【九 朔 手 帖】
恥ずかしながら、歌舞伎座が新しくなってから公演に行くのは、実は今回が初。
だから、どれだけ久しぶりの歌舞伎鑑賞になるのやら、、、とんと思い出せない。
但し、以前の歌舞伎座へは、公演以外でも定期的に寄らせて頂いていた。
これが、仕事だと格好がつくが、売店に寄らせて頂いていた。
私が舐めている「のど飴」が、当時は、赤坂の豊川稲荷と、ここ歌舞伎座の1階売店でのみ販売していたので、どちらかの近くへ出向いた際に、買い溜めをしたものだった。
今の様に、地下2Fの木挽町広場の様な物が無かったので、1F正面入り口で趣旨を伝えると、大らかにも買い物へと道を開けて、通してくれたのだ。
飴の名は「大根生姜飴 鈴木哲商店製」
今回の襲名披露公演は、歌舞伎から遥か遠ざかった身にも、流石に自然、その情報は入って来ていた。
飴違いだが、
龍角散のCM一つをとってもネ。
そこで、来たのが青学の校友会からのお知らせ。
青山学院総見の場を作った、との報。
そうだ、青学って梨園の皆さんの多くの出身校なんだよなあ、フムフム。
日付は?
六月八日(日)大安。
六と八、、、オッツ!六代目菊之助と八代目菊五郎だ!!
これは、久しぶりに行け!!!て、事だ。
と、こういう他人様からすれば、どうでもイイ事に拘り、又、そう云う事が大好きな身。
青学総見は、日付と回も指定で、夜の部。
選択肢が無いので、その分、迷いが無い。
後は、席。
これは、悩んだ。
本当に久しぶりだし、行く以上は舞台近くの1階「と」「ち」「り」席くらいで行こうか?ポールマッカートニーの18、000円とかからすると、まあ出せない金額では無いし。
今日の外タレは、もっと普通に高かったりもする。
で、此れはさんざん迷った挙句、余りにも久々の歌舞伎なので、勘が鈍っているから、出だしは緩やかに、又、他で一寸色々と出費が嵩んでもいるので、自重の3階のA席で手を打った。
情報を頂き、購入するための体制の手続きをし、発売開始日まで待っての→4月購入。
それからも、当日までだいぶ日があった分、かなり日が近づくにつれ楽しみ感がマシマシ。
普段、必要最低限、それも電車が混まない時間を狙っての外出の往復を常とし、特にそれが都内で夕刻からとなると、草深い処に住む身には、かなり無言のプレッシャーが。
銀座周辺へ出向くのは、おそらく3~4年ぶりになるのか。
その分、遠足気分も手伝い朝から落ち着かず、早々に出向き、あの近辺ではいつもの立ち食いそばに。
いつもの珈琲を飲み、
観賞用飲料をゲットし、
やはり早々に歌舞伎座イン。
此処は、建物が、東銀座の雑踏の通りに直ぐ面していて、何時も公演の前後は、ひと際ごった返している感が半端ない。
皆様、そう、妙齢の紳士淑女の皆様方が、襲名の二人の看板や青学総見の立看前での撮影に忙しい。
又、少し此れが他の劇場と違い、歌舞伎座独特の空気感も良い!
襲名披露公演配布ハガキも楽しい。
襲名6月公演への祝幕は「ティファニー」製。
何とも菊と富士山の和風の題材ながらも、お洒落。
此の展示衣裳の華やかさと来たら、もう。
さて、堀田宣彌(ほった のぶみつ)青学理事長の挨拶。
他の階は判らんが、値段のせいか周りは親子ファミリーが多い。
どうもこの子達は青学児童だなあ~~菊之助君と近い学年の。
梨園児童が通う、私学小学校の母の空気感の若いママたちが沢山。
青学総見と言う事は横に置いておいても、小学校で歌舞伎なんか連れて行って貰った事無いゾ!!!
でも、今は埼玉の草深い処へ引っ込んでいて、ついつい気を抜くと言うか、ご近所外出モードにすっかり馴染み切っていた身には、こういう刺戟は有難い。
やはり、近所のスパーでの買い物、せいぜい地元駅前、頑張って近くの駅での映画鑑賞とは、服装も気持ちも自然変わって来る。
気を使わないリラックスモードも、気負いがなく精神衛生上大切だが、たまにはこういった場所、こういった空気に身を置くのも大切だ!ホント。
さあ、幕開き。
夜の部、幕あけ演目は、何と「暫」。
オオッツ~~ああ~~
これだよこれ!もうずらりと並んだ役者の数に、この鮮やかな総天然色。
もう、瞬間で元が取れた。
来て良かった、大正解。
満足満足。
何故か、居並ぶ役者陣を目にした時に、瞬間的に思ったのは、東寺講堂のあの世界だ。
圧倒的な21体のみほとけ群。
オールスターの顔見世、それも、俯瞰で。
東寺も、俯瞰で眺められたら、いいだろうな~~。
本当に、この景色を拝めただけで、もう帰ってもヨイ!とさえ思えた。
此方は21人より、はるかに多い(笑)
縁があるね~~成田屋さんの歌舞伎十八番。
海老蔵が團十郎がどうだの、好きかどうだのは二の次。
40年以上通う成田山檀信徒気取りとしては、これはもう何をおいても嬉し過ぎるスタート。
正に正真正銘の團菊祭り。
流石、竹馬の友は襲名披露公演に花を華を添えてくれる。
鎌倉権五郎影政、この化粧メイクにこの三桝の衣装、これぞ私が歌舞伎と言うと先ず思い浮かべる姿。THE歌舞伎。
花道に現れるやいなや、青学向け口上は笑えた~~いいね、そのショウマンシップ。
海老蔵に続き、菊之助も今こうして襲名をし、これから新しい團菊のスタートなんだなあ~~
我々、客1964人(東京オリンピックかい?(笑))の“おこり”を、鎌倉権五郎影政さんにしっかり落として頂き、さあ、愈々「口上」也。
いいねイイね、仁左衛門、松緑、【七代目、八代目、六代目菊之助】團十郎に梅玉と、裃つけずらりと並んでの口上、イヨ、松嶋屋~音羽屋~成田屋~高砂屋。
襲名ならではの、この景色、おおいに楽しめた。
さあ、そして「連獅子」
右近と左近の獅子の、そして精の踊り舞も見事だけど、二つの演目を通して、菊五郎の優しさと、そして役ではなく本当に菊之助が可愛くて愛しいと言う父の思いがヒシヒシと伝わって来て、自然と泣けてしまった。
此の親子、いいよイイ。
六代目菊之助、丑之助くん、生まれた時から運命が決まっていて、定めから逃れることが出来ない大変さもあるでしょうヨ。
でも、人は色々悩んで呻吟してどう生きるべきか、何をすべきか?したらよいのか?と思い悩みながら大きくなっていく中、貴方は誰でも出来る事では無い道が目の前に開けていて、公演が始まると学校にもそうそう通えないでしょうが、学びの場が目の前に、父が人生の師として存在する。
何と、両祖父が人間国宝。
<神田明神お練りでの奉納舞>
本当に堂々としていた。
音羽屋さんの系譜のふっくらとした優しい品の良さだけでは無い味わいが有る、風貌。
此れは完全に吉右衛門の血ですね、顔立ちとか。
スウィート&ビターが上手く融合したハイブリットな香りが既にしますよ、ハイ。
間狂言の愛之助に獅童。
此れだけでも、大満足な客人も多いはず。
イイ感じで、笑い共々メリハリを連獅子の中に入れてくれました。
息と間もピッタリだった。
歌舞伎の良さに、「間」がある。
それは休憩時間の間でもある。
そこで、トイレや食事や知り合いが居れば、その席へ声掛けに行ったりやら、、、と、正に真っ暗な中、息をつめて一気通貫で観る映画などとは違い、芝居見物なのだ。
芝居が始まっての客電も、ほの明るい(笑)
一幕が終わると都度休憩が入り、いきおい、時間も長丁場で、今日は4時間20分位。
BOLTENには流石に此処だけはキツイ点で、やはり背中が軋んで来た、、、。
次は、此れ又楽しい人情物の、落語でもよく知られる「芝浜革財布」。
が、もう座っていられない。
此処まで十分に楽しませて頂いた。
欲をかかず、ここは一番、我慢。
帰りの電車の心配もあるし、今日は此れで良しとしよう。
お陰様で、此の時間の外の劇場前では、ゆったりと写真が。
今日もお陰様でご機嫌、そして頭のてっぺんから足の先までずっと歌舞いている。
幸せでいい気分。