CVポートについて
CVポートとは?
・完全皮下植え込み式ポート付きカテーテルの事。
・中心静脈カテーテルの一種で、デバイスが皮下に完全に埋め込まれている。
■CVポート穿刺手順
1.目的
・抗がん剤、高カロリー輸液製剤が注入できる。
・体外にカテーテルが露出しない為、感染の機会が減少する。
・周術期管理(中心静脈圧測定・カテコラミン投与)
・末梢でのルート確保が困難な場合
2.必要物品
・翼状型ヒューバー針
・アルコール綿
・生食シリンジ10ml
・手袋
・透明ドレッシング材1枚
・固定用滅菌ガーゼ
・トレイ
・針捨てBOX
・固定用テープ
・プタネクタ
3.方法
(穿刺時)※化学療法の時は医師にて穿刺実施、それ以外は看護師にて実施する。
1)手洗いを行う。
2)手袋を着用し、ヒューバー針にプラネクタを装着する。生食シリンジでヒューバー針のルートを満たしエアを抜きクランプする。
3)ポート位置を確認し、埋め込み部位をアルコール綿で消毒する。
4)親指と人差し指でポートをはさみ、利き手でヒューバー針の翼状部を持ち垂直に穿刺する。(針先が底にコツンとあたるまで差し込む)
5)クランプを開放し、血液の逆流を確認する。(生食シリンジで吸引し、逆血を確認後注入する。)
※トータル20mlのシリンジでパルシングフラッシュ推奨(方法は下記参照)
パルシングフラッシュを行うことでカテーテル内で生食の乱流が起こり、洗浄力が高まる。
①3ml程フラッシュ
②2秒待つ
③①②を繰り返す
④最後の1mlは生食で押しながらシリンジをはずす。
6)ヒューバー針の下の隙間にガーゼで保護し、その上から透明ドレッシング材で全体を覆い固定する。(ドレッシング材が剥がれないようにフィルムの周囲をテープで固定する。)
7)ヒューバー針と延長チューブを接続し、輸液セットのクレンメを緩め薬液の滴下を確認する。
8)定期的に患者の状態と刺入部の発赤、腫脹、疼痛の有無、ヒューバー針の固定、滴下速度を確認する。
■CVポートの抜針手順
1)ポート使用後、ヒューバー針に生食用シリンジを接続し注入する。
2)注入の際はロック液を注入しながらクレンメを閉じる(陽圧ロック)。
(ポートの疎通性に抵抗がある場合は閉塞の可能性があるため無理にフラッシュしない。)
3)ヒューバー針を固定しているテープを剥がし、利き手でない方でポートを掴む。利き手でヒューバー針の翼状部を持ち、ゆっくり針を抜く。ヒューバー針は針捨てBOXへ破棄する。
4)止血を確認できたら、抜去部周囲をアルコール綿で消毒しブラッドバンを貼付する。テープを貼り続けると皮膚トラブルの原因となるため、半日から1日以内に剥離する。
4. 観察
・刺入部の発赤・腫脹有無
・感染徴候有無
・点滴の滴下はどうか
・疼痛はないか
・固定は確実に行えているか
・テープかぶれなど皮膚トラブルはないか
・ルートの屈曲はないか
5. 注意事項
①CVポートは必ず製品名を確認することが必要。
CVポートの種類にはカテーテルの先端にスリットがあり、薬液注入や吸引時にのみスリットが開くグローションカテーテルと、先端が解放されているオープンエンドタイプ、逆流防止弁がついた一歩弁タイプなどがある。グローションカテーテルの場合は生食ロックでよいが、弁の機能が失われるとヘパリンロックが必要になる。CVポートを使用する場合は、ヘパリンロックが推奨される。
②定期的に生食でパルシングフラッシュを行い、血液がポートの内室内に残らないように。
③化学療法+栄養療法の場合は、できれば栄養には別のルート(感染リスク↑)
④セプタムには22Gのヒューバー針でセプタムをまんべんなく刺せば、2000回刺せるとされている。実際は穿刺しやすい同じ場所に刺す場合もあるため、そんなには刺せない。
⑤CVポートのセプタムに普通の針を刺すのは絶対に禁忌!!ヒューバー針はセプタムのコアリングを少なくするために使用している。
⑦ポートから針を抜いてすぐに入浴する場合は、防水加工のドレッシングを貼付する。2~3時間経過していれば、そのままで入浴可能。
⑧ポート針を抜いた後、消毒は不要。逆に消毒はしないほうが良い。止血できていれば絆創膏などで十分。心配ならフィルムドレッシング貼付。
⑨ポートから輸液や薬剤を投与する時、毎回逆血確認が必要か?
→抗がん剤を投与する時は逆血確認は必ずする。本来は、逆血を確認してカテーテルが血管内にある、輸液・薬剤を投与しても皮下に漏れがない事を確認するべき。しかし、逆血確認を繰り返すことによって、カテーテル閉塞リスクは高まる。長期TPN症例では、実際にCVポートを留置して使用開始して数回は逆血の確認をしているが、その後は滴下がスムーズに行われている事の確認だけでもよい。
⑩CVポートは、留置してすぐに使用することができるが、皮下ポケットの状態が安定した状態になるまで待った方が安心。皮下ポケットに血液が滲出液が貯留することがあるため、できれば3日程待ってから使用するほうがよい。しかし、すぐに使用する必要がある時には、ガーゼを工夫してポート部分を軽く圧迫して使用することもある。
⑪CVポートから採血はしないようにするべき。採血することによって、カテーテル閉塞のリスクが高まる。どうしても、というときは以下の手順で実施する。
◎血液検査:5mlの血液を破棄してから、検査用血液を採取する。その後20mlの生食でフラッシュしてからヘパリンロックする。
◎血液培養:そのまま血液を採取してボトルに入れる。その後20mlの生食でフラッシュしてからヘパリンロックする。
⑫CVポートからは輸血を行わない。閉塞リスクと感染リスクを高めることになる。特に、TPN輸液中に側注としての輸血は禁忌。どうしても輸血したい場合以下の手順で行う。
①メインルートは電解質輸液とし、側注の形で実施。
②輸血終了後は生食20mlで強くフラッシュする。
③その後ヘパリンロックする。
⑬CVポート留置後は、普通の運動は可能。ただし、ポート部位を圧迫するような運動は避ける。鎖骨下穿刺で挿入している場合は、「肩を動かす運動は避ける」ように指導する。鎖骨下でカテーテルを挿入した場合で、ピンチオフが見られる場合は、カテーテルの断裂が起こる可能性がある。
CVポートについて
私の働いていた病棟では、主に抗がん剤の投与目的でCVポートを挿入することが多かったです。後は、転院したり、在宅になっても、しばらく点滴が必要な患者さんに造設されていました。手技も難しくないですし、患者さんも末梢静脈ルート確保で何度も刺されることもないので負担が軽減します。抜針は患者さんによっては自身で行うことも可能です。合併症も少ないと感じます。(もちろん、中心静脈カテーテルですので、感染には要注意ですが)どちらかというと、閉塞の方があったように思います。パルシングフラッシュをしっかり行って、しっかり内腔を洗浄することが、とても大切ですね。CVポートを用いることで看護師の負担も軽減し、患者さんにとってもQOLの維持に大いに役立つ便利なものだと感じます。しかし、当然合併症や感染のリスクはありますし、CVポートが必要な患者さんは全身の状態管理が重要です。手技が難しくなく、便利であっても、しっかりと知識を深め、患者さんをしっかりと看て行く事が大切だな、と改めて感じています。日々勉強です!