安倍元首相が狙撃されて一週間が経過したが、国内外からの賛辞をマスコミは連日報道している。海外からは今後このような偉大なリーダーは出ないであろう的な最大級の弔意、日本では自民党のみならず全ての議員から死を惜しみ功績を讃える声ばかり。安倍のかつての負の遺産に言及する人は一人としていない。まあ、海外の人は日本国内の政治に言及する立場にないから、通り一遍の儀礼的弔意を示すのは普通のこと。ただ日本国内においては。被害者が元首相であるし、衝撃的な事件であったから、今はじっとして哀悼の意を表し、余計なことを言って世間の非難を浴びるのは得策でないと考えてのことだと理解できる。

政府は日本の最高位の勲章にあたる大勲位菊花章頸飾(けいしょく)を贈ることを決めた。大勲位菊花章頸飾を受章するのは吉田茂、佐藤栄作、中曽根康弘各氏に続いて4人目で、大勲位菊花章頸飾は天皇陛下が身に着けられる最高の勲章だそうである。このくらいのことは予想の範囲内だったし、やりたい放題自民党だから党葬は絶対と予想していたが、やはり国葬ですか。

国葬とは、せめて全国民の誰もが納得して行なわれなければならないのではないでしょうか。いや、ちょっと待って。議員、コメンテイター、インタビューを受ける全ての人は安倍を讃えている。増上寺での葬儀には数千人の参列者、現場では今も献花をして手を合わせる市民が後を絶たない。驚くばかりの数だ。

こういう報道を見る限り、国民は国葬を当然の決定と喜んでいるということなのですか。この一週間、ずっと違和感と不快感が収まらなかったのですが、これまで安倍を批判してきた野党をはじめ有識者が間違っていたということですか。そうですか。安倍さんが今後不世出な偉大な政治家だったとは存じませんでした。大変失礼致しました。

不慮の事件で命を落とされた安倍さんは大変お気の毒ですが、これであなたが残された負の遺産は全て闇の中になりましたね。モリカケも桜を見る会も118回の虚偽答弁も何もかも今後追及されることはありません。よかったですね。ただ負の遺産を闇に葬りさらせてしまった今回の犯人はとんでもない余計なことをしてくれた。その意味でも決して許せません。

国民にこんなにまで愛されていた安倍さんなのだから、四十九日は皆で喪に服しましょう。でも四十九日が過ぎたら、野党、有識者のまっとうな意見と行動が再度活発化することを切に願うばかりです。