前回に引き続き、共通テスト数学ⅡBの超個人的な感想と少しだけポイントを。

 

1⃣ [1]

 (1)対数関数のグラフの考察。カ、キは対数関数の定義に則ることで考察できるが、具体的な座標を打つことで選択肢を限定することもできる。後者の方法ならばy=0およびy=1を与えるxの値の大小比較をするのが分かりやすい。より一般に、関数の拡大(縮小)を与える変数変換としてとらえることもできて慣れていると早い。(2)の(i)は定義を使いyについて解く。(1)、(2)ともに普段から定義をしっかりと抑えたうえで学習したものは報われる問題となった。(ii)は過去見たことがある。1から解けない者も選択欄から0<x<1、1<xで場合分けして考えるという着想を得られるか。一応これも具体的な座標(x,y)を用意して、不等式を満たすかどうか判定することで選択肢を限定できて早い。

1⃣ [2]

 整式の剰余に関する問題。しかし整式の剰余はあくまで題材で、”論理”を主眼に置いた問題ともいえる。論理展開をしっかりと追える必要がある。最後の問題は誘導無視しても良いし、2次対策を積んでいるなら単問として易しい問題。ごり押しで筆算しても商の係数が周期的なふるまいをしてくれるため見た目より解きやすい。とはいえ誘導に乗るべきではある。

 

2⃣

 積分から。対称性に注目した抽象的な問題が続くので難しい。ただし具体的な数値の計算は(2)以降一切ないので、素早く解けた者とそうでない者の時間的な差はかなり激しかったと思われる。具体的な数値を当ててもすぐ解けるわけではなく時間がかかり、この問題が何をさせたいのかしっかりと理解する必要がある。(2)は被積分関数を与えられてからその原始関数を考察する問題で頻出。(3)で定数qの範囲が0<q≦M-1と与えられる意図が掴めず余計な考察をしてしまい時間をかけてしまった。類題はかなり見てきたので対策を活かせた者は多いか。それでもなかなか難しいことに変わりはない。当然だが数Ⅲ履修者はやや有利。

 

3⃣

 確率分布と統計的な推測。どんな野菜が出るかと考えていたが野菜は登場せず。ダミー変数を用いた問題で珍しい。今後を考えると二項分布B(n,p)に従う確率変数の平均、標準偏差は1から導出する力が欲しい。(2)は設定が難しいが、状況さえ分かればkの値が小さいので誘導通り数え上げで処理すればよい。最後もやっていることは難しいが誘導があり易しい。個人的には最近の統計分野の中ではかなり解きやすいと感じた。実際に解いたときは選ばなかった。

 

4⃣

 数列の漸化式の問題。(1)、(2)は確実に対処したい。(3)では不思議な漸化式が出題された。過去見たことの無い形で、その場での対応力を問われる問題となった。試験会場でこれを見た受験生の多くは焦ったと思われるものの、蓋を開けてみればそこまで高度なことは要求されないので落ち着いて誘導に乗れば良い。

 

 

5⃣

 ベクトルから空間のねじれの位置にある2直線に関する問題。(1)で2直線は垂直であることが分かるので、後に使う性質であろうと予想しておくと良い。”問題の流れの予想”をしながら問題を解き進められる力はこの問題だけでなくどの単元でもあると強い。実際今回もそれを加味して計算すると早く、このように、ある図形的特徴に序盤で気づかせて後にそれを利用させる問題はよく出題されている。最後は一見太郎の方法の方が”工夫している感”があり良さそうであるが、実は花子の方法(をちょっとアレンジしたもの)も今回に限ればそれなりに早い。なぜなら2直線が垂直なので、2点P,Qの座標をそれぞれ変数s、tで媒介変数表示したときに、線分PQが最小となるためのsとtの条件が独立に定まるからである。これに気付くと考察すべき展開項の数が減り、計算量がかなり減ると分かる。内容自体センター試験と大差なく、2次試験対策としては典型問題であるため解きやすかった者は多いか。

 

 

全体としては計算量が減り、共通テストらしい抽象論が目立った。上位層は計算量が少なく済む分時間に余裕を感じたかと思われる。圧倒的な難問がある、というわけではないが、典型問題の暗記学習で立ち向かうと、生半可な暗記量では(今回のラインナップでは)積分、数列で痛い目に遭うだろう。普段から原理に忠実に学習することが最も正当的でかつ効果的な学習方法と言える。今後更にこういった傾向は強まることは確実であり、目標得点によっては2次試験対策と遜色ないレベルの数学の習熟が求められつつある。共通テストのみに通用する対策、というような甘い蜜は既にほとんど残っていない。今後高得点を狙う者は初歩的な数学の習熟に加え「数学的思考力、読解力、計算力」すべてで高い水準を要求されることは避けることのできない決定事項である。