その人との出会いは仕事だった。
その人はとても頭が良くて、いろんなことを教えてくれた。
とても哲学的で芸術的で、偏っていた私の知識の世界を広げてくれた人だった。
会う度に、その人の話を聞くのが好きだった。
仕事終わりに送ってくれたり、その途中でちょっとお茶したりしてどんどん仲良くなっていった。
私が職場で体調不良になった時に迎えに来てくれたり、差し入れを運んでくれたりもした。
その中で、その人はバツイチで息子が2人いることがわかった。
そして、偶然にも私はその2人の息子と別の仕事先であっていたのだ(私はいろんな場所に仕事に行く)。
そういえば、雰囲気が似ていた。
しかも、お兄さんの方が私と同じ年だったのだ。
そう、その人は私より30歳年上。
自分の父親とほとんど同じ年だった。
年齢差もあったし、私は恋愛感情とは関係なく、その人との時間を楽しんでいた。
元々、なぜかおじ様によくモテたし、若い人と話すより知識や経験が豊富な人と話す方が好きだった。
仕事以外でも会うようになった。
ドライブに行ったり、美術館に行ったり…
次第に、その人からの好意を強く感じるようになってきた。
もちろん、手すら繋いだことはなかった。
口説かれている感じもあったが、その人が強引に何かすることはなく、一歩引いて大切に扱ってくれた。
私も軽く流していた。
私は、前の借金彼と別れて半年以上経っていただろうか。
彼氏もいない時だったのでフットワークも軽かった。
ある日、その人と居酒屋に飲みに行った。
楽しくおしゃべりして、私の家まで歩いて送ってもらっていた。
橋の上を歩いていてちょっと止まって二人で月を眺めていた時、突然、抱きしめられた。
とても強い力だった。
その人は一言「好きだ」と言った。
とてもびっくりして、私は固まってしまって何も言えなかった。
すぐにその人は「ごめん」といい、歩きだした。
お互い無言で歩き、私のマンションの下で別れた。
部屋に着くなり、私は泣いた。
私は初めて自分の気持ちに気づいた。
というか、今まで見ないようにしていた自分の気持ちを認めた。
もうすっかり、その人のことが好きになっていたのだ。
それでも、30歳差。
その人もずっと我慢していて、とめられなかったんだろう。
その気持ちがわかって、私も泣いてしまった。
次回に続く。
