喫煙所で居合わせた同僚や上司、後輩とは、その時々によって雑談したりしなかったり。


二宮くんはこの年末までは主人の課の一員だったので、喫煙所で一緒になると、それなりに喋る間柄だった。


喫煙所を出ようとしていたところに、「新年会、行かないんですか…?」と話しかけられて、


足を止めて、二宮くんの顔を見た。



二宮くんは煙を吐き出しながら、にっこりした。


「僕、新年会の幹事なんですよ。」




二宮くんの指に挟まれたタバコはまだ長く、私は二宮くんの隣に立ち、2本目のタバコに火をつけた。


「幹事かあ。大変ねえ。ま、でも若いうちは仕方ないよね。」


と返すと、二宮くんは眼をまん丸にして私を見た。


「ちひろさん…。僕のこと、何歳だと思ってます?」



「へ?にじゅう…はちとかきゅうとかでしょ?灰、落ちるよ?」


二宮くんは慌てて長く伸びた灰を灰皿に落とすと、口をとがらせながら、


「ひでぇなあ〜。僕、もう34ですよ?」と不満気に返してきた。



「え⁈ほんと⁈ 34?」


びっくりして思わず大きな声を出し、まじまじと二宮くんを見た。



色白で華奢な身体つき、つるつるなほっぺ。


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…とても30代には見えない。



「そっかー、二宮くん34歳なんだあ。


なんかさー、自分より下の子たちって、いつまでたっても若いままの印象なんだよね。


…ってか、なんでその年で幹事やるの?」



不思議に思って問いかけると、二宮くんはふうっと煙を吐き出して、片側の口角だけあげて笑いながら、


「中居次長が部長になったじゃないですか。


早速部長権限出してきたんすよ。毎年うちの部は幹事は新人の役目でしたけど、


段取りが悪いから今年から新人じゃなくて新任係長がやれって…。」


そう言ってまた口をとがらせる二宮くんは、やっぱり34歳には見えなかった。


とは言っても、そういえば二宮くんは係長に昇格したんだった。



顔は幼くても、人懐こくて口が達者な二宮くんは、同期の子より一足早く係長になったんだ。



主人、智も、二宮くんのことは可愛がっていて、智のプッシュもあって、今年昇格できた。



「まあまあ。うまくやれば中居部長が可愛がってくれてこれから仕事がやりやすくなるんじゃない?


係長の手腕発揮する最初の舞台だと思って頑張んなよ。」



そう励ましながらタバコの火を消すと、二宮くんが真剣な顔で私を見てきた。



「ところでちひろさん。本当に新年会出ないんですか?」


「? 出ないけど…。」


「僕、ちひろさんにお願いがあるんですけど、聞いてもらえます?」



にっこり微笑む二宮くんがやけにかわいく見えて、つい、


「お願いって何よ?」と聞き返してしまったのがこの運命のはじまりだったのだろう。