「迷彩」 椎名林檎
椎名林檎の3rdアルバム「加爾基 精液 栗ノ花」に収録されている、この曲。
シンメトリィとして、対称になっている曲「意識」は、云うなれば 「生」への戸惑いを抱えた、思春期の人間の複雑でヘヴィな心境が唄われているが、この「迷彩」という曲は、一言で云えば「性」への戸惑いなのだと私は思う。
イントロの「ねえ一層~」の、椎名林檎の声は、まさしく「妖艶」であり、うつくしい。
全体的に漂うジャジーな雰囲気は、女の気だるさを匂わせ、その気だるさに、聴く者は恍惚としてしまう。
しかし、この作品に描かれた「性の戸惑い」は、それこそ思春期の少女が求めていた、自分自身のリアルなのだと思う。
歌詞の中に、「剥いだ素肌に恐怖色」というフレーズがある。
わたしは、このフレーズに、どうしようもなくシンパシィを感じたのだった。
性的な関係になることにより、剥がされるもの。
そしてそれによって映し出される「素肌」。
それに、どうしようもなく「恐怖」する。
それこそ、一瞬にして冷静さを取り戻し、心臓が壊れるほど、苦しさを覚える。
相手の「性」を、ふとしたきっかけで感じることにより、思春期の少女は、「自らの性」を改めて突きつけられ、愕然とするのである。
自分自身にある子宮、乳房、すべてが「女」であることを示し、その事実と、その重さに少女たちは息苦しさを覚える。
それはまさしく「恐怖」」なのだ。
少女たちは、「性」に対して常に戸惑っている。
彼女たちに与えられた性は、それほど重いものなのだ。
そんな、「性の戸惑い」を、こんなにもヘヴィで、かつ自嘲気味なまでの鮮やかさでうたっている曲は、わたしは初めてだった。
思わず口ずさみたくなる心地よいメロディに相反するほど、切実な、思春期の少女の戸惑い。
こんなにも鮮やかに表現する林檎さんに、感動どころか、骨抜きだ。