放射線治療の奏効率は手術や抗癌剤のそれとは質的に異なる。

そもそも治療効果の一般的な評価法として「生存率」や「制御率」が用いられるが、
率直に言ってこの指標がどういう意義を持つのか私には全く判らない。

「当科のI/II期の肺癌(腺癌及び扁平上皮癌45症例)の5年生存率は70%、I期に限れば85%」
などである。誤解を恐れずに言えば、科学や情報がこれだけ発達した現代社会において、
・どうしてこれ程までに役に立たない指標を使い続けるのか?
・その程度の評価能力しかない業界が何故存続し続けられるのか?、が判らないのである。

コンビニやファミレスですら、商品1つ1つについての消費動向を常にチェックしている。
「閉店舗数」や「閉店率」だけに注目して経営判断することなどまずあり得ない。

大昔は、「手術の成功or失敗」だけが議論の対象になる時代もあった。
効く抗ガン剤など1つも無く、放射線はやれたとしても2次元照射がせいぜい、、。
確かにそういう時代には「5年生存率」も1つの指標にはなっていたかも知れない。

しかしながら、少なくとも現在では大多数の癌患者は下図の様な経過を辿る。
データは私の創作だが1つの典型例で、悪夢の様なダメダメ病院ぶりである。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-eval090109

T2N0M0もしくはT2N1M0というところで見つかり「有名大学病院の呼吸器外科」で手術。
病院側の立場に立つと本症例はどのようにも評価できる。しかも最終的には、
「ご自宅近くの医院」を紹介しており「追跡出来なかった」と除外すら可能である。

本来、全癌患者の診断・診療過程は第3者の公的機関でデータベース化すべきである。

詳細は別途議論する予定であるが、添付図の様なデータが検索できれば施設や治療法の
「実力」は一目瞭然である。「術野近くの再発、もしくは転移」も闇に葬られずに済む。
「中古車検索」で簡単にやれる事が30兆円産業の医療業界で出来ない理由は無い。

とりわけ、放射線治療の効果は前後の治療の流れの中で個々に判断せざるを得ない。

なぜならば「体調が悪い」からと言って放射線科を受診することはまずあり得ず、
グロスの実力は最初に例示した「手術不能もしくは拒否したI/II期症例」などから
外挿する以外に無いからである。お叱りや御批判を覚悟であえて言い変えるならば、

再発や転移を抱えた癌患者は「そもそも制御出来て当たり前の」症例結果の中から、
最適な放射線手法や施設を選ばねばならない状況にある。