず噎せた。
ゴホッゴホッ…
咄嗟に二宮くんと反対方向を向き、波をやり過ごす。
「大丈夫ですか?」
二宮くんの視線を感じ、噎せたことで浮かんだ涙をパチパチまばたきしてまぶたの中に飲み込ませ、
大丈夫、と答えようとしたけど喉がガラガラで声が枯れて、んんっ…と咳払いをした。
「ちひろさん?」と顔を覗き込まれ、慌てて上を向いて「大丈夫だよ?」とやっと出た声も掠れてた。
やばい!ふらーっと酔いが急に回ってきた!頭を急に動かしたから…。
一瞬目の前が暗くなり、何かにつかまろうと咄嗟に出した右手を、二宮くんが掴んだ。
「ちょ、やばいんじゃないですか?」
足を後ろに一歩引いてなんとか踏ん張れた。
ぎゅっと目を瞑り、上から降りてくる黒い闇をやり過ごす。
そっと目をあけると、二宮くんの心配そうな顔が見えた。
「ちひろさん?目が潤んでる…。大丈夫?中入って座ります?」
一度回ってきた酔いはもうおさまりそうになくて、頷くしかなくて。
私の左手からタバコを抜き取り火を消して、二宮くんの左手につかまった私の右手を一旦離させて二宮くんの左腕につかまらせてくれた。
「歩きますよ?」
こくんと頷くと、二宮くんが足を踏み出したけど、腕につかまろうとする手にも力が入らないし、足も全く動かない…。
するっと右手が二宮くんの左腕からはずれ、腰が砕けて地面に崩れ落ちそうになる。
寸前で、二宮くんに二の腕を掴まれなんとか座り込まずに済んだけど、朦朧としながらも、
二宮くんにこれ以上迷惑かけられない…と思った。
「に…のみやく…ん…」
「ちひろさん!あとちょっとだから!」
二宮くんの声に焦りの色が混じってるのがわかる。
「だ…いじょぶ…だから…。そこ…のべ…ンチ…。」
喫煙所のすぐ脇にベンチがある。もう室内までは歩けなさそうだからとりあえずあそこに座らせてもらえたら、二宮くんも私から解放されるし…。
「いや、でも外じゃ!寒いって!」
二宮くんが言うけど、だってもう歩けないし、そろそろお開きにしなきゃいけないだろうしね?
もう声を出すのもつらかったけど、二宮くんに手を離してもらわないといけないし、掠れる声でなんとか伝える。
「は…やくいか…ないと…も…おわり…のじか…ん…」
二宮くん、腕時計で時間を確認したみたい。あっ…と小さい声が聞こえた。
「…わかりました。お開きにしたらすぐ来るんで!」
二宮くんに二の腕をつかまれ腰を支えてもらいながら足に力を入れて少しずつ進み、やっとベンチに座れた。
「ごめ…」
「謝らなくていいですから!」
二宮くんは怒ったような口調で言ったあとスーツのジャケットを脱いで、ぐったり座り込んだ私にそっと掛けてくれた。
智とは違うタバコの匂いがするな…。
ジャケットのぬくもりにちょっと安心して、ぐるぐる回り続ける酔いと闘うのを私は放棄した。