東京証券取引所の上場企業が提出した
コーポレートガバナンス報告書をもとにして、
日本経済新聞社の集計によりますと、
社外取締役を導入した企業の割合が前年比で約6ポイント
増加し、60.8%に達したということです。
つまり、10社のうち6社までが、
全社的な経営意思の決定を行うプロセスに、
外部の見識を導入するようになったと、
このようにみることができます。
いわゆるコーポレートガバナンス(企業統治)の問題は、
大規模な企業不正が発覚するたびに、大きな問題として
取り上げられてきました。
内部の人間だけで管理しようとすると、そこには
馴れ合いであるとか、社内のしがらみであるとか、
さまざまな側面におけるチェック機能の弱体化という
現実的な慢性病のような症状がみられるようになるのですね。
時々、「社内の常識は世間の非常識」などといわれるゆえんです。
今年度の特徴としては、トヨタ自動車やファナックなど、
大手企業による導入が目立っているようです。
1社当たりの社外取締役の人数も、平均して1.10人であり、
昨年の1.02人よりも増えています。
たしかに、取締役が社内の生え抜きやたたき上げだけで
構成されてしまうと、長年お互いの良い面も悪い面も
知っている間柄ですから、いきおい、現在のような
予測不能な環境変化の激変に直面してもなお予定調和的な
かじとりしかできなくなるリスクを抱えることになりますね。
そういった意味では、上場企業の意思決定機関に
社外の血が入るのはいいことだと思います。
ところで、日本の法人数300万社足らずのうち、
99%近くを占めるであろう大部分の中小企業に
目を移すと、ガバナンスの必要性はどうなるでしょうか。
オーナー社長が経営する中小企業なんだから、
所有と経営が分離している上場企業とは違って、
社外のチェック機能は不必要と言えるでしょうか。
わたしはそんなことはないと思います。
これまで20年以上、公認会計士の立場で会社の経営者と
お付き合いし、自分でも約10年にわたって会社を経営している
社長の視点を持っている立場からお話しさせていただきますと、
中小企業こそ、今のような経済変化の激しい荒波の中に
あって、これまでの業界知識を超えた外部者の意見を聞く
柔軟性がいっそう高まっていると確信しています。
じゃあ、社外取締役を中小企業でも迎える必要があるのか?
いえ、そこまでする必要は必ずしもありません。
業種などにもよるでしょうが、年商30~100億円以下くらいの会社で
社外取締役はいなくても、たぶん困りません。
じゃあ、だれが外部者としての経営チェック機能を
担えるのか?
会計事務所ですよ。
こういうところでこそ、何十社、何百社といろいろな
顧問先の経営者と常日ごろ接することができる
税理士の出番です。
これからの会計事務所は、「外部取締役」に期待されるような、
経営者の事業計画や実施状況などに対するチェック機能を
大いに期待すべきです。
逆にいうと、今までのように記帳代行と税務申告だけで
顧問料を毎月3万円取れると考える会計事務所の方が
甘いです。問題ありと言わざるを得ません。
日本に3万あるといわれる会計事務所のうち、
1万程度は淘汰されるのではないか、と柴山は考えています。
これからまっさきに看板を下ろすリスクを負うのは、
記帳代行・申告書作成だけで経営者へのチェックをしたくない
という「作業オンリー型税理士」でしょう。
会計業界だけ、世間の厳しい荒波から逃れられる、という
時代はすでに終わりを迎えつつあります。
ちなみに柴山は、会計事務所以外の事業でも、小規模で
インターネットだけで年間数千万円の売上を上げる
マーケティング・ノウハウを構築しました。
他の士業の先生方が、ホームページの診断や
集客の相談に来られることもあります。
これからは、たとえば
「判例や調査対応なども含めて特定の税務にすごく強い」とか、
「集客」アドバイスができるとか、
「特定のマネジメント分や」について社長にアドバイスできる、
など、本当に実践的な意味での強みを持って、
付加価値サービスができる会計事務所が台頭してくる
と思います。
日々研鑽ですね!
柴山政行