肺や脊椎などへの放射線治療において、回転照射系IMRT(トモテラピーなど)における
低線量部位の肺炎リスクは未だ評価が定まっていない。にも関わらず、近年の高性能
リニアックの機器性能の向上から、簡便で多数カ所同時照射可能な「最先端治療装置」
として普及されつつある。本ブログでも以前紹介記事を書いた。
http://ameblo.jp/study2007/entry-10447955248.html
が、今回は肺を含む照射野における低線量被爆のリスクについて明記しておく。
以下の図は論文からの転載。
http://www.ro-journal.com/content/4/1/71
・55歳、男性、胸椎T8~T10に30グレイ照射終了後、2週あけてジェムザール+5-FU。
・広範囲に肺炎が生じ、1ヶ月間集中治療室。なんとか一命は取り留める。
下図がどれほど危ない状態か、癌患者なら誰でも判ると思う。
トモテラピーによる線量計画図とよく一致し「5グレイ以上」の部位は真っ白。
照射後2週間でジェムを開始しており、ちょっと早いかな?という意見もあるかと
思うが私の見解ではむしろ「照射後3ヶ月~半年で無くて良かった」という印象。
放射線性の肺炎が最悪になるのはたいてい3~6ヶ月後である。その時期にイレッサや
タルセバ、昔なら強めの抗癌剤をやるのは相当覚悟の要る事と考える。
私の経験でも、20グレイ以上あびた場所はそれなり炎症を起こし、やがて肺繊維化
している。また8ヶ月程度経過すると沈静化するが、5グレイ以上の照射レベルでも
充分肺炎は起こしている。
左肺下葉への重粒子線治療計画図
http://ameblo.jp/study2007/entry-10194360067.html
左肺への重粒子照射後の有害事象(肺炎、肺繊維化)の推移
http://ameblo.jp/study2007/entry-10195882795.html
合理的でコンセンサス有る評価はまだ無いと思う。が、私が自分の命を守る為に
自主的に規定している安全基準は、
・20グレイ以上の領域が肺全体の1/3を越えないこと。
・5グレイ以上の領域が肺全体の1/2を越えないこと。
・照射後8ヶ月は強い抗癌剤(強くは無いがイレッサ、タルセバも含む)をしないこと。
などである。1グレイ以下なら大丈夫?との流言もあるし、実際そうかな??と
いう気もするが、あくまでも体調や追加治療との兼ね合いによると考えている。
勿論、前立腺や子宮癌などの場合、周辺組織の低線量被爆のダメージは肺より
はマシだと想定されており、保守的な病院ではトモテラピーは前立腺癌専用機
として扱われたりしている。やはりもっとも注意すべきは肺とその周辺だろう。
多くの失敗例が「元気だったのに肺炎であっさり、、、」というパターン。
私の知る限り、国内施設では
・前立腺癌専用機としてしか使わない。
・骨転移などに緩和的な治療も行うがあくまでも最大でも30グレイ以下。
・リスクにはある程度目をつぶり、結構ムリな照射もやる。
の3種類に分けられるかな?と思っている。(具体的な病院名は伏せますが、、)
さらにトモテラピーでは呼吸同期をとらない為、腫瘍の動く範囲を丸ごと撃つ。
ノバリスも追尾機能はあるが日本の保険制度のせいで金属マーカーが入れられず、
マージンを広く取らざるを得ない。
例えば腫瘍径5cmであれば腫瘍マージンと誤差、呼吸変動等をカバーするため、
片側2cm近く広めに撃つであろう。つまり10cm近い患部に60グレイ近い
線量を与えるとすると、肺のかなり広範な部分が「被爆」すると予想される。
癌治療において高性能リニアックを考えている方には線量分布の確認を推奨する。
低線量部位の肺炎リスクは未だ評価が定まっていない。にも関わらず、近年の高性能
リニアックの機器性能の向上から、簡便で多数カ所同時照射可能な「最先端治療装置」
として普及されつつある。本ブログでも以前紹介記事を書いた。
http://ameblo.jp/study2007/entry-10447955248.html
が、今回は肺を含む照射野における低線量被爆のリスクについて明記しておく。
以下の図は論文からの転載。
http://www.ro-journal.com/content/4/1/71
・55歳、男性、胸椎T8~T10に30グレイ照射終了後、2週あけてジェムザール+5-FU。
・広範囲に肺炎が生じ、1ヶ月間集中治療室。なんとか一命は取り留める。
下図がどれほど危ない状態か、癌患者なら誰でも判ると思う。
トモテラピーによる線量計画図とよく一致し「5グレイ以上」の部位は真っ白。
照射後2週間でジェムを開始しており、ちょっと早いかな?という意見もあるかと
思うが私の見解ではむしろ「照射後3ヶ月~半年で無くて良かった」という印象。
放射線性の肺炎が最悪になるのはたいてい3~6ヶ月後である。その時期にイレッサや
タルセバ、昔なら強めの抗癌剤をやるのは相当覚悟の要る事と考える。
私の経験でも、20グレイ以上あびた場所はそれなり炎症を起こし、やがて肺繊維化
している。また8ヶ月程度経過すると沈静化するが、5グレイ以上の照射レベルでも
充分肺炎は起こしている。
左肺下葉への重粒子線治療計画図
http://ameblo.jp/study2007/entry-10194360067.html
左肺への重粒子照射後の有害事象(肺炎、肺繊維化)の推移
http://ameblo.jp/study2007/entry-10195882795.html
合理的でコンセンサス有る評価はまだ無いと思う。が、私が自分の命を守る為に
自主的に規定している安全基準は、
・20グレイ以上の領域が肺全体の1/3を越えないこと。
・5グレイ以上の領域が肺全体の1/2を越えないこと。
・照射後8ヶ月は強い抗癌剤(強くは無いがイレッサ、タルセバも含む)をしないこと。
などである。1グレイ以下なら大丈夫?との流言もあるし、実際そうかな??と
いう気もするが、あくまでも体調や追加治療との兼ね合いによると考えている。
勿論、前立腺や子宮癌などの場合、周辺組織の低線量被爆のダメージは肺より
はマシだと想定されており、保守的な病院ではトモテラピーは前立腺癌専用機
として扱われたりしている。やはりもっとも注意すべきは肺とその周辺だろう。
多くの失敗例が「元気だったのに肺炎であっさり、、、」というパターン。
私の知る限り、国内施設では
・前立腺癌専用機としてしか使わない。
・骨転移などに緩和的な治療も行うがあくまでも最大でも30グレイ以下。
・リスクにはある程度目をつぶり、結構ムリな照射もやる。
の3種類に分けられるかな?と思っている。(具体的な病院名は伏せますが、、)
さらにトモテラピーでは呼吸同期をとらない為、腫瘍の動く範囲を丸ごと撃つ。
ノバリスも追尾機能はあるが日本の保険制度のせいで金属マーカーが入れられず、
マージンを広く取らざるを得ない。
例えば腫瘍径5cmであれば腫瘍マージンと誤差、呼吸変動等をカバーするため、
片側2cm近く広めに撃つであろう。つまり10cm近い患部に60グレイ近い
線量を与えるとすると、肺のかなり広範な部分が「被爆」すると予想される。
癌治療において高性能リニアックを考えている方には線量分布の確認を推奨する。