トランプ陣営は、今年の米国の大統領選が不正選挙だとして、問題の接戦州の選管や州政府を提訴している。民主党やマスコミはバイデン候補が当選したと表明し政権移行の準備を始めていると報道。トランプ大統領は、政権移行準備を認めながらも敗北宣言を行っていない。現時点(11月末)では、当選者は決まっていなく、公式に決定されるのは、2021年1月6日の連邦議会における選挙人投票の開票結果による。
 以下、米大統領選のルールと想定されるトランプ陣営の戦略を紹介する。

(トランプ陣営の選挙結果に関する意義申し立てについては、民主党支配下の大手マスメディアやTwitterとFacebookなどのSNSがトランプ大統領の発言まで封じる厳重な報道管制を行っているので、事態の全容はつかめない。そのような状況下で、デマに近い創作記事が拡散されている。情報の取捨選択にご注意を!)

1.米大統領選出方法
1.1 アメリカ合衆国憲法

第2章 執行部 
第1 条[大統領と副大統領、選出方法]
[第1 項]執行権は、アメリカ合衆国大統領に属する。大統領の任期は4年とし、同一の任期で選任される副大統領とともに、つぎの方法で選出される。

[第2 項]各々の州は、その立法部が定める方法により、その州から連邦議会に選出することのできる上院議員および下院議員の総数と同数の選挙人を任命する。但し、上院議員、下院議員および合衆国から報酬または信任を受けて官職にあるいかなる者も、選挙人に選任されることはできない。

[第3 項]選挙人は、各々の州で集会して、無記名投票により2名に投票するそのうち少なくとも1名は、選挙人と同じ州の住民であってはならない。選挙人は、得票者と各々の得票数を記した一覧表を作成し、これに署名し認証した上で、封印をほどこして上院議長に宛てて、合衆国政府の所在地に送付する。 上院議長は、上院議員および下院議員の出席の下に、すべての認証書を開封したのち、投票を計算する。 最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。選挙人総数の過半数に達した者が2 名以上あり、かつ、得票数が同数の場合は、下院は直ちに無記名投票により、 その中の1名を大統領に選出しなければならない過半数に達した者がいないときは、得票者一覧表の中 の上位得票者5名の中から、同一の方法で下院が大統領を選出する。但し、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は1票を投じるものとする。この目的のための 定足数は、全州の3分の2の州から1名または2 名以上の議員が出席することを要し、大統領は全州の過半数をもって選出されるものとする。いずれの場合にも、大統領を選出した後に、選挙人の投票の最多数を得た者が、副大統領となる。但し、その場合に同数の得票者が2名以上あるときは、上院は無記名投票でその中から副大統領を選出しなければならない。[修正第12 条により改正]

[第4 項]連邦議会は、選挙人を選任する時および選挙人が投票を行う日を定めることができる。投票日は合衆国全土を通じて同一の日でなければならない。

[第5 項]大統領の資格(以下省略)

米議会調査局 RL32611
選挙人団制度―現代の大統領選挙における選挙人団制度の役割

選挙人団指名
 各政党は、合衆国から報酬または信任受けている官職にある者を除外して、州に割り当てられた連邦議会上院議員と下院議員の合計数と等しい選挙人を選ぶ。(連邦議会議員、立法及び行政職員、裁判官及び司法職員、連邦政府職員及び軍人を除外する。)連邦政府全体では、上院100名、下院435名であるが、州ではないワシントンDCに3人を付加し、合計538名の選挙人となり過半数は270人となる。
 各州の選挙人候補の指名方法は、各州の制度(州法)や政党に任せられている。
 (1)各政党の州の党大会で選挙人候補を指名:34州
 (2)各政党の州の中央委員会が選挙人候補を指名:10州
 (3)州知事による指名、予備選挙、大統領候補による指名:残り

選挙人の選出
 今日では、大統領選挙人はすべて有権者によって選出されているが、共和国の初期には、半数以上の州が議会における議員による投票によって選挙人を選出し、従って選挙における有権者の直接的な関与は一切排除されていた。しかしながら、19世紀に入り、有権者層がさらに広がるに伴い、この慣習は急速に変化し、最終的には選挙人選出の投票権が18歳以上の市民全員に拡大された。こうして、選挙人団制度において、有権者が大統領選挙人を選出するという伝統が定着したのである。

一般選挙の投票用紙
 大統領候補と副大統領候補の氏名と所属政党だけを記載し、その名前の横に「のための選挙人」という言葉を付ける形式である。

選挙人の任務
 指名された政党の候補者に投票する。

不実な選挙人
 指名された政党の候補者とは別の候補者に投票する。
 (事例)2016年大統領選
  誓約書と異なる候補者名を書いた「不実な選挙人」が共和党(トランプ)2名、民主党(ヒラリー・クリントン)5名が出たが、トランプ大統領は304-2=302票をとり、2017年1月6日に正式に決定された。いずれも同じ党の別候補に投票。

各州の選挙人獲得の仕組み
 (1)勝者独占方式:48州とワシントンDC
 (2)選挙区方式:メーン、ネブラスカ 
  下院議員選挙区の勝者数+州全体の勝者(上院2名相当)

選挙日程
総選挙(一般投票)
 偶数年11月第一月曜日の次の火曜日、大統領選挙は4で割り切れる年
 2020年は、11月3日、下院全員改選、上院1/3改選、大統領選挙

 

選挙人集会(各州における大統領選出の選挙人投票)
 12月の第二水曜日の次の月曜日
 2020年は12月14日
総選挙結果の確定と選挙人団指名の期限
 選挙人集会の6日前
 2020年は12月8日
選挙人投票の開票
 (1)選挙人集会での投票結果送付先
 ・連邦議会上院議長(副大統領)
 ・当該州の州務長官
 ・国立公文書館館長
 ・連邦地方裁判所判事
 (2)開票 1月6日
 連邦議会において上院議長の下に上下院合同会議開催し開票を行う。
 開票の結果、過半数270票以上を取った候補を勝者とする。
 ・異議申し立てがあった場合、上院、下院で審議し、それぞれ評決し、両院が異議に同意した場合はその選挙人票を除外する。

 付随選挙(決選投票)
  同数あるいは過半数に達しない場合は、下院で各州1票の選挙を行い大統領を選ぶ、上院では同様に副大統領を選ぶ。
  (50州のそれぞれが1票で、最多得票者が勝者となる。各州の議員団はその州の多数派が支配することになる。)

2020年選挙の大統領選について(トランプ陣営の戦術)

1.トランプ陣営側にとっては、接戦州の選挙人を州議会に選ばせる。
 そのためには選挙の無効化を訴える提訴行う。
 裁判所が不正投票があったと判定すればよい。
 州議会の選挙人名簿提出期限は12月8日
 州議会と州知事が異なる名簿を出す可能性がある。その場合は、1月6日の開票作業で異議申し立てを行い無効票にする。

2.バイデン候補の獲得選挙人を減らし、さらに「不誠実な選挙人」の投票を期待し、270票を獲得出来なくする。
 選挙人投票は12月14日、各州は投票結果と投票を封印し、連邦議会に送付する。

3.最終的には、1月6日の選挙人投票開票で、誰も過半数270票に届かなければ、連邦議会下院において50州の決選投票に持ち込む。(各州一票、計50票)
  連邦議会下院議員の共和党が多数の州は、少なくとも26州。(1月3日から改選後の議会、ペンス副大統領の現任期は1月20日12時まで)

「異議申し立ての運動」
1.接戦州における訴訟(数字は、選挙人数)
 州議会と知事が共和党:アリゾナ州(11)、ジョージア州(16)
 州議会と知事が民主党:ネバダ州(6)
 州議会共和、知事民主:ウィスコンシン州(10)、ミシガン州(16)、ペンシルベニア州(20)

2.トランプ陣営とは関係を持たず独自の運動を行っているシドニー・パウエル弁護士
パウエル弁護士のジョージア州とミシガン州を訴えた訴状と簡単な説明記事

3.CNNの9月27日放送「州議会と州知事が別々に選挙人名簿を連邦議会に提出した」場合のシミュレーション
(この動画、選挙後のCNNのパニック放送と拡散されているので注意!)