香川照之の最優秀助演男優賞の受賞も記憶に新しい、「ゆれる」を観た。


実に緻密な映画だったと思う。

導入部のシーンにおいて、小さではあるが決定的な<要因>たちが、たくさん散りばめられている。

そしてその散りばめ方、同時にそれの映し方が、女性監督ならではの見方で描かれているのも印象的であった。

こういう映し方、映像の見方は女性だからこそできたものだと思うし、西川美和はそれをうまくやっているな、と感じた。


内容についてなのだが、あまりにもエグい。そしてそれは、リアルが故である。


兄は、才能も自由も(もっといえば、好意を寄せていた幼馴染の女性までをも抱いて「ものにした」という事実をも含めて) 持っている弟を羨み、

弟は、誰に対しても優しく公平な兄の姿に劣等感を覚えた。

そしてそんな、兄弟が兄弟であるがゆえの劣等感・そして同時にある優越感、葛藤は、

<日常>という中においては、それぞれの中に押し込められ、<兄弟>という均衡は見事に保つ事が出来る。

しかし、「橋」でおきてしまった事件のせいで、押し込められたそれらはあふれ出してしまう。


何よりも顕著なのだが、弟の記憶に関する部分で、弟は、唯一 <事実>を見ている人間なのである。

しかし、彼が思い出そうとする、記憶している<事実>は、あらゆる可能性のうちのひとつであり、そして同時に、彼の兄に対する意識が顕著に現れているのである。

そんな意識を効果的に表しているのが、裁判における検察側と弁護側の意見であり、この二つの意見は、恐らく弟の中で行われているの意見のせめぎあいにも似た部分なのかもしれない、と少し思った。



橋がゆれたことで 起きてしまった事件で、

兄弟の関係までもが ゆらいでしまった。

リアルな描写には、人の心の弱さが秘められている。

だからこそ、せつないのだ。


「ゆれる」。まさしくぴったりなタイトルだったと思う。

久々にこんなに、逃げ場のない、穴のないせつなさを映画で感じた。