木村カエラの最新アルバム「Scratch」は、彼女のアーティストとしての成長・飛躍を強烈に感じさせる一枚であるが、

私がその中でも一番に好きだと感じたのは、「never land」という楽曲である。

前作「Circle」でも作曲を担当した、クラムボンのミトによる作曲なのだが、この唄は、ずば抜けていい。


ミトの、どこか繊細でうっすらと感じるメランコリックさを、カエラが強く唄いきることで、ひとつの世界観が出来上がっている。

なによりも、サビに入った瞬間の、「うつくしさの爆発」とでも呼ぶべきかのような、心臓を一瞬にしてつかまれてしまうかのようなエネルギーの強さは格別である。

カエラ率いるバンドたちの、エッヂの効いた鋭利なサウンドに、ミトが作り上げる繊細で圧倒的なうつくしさが混ざり合うことで、音楽としての途方もないうつくしさが出来上がっているのである。

言ってしまえば、この二つの要素は本来ならば相反してしまう要素なのだが、この「never land」という楽曲においては、まさにほどよい互いの<強さ>で、ぴったりと調和している。

そして、その調和のバランスをとっているのが、まぎれもなく木村カエラなのである。

カエラが「LET ME KNOW」と切々と、しかしはっきりと歌い上げることによって、これらの統率を一気にとってしまうのだ。

そこにあるのは、まぎれもない木村カエラのヴォーカリストとしての存在感によるものだと思う。


木村カエラの唄は、うまいとか下手だとか、そういう技術的なもので測れる存在ではない。

彼女が唄をうたおうと、声をあげた瞬間に完成されているものなのである。

たしかに、それを構成する一部として技術的な部分もあると思う。

それでも、そんなものは、本当に付属の要素でしかないとわたしは思うのだ。

木村カエラが唄をうたう、その瞬間に、圧倒的にカエラは勝者であり、そのヴォーカルはたしかなものになっている、と感じるのだ。



特にこの楽曲に関しては、そんな、鋭利なサウンドと、音自体の美しさ、そしてカエラのヴォーカルという、見事な「3重奏」に魅せられる。

強さの奥でじんわりと滲む繊細さや、激しさの中にあるメランコリック、そして弱さの中にある強い意思までをも感じさせられる。

こういう楽曲は、実はそうそう生まれるものではない。

そして、そんな奇跡的な楽曲を、思い切り「カエラ」という存在の一部にしあげている、木村カエラのアーティストとしてのスキルの高さに、感嘆せざるを得ない。

聴いた瞬間に、自らの全てをつかまれてしまうかのような、そんな強い力を持つ一曲である。