【九 朔 手 帖】
8日(日)の音羽屋・八代目尾上菊五郎&六代目尾上菊之助襲名披露公演@歌舞伎座を観て以来、どうも身体が歌舞いてたまらない。
丁度、よさげな映画「国宝」と言うのを見つけたので、ネット予約をし出向いたユナイッテドシネマ浦和パルコ。
3時間と言う、映画にしては長尺。
こりゃあ、背中がもつのか?ランチ後で、眠くならないか?、、、
とんでもない、此の三時間は全く途中、時間の事を考える隙が無かった。
アッと言う間の三時間。
えらい映画にぶち当たったものだ。
前評判もいいんだろうな?!半分近く席が鑑賞者さんで埋まっている。
これは、ヒットするね。
でも、暗い、重い。
歌舞伎を客席から見るのではなく、舞台裏を存分に見せる映画だ。
舞台裏の、その世界の表も裏も。
「京鹿子娘二人道成寺」のシーンなんか惚れ惚れした。
李相日監督、やってくれましたネ。
有難う~~せっかく歌舞いた身体が乾かない様にと、水を、新たなエキスを与え入れてくれました。
まあ、全ての役者がよくもまあ、揃いも揃い目いっぱい演じ切ってくれたものです。
個々の実力、力はあるが、やはり李相日監督なくしては、先ず第一に成り立たないような。
それと、あまり歌舞伎界を良く知らない方には、少しだけ不親切と言うか?でも、そこまで懇切丁寧に説明的に描いたら、映画の良さが薄れるし、四時間になる(爆)
ついてこれなけりゃあ、別にイイよ!的な感じも、何だかいいなあ~~。
始まりの部、宮沢エマさんって、こういう役上手いよなあ~~。
永瀬正敏、どういう訳か見たことある様な役者だなあ~~で、エンドロールのスクロール画面に名が出るまで気付かなかったのは私だけ(笑)
少年期役の二人も、個性の違いがジンワリと出ていてイイワ。
って、順を追って一人一人触れていたらキリがない。
寺島しのぶ~~~~、もう、歌舞伎界の本物が演じるから、役柄の味も個性も雰囲気、服装まで何も言う事は無いね!もう、実際こうなんだろうなあ!って説得力半端ない!ヨッ音羽屋!!!
勿論、渡辺謙に(まあ、いつも通り!(笑))主役の二人~~。
喜久雄と俊介が吉沢亮と横浜流星。
う~~ん、吉沢亮に流星くん、乗りに乗っているね。
でも、個人的な思いで言うと、田中泯さん。
<2028年03月15日@成田山新勝寺>
妖怪の様な役を、よくもまあ~~。
やはり、芸の道は通ずるのか?
舞踊の方が、違う舞の歌舞伎の舞に、女形の人間国宝役を、しっかり泯さんワールドで演じ切ってくれて、此の人の役、此の人の演技も強烈。
此の、配役は凄い!
バックに流れるのが、主題歌♪「Luminance」♪。
原摩利彦が担当し、作曲。作詞には坂本美雨。歌は、井口 理。
これが、まあ、この重い暗い映画に、暗く静かにモノクロの様な彩を添えている。
芸の「才に技量・力」と「血」。
喜久雄がどんなにもがいても、絶対に手に入れられないのが“血”。
その血でだけでは超えられない才能・技量へのもがき苦しみを背負う、俊介。
その二人の葛藤と人生のアップダウンを対照的に描く。
一度は手にした名声も、血と言う壁に負け、シルエットして行く喜久雄。
血のお陰で返り咲くも、その父から受け継いだ“血”、正に物理的生物学的な血、その為に逝く俊介。
勝った負けたではないが、最終的には勝ち残る、悪魔に魂を売った喜久雄。
音羽屋襲名披露公演で、華やかで豪華な、サラブレッドの祖父・子・孫の舞台を観ただけに、血、その為に逝く俊介に、この喜久雄の葛藤は、又考えさせられる重さが、、、。
しかし、あれだけスキャンダルまみれで叩かれ、極道の倅と言う血を持ち、背中にモンモンを背負い、ドサを味わった人間が、果たして復権したとしても、人間国宝になれるものなのか????
歌舞伎界の事には明るくないが、これに近い例も実際にあるのか?
まあ、隠し子レベルは、團十郎の様にそこら辺に普通にありそうだが。
ちょっと、泯さんが再登場した辺りから、舞台は急に大きく展開するのだが、、???ウン?と言う、一寸、何だか急ぎ纏めた感があり、少し浅く成った様な感もある。
何れにせよ、傑作だとは思う!思うが、今の自分には暗い重い悲劇は要らない。
だから、良い作品なんだろうが、二度とは観なくてよい(笑)