実際の医師不足・偏在はどの程度の深刻さか?国民医療費は何に使われているのか?
保険診療の医療水準は?、等の疑問に答える為には先ず「事実の集積と整理」が必須である。

どんな科学・技術、産業でも当然のことであり、戸塚氏もブログの中で「癌データベース」
の重要性を述べている。私も診療評価の手法について記述した経緯がある。

癌患者になって初めて判った事だが、医療器具と技術・クスリは確かに21世紀の
水準にあるものの、国内の医療制度は考えられない程の非効率な状態にある。

本来なら医療者自身が率先してレセプトと診療情報のオンライン化・データベース化を
主導、「事実の収集と整理」を進める事で医療の高度化を目指すべきである。

が、結局、医師会は最期まで「医療の進展」に寄与する事はせず、一貫して自分たちの
利益確保・保身だけに終始してきた。結果として遂に厚労省が「医療費削減の為だけの」
レセプトオンライン化の義務化を打ち出した。(しかも民主は「原則化」に後退するらしい)

オンライン化に反対する立場の1例を紹介する。義務化を不当とした訴訟まで起こし、
現在係争中との事である。「患者を人質に取った偽善」の典型例として本訴状は興味深い。

訴状の中身は極めて稚拙で、
・レセプトオンライン化には全く意義がない。
・情報漏洩の心配がある。
・オンライン化を義務化されると診療行為ができない。
・省令は法令の意図を逸脱しており違法。
・オンライン化費用と精神的苦痛は医師一人当たり100万円以上(原告961名に対し約15億円)。
・弁護士費用は医師一人当たり10万円以上(弁護士1人あたり約1000万円)。、、など。

訴訟を起こすとしても、
・レセプトのみでは不十分であり診療データベース化・透明化も推進すべき、
・システム発注とデータ解析・利用のあり方に関する情報公開と意見集約をすべき、
等々の訴えなら判るが、完全に「真逆方向にキレている」様である。

こういった訴訟に現役の医師1000人近くが参加している現実は重大である。
医療者自身の倫理による医療制度改正が不可能な事を示唆する1例と考える。