【N様からのご質問】~建設仮勘定って…~
ついさいきん、本メルマガの読者様から、会社実務に関するお悩みの
相談メールをいただきました。会計監査対応などで、ご苦労されている
ようでした。
ささやかながら、少しでもお力になれればと思い、本日のメルマガで
ご質問に回答させていただこうと思います。
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『読者様Q&A(N様より)
いつも楽しくメルマガを購読させていただいております。
通勤電車で日経新聞を読んで(というより眺めて)、その意味を
よく分からないまま出勤して、メールを立ち上げると、
時事問題で楽しくマスター・・・が届いていて、正にさっき見た記事の
解説が届いていたりすると、新聞を読むことが楽しくなったります。
本当にいつもありがとうございます。
さて、今日は質問がありましてメールしました。
私はメーカーに勤務しております。
金型・機械などの建設仮勘定について質問です。
建設仮勘定にあがっている機械や金型がいつまでも稼動しない事は
好ましくないようですがその理由がよく分かりません。
ご教授いただければ助かります。』
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【N様からのご質問に対する回答】
〇建設仮勘定の取り扱いに関するご質問ですね。
では、順を追ってご説明いたします。
1.建設仮勘定の意味と発生時の会計処理
建設中の機械や建物に対する支出額があったときに使用する勘定科目です。
(設例1)
A社は、自社の敷地に倉庫建物を増築することとし、請負代金525万円(消費税含む)
のうち、100万円を手付金として普通預金口座から振り込んで支払った。
(借方)建設仮勘定100万円(貸方)普通預金100万円
この段階で、建設仮勘定という固定資産の科目が計上されますね。
建設仮勘定は、時間とともに完成に近付いて価値が上がります。
また、その過程で事業のために使用するということはありませんから、
「時の経過・使用に伴う劣化部分を費用化する手続=減価償却費の計上』は
いたしません。
したがって、建設仮勘定の支出部分は、税務上損金にならないので、
建物や備品などの取得と違って減価償却費の計上による節税効果はないです。
(これ、経営者の観点からすると、けっこう大事です…)
→長期滞留の建設仮勘定で、減価償却できるものがもし隠れていたら、それは
減価償却費計上のチャンスを逃していることから、黒字法人の場合は、もったい
ないことになるわけですね。
2.建設仮勘定の全部または一部が、完成により振り替えられた場合
建設中の機械・建物が完成し、事業のために使用されるようになった場合、
完成・使用部分は建物などの適切な勘定科目に振り替えられます。
(設例2)倉庫建物の増築工事が完了し、事業のために使用できるように
なった。同時に、普通預金口座から残金の425万円を振り込んだ。
(借方)建物500万円(貸方)建設仮勘定100万円
**仮払消費税25万円*****普通預金425万円
この時から、建物の使用にともなう老朽化が始まります。
その実態にあわせるために、減価償却費の計上が同月よりスタートしますね。
なお、「消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、
原則として物の引渡しや役務の提供があった日の課税期間において課税仕入れに
対する税額の控除を行うことになります。」
国税庁HP→ http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6483.htm
このように、建設仮勘定から建物・機械勘定へと振り替えたあとには、
その後の経理処理にさまざまな変化や影響が起きます。
そして、設備関係は1件当たりの金額が数百万円から数千万円まで、非常に
多額になりやすいので、会社の決算数字に与えるインパクトは甚大です。
そして、一般には「過去の平均的な建設仮勘定の維持期間を超えるような
長期滞留案件」は、ほんらいならば適切に振り替えるべきものをそのまま
放置してしまっている可能性が高いという印象を監査人に与えてしまうのですね。
以上より、「表示科目の妥当性(建仮か建物か?など…)」だけでなく、
消費税の問題、減価償却計算開始時期の問題、さらには償却資産税の問題にまで
いろいろと波及し、さらに金額が大きいという点を見ても、
振替時期の判断についてきちんと社内ルールを決めておき、それに従って
適正に処理する必要がある、というのが本来の趣旨です。
なお、ご質問の文言をここで再掲しますと、
「建設仮勘定にあがっている機械や金型がいつまでも稼動しない事」が
好ましくないようだというご感想をお持ちということがわかります。
しかし、建設仮勘定の中身によっては、大規模なものや
検査・試運転が長期にわたるなど、1年以上稼働しないものがあっても
決して不思議ではありません。
むしろ、「振り替えるべき建設仮勘定が長期間そのままになっている」
ことが問題の本質であります。
ただし、監査人の観点からすると、「どのような勘定科目であれ、一般に
『長期滞留の残高』は要チェック!!」のように神経過敏になる傾向が
ありますので、このような監査人の性質を勘案して、ご自身なりの
考えをもたれるようになれば、さらに監査対応などの実務がスムーズに
なると思われます。
その後のメールでは、次のような悩みもお話しいただけました。
===
往査では、会計士の先生に「建設仮勘定にあがっているものは1年以内を目処に
稼動させるか、できないものは外すようにしてください」などといわれたりします。
機械を設計している同期には「なんで毎月建仮にあがっているものの状況を報告
しなきゃならないの?」などと質問されたりもします。
最近、建仮の管理の担当になったのですが、その質問に明確な回答ができませんでした。
===
建設仮勘定がすべて一年以内に解消しなければならない、なんていう決まりは
なく、それはたんに「一般論として」その先生がおっしゃっている
だけだと思いますよ。
むしろ、だいじなのは個々の支出内容をきちんと管理しておくことであり、
それができていれば、一年以上であっても、自信を持って「イヤ先生、これは
〇〇の事情でどうしても一年以上かかるんですよ。だから、そんな機械的には
振り替えられませんねえ~!」くらいの主張をしてもいいんじゃないでしょうか。
会計士は、世間が思っているほどビジネスについて万能というわけではありません。
会社の現場の実務も、じつは現場の人が思っているほどには理解していない
ケースがけっこうありますよ。
あくまで会計実務をチェックする専門家であって、ビジネスの現場で
どぶ板を踏んでいるわけではないですから…。
(自分で会社を経営するようになって、そのことは何度も実感しました(苦笑))。
だからそこは、根気よく担当会計士の人としっかり話し合って、会社の
状況を完全に理解してもらったうえで再度建設仮勘定についてより良い
実務にしていく努力を続ければ良いと思います。
===
機械を設計している同期には「なんで毎月建仮にあがっているものの状況を報告
しなきゃならないの?」などと質問されたりもします。
===
この現場担当の方の気持ち、実はよくわかります。
私も最近は税務調査官とか監査人とかの相手側の立場で仕事をすることが
多くなってきたので…(笑)。
現場の人にとっては、その資料づくりで取られた時間だけ、本業が
おそろかになってしまい、業績にマイナスなんですよね。
ともあれ、監査人の立場としては、「個々の建仮の案件で、振り替えるべきものが
振り替わっていないという問題の有無」を確認したいだけですので、
必要最小限、各案件のはじまりと途中経過と現状と今後の見込を
概要でいいので、管理する表のようなものを持っておくとよいのではないでしょうか。
おそらくその表は、社内実務でも役に立つと思うので。
すでにあれば、その表を監査人に見せて、判断してもらえばいいと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。
…そうそう。
ご質問メールの末尾に、思わず目頭が熱くなるような、とてもうれしい一言を
いただいたいの、付記させてください。
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柴山先生のメルマガは、愛情にあふれていて本当に癒されるし、励まされます!!
いつもありがとうございます。
取り急ぎのお返事まで・・・
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私たち社会人は皆、
このような嬉しいご感想をいただくために、毎日がんばっているのかもしれませんね。
おたがいに関わっている人を癒し、励ませるような有意義な仕事を毎日
続けていきたいですね!
Nさん、素晴らしいメールを、本当にありがとうございました!
ぜひ、仕事上のお悩み、相談などありましたら、お気軽にメールくださいませ。
公認会計士・税理士
柴山政行
柴山会計サイト→ http://bokikaikei.net