花王の子会社のカネボウ化粧品が7月4日に、同社と子会社2社が製造・販売
する美白化粧品54品を自主回収すると発表しました。
(参考URL)「お詫びと自主回収についてのお知らせ」
http://www.kanebo-cosmetics.co.jp/information/index.html
化粧水や乳液に使う独自成分が原因で肌がまだらに白くなる「白斑」と
いう症状が確認されたために、2008年9月から販売している8ブランドの
54製品について、市場に出回っている45万個もの商品を対象に回収を
行うのだそうです。
これに伴うコストは相当なもので、
報道によれば関連費用は約50億円と試算されているとのこと。
回収に伴う費用だけでなく、その後のブランド価値の毀損(きそん)
を考えたら、カネボウ化粧品が支払う代償は甚大と言えるでしょう。
このニュースを目にしたとき、脳裏に浮かんだのが「品質原価計算」
という言葉です。
欧米では1960年代から注目されていた経営管理の手法です。
原価計算を、単なるコスト集計の問題と考えず、
製品の開発・設計・製造・検査・販売・アフターフォローなど
経営活動の一連の流れにつながるマネジメント上の問題と考える
の点が、品質原価計算の特徴です。
具体的には、コストをつぎの4段階において発生するものと
考え、前半2つ(予防・評価原価)と後半2つ(内部・外部失敗原価)
のトレード・オフ関係(あちら立てればこちら立たず)として
分析します。
1.予防原価:品質管理システムの設計・実行・維持にかかる原価
(例)品質計画、設計、工程管理、教育訓練などにかかる諸費用
2.評価原価:材料や製品が品質適合基準に一致するかを確かめる原価
(例)材料の受け入れ検査、点検作業、品質検査、技術評価などの費用
3.内部失敗原価:出荷前に判明した不良品などの処置に関する原価
(例)スクラップ費用、補修作業費用、いわゆる仕損費と呼ばれるもの
4.外部失敗原価:不良品や欠陥品を販売したことで生じる原価
(例)アフターサービス費、クレーム対応、製品リコールなどの費用
上記の1.と2.は品質適合コストとも呼ばれ、失敗原価を低く抑える
ための費用です。
この品質適合コストが十分に投下されていないと、
製品に欠陥が出たり仕様変更のリスクが高まったり、
仕損品を製造・出荷するリスクがたかまるため、
非常に危険な状態となります。
ましてや、現代のようにインターネットをはじめとするインフラの
変化により情報流通のスピードが劇的に高まった時代においては、
特に外部失敗コストの発生は企業イメージを悪化させる情報が
あっという間に広がってしまうため、より一層の注意が必要と
なりますね。
今回のカネボウ化粧品は、外部失敗原価の恐ろしさを考えるうえで、
活きたテキストとなるのではないでしょうか。
ほかに、品質的に問題があると思われる製品を世に出して
世間から手厳しいしっぺ返しを受けた過去の事例として、
三菱自動車のリコール問題や、賞味期限切れ・産地偽装で
問題になった船場吉兆などを思い出します。
いずれも、企業が受けたダメージは相当なものだったでしょう。
一般論ですが、たとえば、今の世の中、
食品のメーカーであっても卸であっても
小売りであっても、集団食中毒でも出そうものなら、ほぼ
その後の営業継続は困難となるでしょうから、外部失敗コスト
の経営に与えるダメージは深刻です。
こういった事態を防ぐためにも、企業内部における組織の
管理体制をしっかりと築き、さらに時と共に風化しないように
継続的なメンテナンスをしなければならないのですね。
以上、カネボウ化粧品のニュースと品質原価計算に関する
お話でした。
柴山政行