昨日、「男はつらいよ50 お帰り寅さん」を観てきた。まだやっている映画館があってよかった。約2時間、滲み出る涙と鼻水をハンカチで押さえながら、青春プレイバックの世界に没頭した。冒頭の「じゃーん、ちゃちゃちゃらちゃちゃーん」という音楽を聴いただけでもう胸が一杯で締め付けられた。何せ自分の20歳から50歳の約30年間、共に歩んできたといえる作品だからだ。勿論48作全部観ている。最後の方は渥美清さんの体力的問題で年一作になってしまったが、それまではそれこそ盆と正月の恒例行事のようになっていた。池袋か新宿の映画館に欠かさず足を運んだ。破天荒でめちゃくちゃな寅さんだが、映画を観終わって、何故か清々しい気持ちで映画館を後にしたことを思い出す。

 

勿論、きちんとしたストーリーはあるが、当時の出演者の多くが鬼籍に入ってしまっているので、全体の何割かは過去作品からの登場だが、これが懐かしく楽しい。当たり前だが、みんな若い!マドンナ役の女優陣も数秒ずつではあるが、ほとんど紹介されている。いやもしかしたら全員登場してくれたのかもしれないが、なにせあまりに若過ぎて誰だか直ぐには判別できないマドンナも多い。(笑)

 

作り話とはいえ、あんなハチャメチャで自分勝手な奴が身内や身近にいたら、本当に迷惑この上ないだろう。なのに誰からも愛され、特に光男は寅さんに一目置いていた。こんな不思議な寅さんを生み出した山田洋次監督は凄い人だ。金も名誉も教養もない寅さんが、映画の中で教訓満ちたことをいうことがしばしばある。

過去作品の中から、こういう場面があった。光男の「人間はなんの為に生きるんだろう」という問いに「生きてるうちには何度か『ああ、楽しいなあ、幸せだなあ、生きててよかったなあ』と思うことがあるだろ。そういう時の為に生きてるんじゃないか。俺はそう思うよ。」と、(正確ではないが)こう答える。この小さな喜びの為に生きている、ということ。自分もぼんやりではあるが、同じように考えていた。

 

単に昭和世代だからに過ぎないかもしれないが、昨今の凝りに凝った画像づくりや耳をつんざく音響でない映画を落ち着いて観ることができて嬉しかった。今回も昔のように余韻に浸りながら清々しい気分で映画館を後にした。