米議会は、2月6日、通商拡大法232条の超党派による改正法案(上院(S.365)、下院(H.R.1008))を提出した。2月18日の週(20日頃)にその条文(H.R.1008)が公表され、内容が判明した。
元USTR代表のポートマン上院議員が解説を公表した。
現在の232条では、商務長官が調査から救済措置までの権限を持ち、石油以外の輸入品に大統領が救済措置を命令できるが、改正案では、調査権限を国務長官に、救済措置を商務長官に分け、USTR及び上院財政委員会と下院歳入委員会との協議を義務付け、最終的には、全ての輸入品の救済措置の実施について議会の承認が必要であるとの内容である。
昨年3月の鉄鋼とアルミニウムへの救済措置実施を例外とし、今後の救済措置に改正法を適用する。自動車への232条適用調査報告書は2月17日に、商務長官から大統領に提出されている。
5月中旬(90日以内)までに、大統領は判断を下さなければならないが、その前にこの改正法案が成立すれば・・・
改正法案
「調査を国防総省、救済措置を商務省と権限を分離」
国防長官は、
・商務長官と協議
・国家安全保障上の影響評価
・商務長官からの情報と助言を求める
・政府幹部職員との協議
・上院財政委員会、下院歳入委員会との協議
・できれば、商務省と共同で公聴会開催。あるいはパブリックコメント募集
・調査開始から200日以内に大統領に報告書を提出
脅威がある場合、大統領は商務長官に救済措置について検討を指示
大統領から指示を受けてから100日以内に、商務長官は、国防長官、USTR代表、上院財政委員会。下院歳入委員会と協議して、大統領に勧告案を提出
大統領は商務長官の勧告案を受領してから60日以内に実施可否を判断
「議会の不承認権限」
1980年の改正で、石油及び石油製品に関する大統領の救済措置実施について、議会は不承認を行うことが出来るとされた。今回の改正案では、この規定の「石油輸入」を削除し、「輸入品」と全品目に拡大した。
「改正案の例外」
2018年3月8日の鉄鋼とアルミニウムに関する大統領措置は、改正案では適用しない。
H.R.1008条文
Trade Security Act of 2019
https://www.congress.gov/bill/116th-congress/house-bill/1008/text
通商拡大法232条(現法律)
「調査手続」(経産省概要より)
商務長官は、
(i)関係省庁の長官、利害関係者の申立て又は職権により、対象輸入品による国家安全保障に対する影響について、調査を開始し(232条(b)(1)(A))、
(ii)国防長官に対し、即座に調査開始を通知する(同(B))。
商務長官は、調査の過程において
(i)国防長官と、本件調査の方法と調査に関連して生じる政策上の問題について協議し、
(ii)適切な米国当局者から情報・助言を求め、協議し、
(iii)適切であれば、合理的通知を行い、公聴会またはその他の方法で、利害関係者から調査に関する情報または助言を受ける機会を設ける(同条(2)(A))。
商務長官の求めがあった場合、国務長官は調査対象産品の国防上の必要性について意見を出さなければならない(同(B))。
商務長官は、本件調査開始後270日以内に、大統領に対し調査報告書を提出しなければならない。輸入品により国家安全保障を損ねる恐れがあると認定した場合、その旨、大統領に報告しなければならない(同条(3)(A))。
機密情報を含まない調査報告書は、連邦官報で公表しなければならない(同(B)
大統領は、商務長官から国家安全保障上の脅威があるとの報告を受けた場合、90日以内に、かかる調査報告に同意するか、および、何らかの輸入調整を行うか否かを判断する。何らかの輸入調整(禁輸、関税引上げ、輸入数量制限、関税割当、輸入を制限するための交渉開始等)を決定した場合、15日以内に実施することとされている。
(以上現法律)
通商拡大法232条
http://uscode.house.gov/view.xhtml?req=(title:19%20section:1862%20edition:prelim)
経産省(概要)
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004532/2018/pdf/01_02.pdf