政府が発表した第6次エネルギー基本計画の実現性について疑問を感じ、その内容を調べた結果、科学技術的にあり得ない計画だと知った。その計画を実行すれば、日本は滅亡する。この計画を主導した方を次期首相に選んではならない。

「河野太郎ワクチン担当相兼規制改革担当相の記者会見発言」
この計画案策定に強く影響力を行使したと言われる河野大臣が自民党総裁選出馬記者会見で次のように説明した。

9月10日記者会見 記者からエネルギー政策を聞かれて
「いずれ原子力はゼロになる。カーボンニュートラル、2050年までにこれを達成して気候変動を抑えていくということになると、まず石炭、石油から止めていかなければなりません。そして、いずれは天然ガスからも脱却しなければなりません。そうすると2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、一つはまずきちっと省エネをやる、そしてもう一つは今度のエネルギー基本計画にあるように再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく、それでも足らないところは、安全が確認された原発を当面再稼働していく。それが現実的なんだろうと思う。」

記者会見の後の民放の番組にリモートで出演して「新規原発は作らない、現有原発の寿命40年、認可延長で60年が来たら停止する。」と答えていた。

火力を全て止め再生可能エネルギーを最大限利用、足らないところは安全が確認された現有原発を稼動させると語っていた。自分が関与した第6次エネルギー基本計画を理解しているのだろうか。火力を止めたら原発と再エネを合わせても需要の60%しかない。2030年原発目標20%も困難ではないかと言われている。(稼動できる原発は10基、運転審査待ちが17基、27基稼動しても20%に届かない)河野大臣は計算が出来ないようだ。2050年目標の100%再エネは、科学技術的にあり得ない計画で環境派の夢物語だと感じる。不安定な電力事情ならば、基幹産業やIT企業が安定した電力のある国に逃げていくだろう。そして日本国が滅亡する。

計画策定時の目標数字強要(下記、文春記事)
《総裁選出馬表明》河野太郎大臣パワハラ“音声公開” 官僚に怒鳴り声で「日本語わかる奴、出せよ!」と…

記者会見YouTube 27分15秒から

「高市早苗衆議院議員の総裁選政策発表から」
「高市早苗氏 9月8日記者会見」

記者会見の前、9月3日に 渡邉哲也Showに出演し、記者会見より詳しい政策を開陳した。その中からエネルギー政策について下記に書き出した。(出馬記者会見、TV出演などでも同様の主張をされていた。)

「それから電力不足、これも前申し上げたかも知れませんけれども、こんだけ情報通信科学が進んだらもう消費電力半端ないということになりますね。文部科学省所管の国立研究開発法人が出していたあの報告書がもし正しければ、今の最新の機器を使ったとしても2030年に30倍、2050年で4000倍、電力消費があると。そうするとサーバーとかストレージを含めたあらゆる機器の省電力研究、今からやっておくと同時に、安定的な電力供給体制を今確立しておかなければ間に合いませんよ。産業も医療も生活も電力が無かったら大変なことになりますよ。(司会:太陽光だけだったらおてんとうさんだよりになりますね)無理ですね。太陽光と風力をあんだけ正面に据えたエネルギー基本計画の草案を見て私は呆然といたしましたけどね。結局負荷変動制ですから、これをフォローするために火力発電の割合が一番高くなっているじゃないですか。あれじゃだめで本当に安定的に電力供給しようと思うと、核融合炉しかないと思いますね。近いところであるとSMRという小型モジュール炉、あれを地下に入れるということも出来ますが、核融合炉はもう世界各地でかなりの74ですか実験炉が立ち上がっていますが、あれはウランとかプルトニウムがいらない、重水素とトリチウム、海の中から取れるような物が原料で発電出来るし高レベルの放射線廃棄物が出ませんし、安全でものすごい量の発電が出来ると言うことですから。この技術になんで日本は投資しないのかと思います。
スーパーコンピューター富岳の次の国家プロジェクトは最も安全できっちりと産業を支えられる核融合炉、これは京都大学のスタートアップが始めていますから、フュージョニアリングという企業ですが世界から注目される技術を持っている。ただ投資が少ない、まだ5億円しか集まっていないと聞いています。(米仏英の開発事情)3年間で3000億円の集中投資を技術を持ったところすれば、国産の小型核融合炉が3年から5年で開発可能だと思う。(以下略)」

【渡邉哲也show】272 Vol.2 9月3日 (11分25秒から、上記発言)

(注記)
「文部科学省所管の国立研究開発法人の報告」
国立研究開発法人科学技術振興機構・低炭素社会戦略センター
IT 機器の消費電力の現状と将来予測 12頁


「社会の情報化社会の発展によって、現在の電力消費量980TWh(9,800億kWh))に対し、2030年1,480TWhと1.5倍(全需要では2.5倍)、2050年には176,200TWhと180倍の電力量が加算される。(高市議員の2030年30倍、2050年4000倍は、IT関連消費電力2016年41TWhとの比較)

高市議員は経産省の基本計画はこのITによる電力消費量が含まれていないと指摘している。

高市議員は、第6次エネルギー基本計画を批判し、総需要電力の見積にIT機器の消費電力が抜けている、安定電源には、現有原発、小型モジュール炉、将来は核融合炉だと具体的に対案を示している。

 

核融合・京都大学のスタートアップ
京大エネルギー理工学研究所
 

河野大臣の再エネ100%は、日本においてあり得ない夢物語である。偏西風が絶えず吹き寄せる欧州では、風力100%はあり得るが、風況の弱い日本では不可能である。太陽光に頼れば、夜間や曇天の時の火力などのバックアップが必要になり、COPのカーボンフリーの目標を達成することは出来ない。

日本における再生可能エネルギーの導入可能量(エネルギー基本計画の7月13日提案)

前提 総需要 1兆kWh、最大電力 2億kW
        系統接続  供給量    備考    
 太陽光    7,380万kW  915億kWh 注1、注2
 風力(陸洋) 1,960万kW  409億kWh 注2
 地熱      150万kW   68億kWh
 水力      5,060万kW    934億kWh
 バイオマス   800万kW  471億kWh
(木質バイオ)  660万kW  389億kWh 注3

 再エネ合計          3,186億kWh
 原発              2,068億kWh (9400億kWhの22%)

 火力を除く合計       5,254億kWh    

注1:現状+FIT認可まで、以降は蓄電池付き自家消費型
注2:天候に左右される電源の合計は、最大電力の1/2以下
注3:人工林の若返り50年分割伐採提案

河野大臣の火力を止め、再生可能エネルギーを最大限、足りないところは原発という目論見は、総需要の半分しかまかなえない。どのような発電手段があるのだろうか。

科学技術振興機構のIT機器の消費電力を加えると、2030年、さらに1.5億kWh合計2億kWhが不足する。
11月の国連気候変動会議(COP26)に、国際公約(NDC)を提出する日本政府は科学技術に基づかない宣言をするのだろうか。

基本計画案のパブコメ締め切りが10月4日、その後関連省庁の承認を経て閣議決定され、環境大臣はCOP26に提出するNDCを作成し閣議決定(エネルギー基本計画と同時期か)に臨むことになる。10月4日以降、次期政権になるのだが、もし、高市氏が総理になれば、この日程はどうなるのだろうか。

2050年カーボンフリーにするためには、大出力の原子力や核融合の発電を建設せざるを得ないのではないか。太陽光や風力の不安定さを補う火力も必要で、CCS(二酸化炭素・吸収・貯蔵)を付加すればよい。

河野大臣のエネルギー計画は、科学技術を無視し実現できない数字を取り上げている。再エネ100%の電源構成は、不安定な電力を供給するため、基幹産業や半導体産業、IT企業の安定操業が困難になる。経営者は、安定した電源を保有する国に事業所を移すだろう。そして国内には失業者があふれ、日本は衰退に向かうだろう。

 

(第6次エネルギー基本計画および再生可能エネルギーについて、その検討を順次紹介する)