途上国にCOVID19ワクチンが回ってこない。特許を開放すれば世界中でワクチンを生産できるとWHOやバイデン政権が特許放棄を主張し始めた。この主張に反対するドイツなど先進国の間でも意見が分かれている。

AFP 5月7日

ワクチン特許放棄への支持高まる ファイザーなどは反発

 

 

「長く日の目を見なかった執念のワクチン開発」

 驚異的な予防効果のワクチンを1年足らずで実用化したビオンテック社(ファイザー社)とモデルナ社のmRNAワクチンの開発経緯を紹介する。

 

mRNAワクチンの基本を考えたカタリン・カリコ博士(66歳)
 1985年、夫と娘と三人で共産主義のハンガリーを脱出し米国へ、テンプル大学で研究職、1989年ペンシルバニア大学研究助手に。2005年、mRNAに関するカリコ・ワイズマン論文発表しようとしたが科学誌から掲載を拒否され、関心を集めることは出来なかった。大学勤務も常勤から非常勤に格下げ。この論文と特許に注目したのは、ドイツのBioNTech社と米国のModerna社、2010年にペンシルバニア大学はこの2社に特許を売却した。
 BionTech社を創設したのは、ドイツに移民したトルコ人夫妻の研究者、癌の治療の研究をしていた。カリコ博士は、2013年にBionTech社移籍しmRNAワクチンの研究開発に従事していた。BionTech社は2018年よりファイザー社とインフルエンザワクチンの共同で開発を行っていた。そこに今回のCOVIDウイルスの感染が発生し、蓄積した技術が迅速なワクチン開発を成功させた。

 

 一方、Moderna社もDARPA(国防高等研究計画局)の支援を受けながらmRNAワクチンの開発を進めていた。

 

 2社のワクチンは、開発速度及び予防効果が革命的であり、その起源を創ったカリコ博士を含む開発者達は、ノーベル賞受賞の資格があると言われている。カリコ博士と15年以上にわたり共同研究を行ってきたのは日本人の村松浩美博士である。

 WHOやバイデン政権は、長年に渡る苦労の末CIVIDワクチンの開発に成功した方々の成果をただ取りしようとしている。その技術の応用は他の疾病の予防や治療が考えられ、開発者としては特許開放を拒否するのは当然である。

 BionTech社はドイツの企業、従ってカリコ博士と同年代同境遇のメルケル首相(66歳、物理学博士、東ドイツ出身)も特許解放に反対している。
 Moderna社は米国企業で、国防総省のDARPAから支援されているので権利関係が不明だが、これまで売上がなかったようなので、一攫千金の機会を得て、特許解放には応じないと考えられる。

 なお、特許開放を行ったとしても、mRNAの製造には高度な技術が必要とされている。技術供与されても数年はかかると言われている。ファイザー社のCEOが語るように、現ワクチン製造企業の生産能力高めることの方が現実的である。

 

mRNAワクチンを生んだ研究者、カタリン・カリコの成功の裏にあるもの
 

【秘話】彼女こそ、ワクチン開発の「陰のヒロイン」だ


船引宏則先生の解説(Twitter)


船引先生記事を引用した吉松氏の解説
新型コロナのワクチンが1年足らずで開発できた理由~基礎科学が誘発したベンチャーの勝利

モデルナ社 2013年DARPAからの資金援助 2500万ドル

2020年 5600万ドル