Lesson-11 近所の目
不合格を知ってから翌日、落ち込んでいる間もなく、新たな挑戦が始まります。
私は、3ヵ月ぶりに専門学校に行き、上級者向けの講座を申し込みました。
最初の講義までまだ日がありますが、どうにも手持ちぶさただったので、少し勉強してから帰ることにしました。
「また1年、お世話になります」
自習室を前にそんな独り言をつぶやき、ひょいと中を見ると、教室の前の方にパンチ君とJ君がいるではありませんか。
「よう」
「なんだ。柴山も落ちたのかよ」
二人は、私の顔を不思議そうに見つめます。なんだか、少し居心地の悪さを感じました。
「まあ、そういう訳で、来年までよろしく!」
こんなことを言うと不謹慎に思われるでしょうが、やはり、同じ失敗をした仲間がいる、というのは心強いものです。
ただ、ここで気をつけなければいけないのは、「傷のなめ合い」的な付き合いにならないよう、常に緊張感を維持することです。その意味で、受験仲間は、よくよく選んだ方がいいんですね。
上級コースは、1年合格コースの入門時と違って、それほどカリキュラムが集中してあるわけではないので、比較的時間に余裕が持てました。そうなると、いきおい、起床時間が遅くなります。
10月以降、年内の私の生活パターンは、午後10過ぎに起床後、近所の喫茶店でモーニングを食べながら1時間ほどスポーツ新聞と漫画を読む、という習慣から始まるものでした。
そんな生活が続いてから1ヵ月ほどしたある日、喫茶店で偶然近所の人に会いました。
「毎日、勉強も大変ねえ。でも勇気あるわあ。有名な会社に就職が決まっていたのをやめて、受験に踏み切る打なんて…もし受かったら、私も税金の相談に乗ってもらおうかしら…」
一見同情しているかのような表情ですが、その声の調子には妙な張りがあります。口元もほころんでいました。人の不幸は何とやら、というやつです。
「その時はよろしくお願いします」
そんなつもりないだろ、と心の中で舌打ちしましたが、もちろん顔には出しません。実際、本当に受かった後、その人から相談に来たことは一度もありませんでした。
「今に見ていろ」