日本政府が「日米物品貿易協定(TAG)」、米国政府が「米日貿易協定(USJTA)」と呼ぶ通商交渉は、1月20日以降始まると予想されていたが、両政府から交渉開始の日程が発表されていない。

米国のメディアの報道もないが、日本の一部のメディアが観測記事を書いている。

 USTRは、昨年12月21日にUSJTAの交渉目的を議会に通知し、30日後の1月20日以降に交渉が始まる予定であった。しかし、メキシコとの国境の壁を巡る問題で、トランプ大統領がつなぎ予算案の署名を拒否し、1ヶ月以上の一部政府閉鎖となり、連邦政府職員が職場を離れ戦力不足の状態であり、USTRは3月1日期限の対中貿易交渉に集中し、日米貿易交渉に取りかかれない状況であり、3月以降になるだろうという観測記事。

 そして、3月は日本の予算審議の山場で、米国との交渉に力をさけなく4月以降になる可能性があると。

 

 そして、2月中旬から開始と予定されている米・EU貿易協定交渉も日程が明らかになっていない。

 

 1月25日、米上下院は2月15日までのつなぎ予算を可決しトランプ大統領が署名した。しかし国境の壁問題は大統領とペロシ下院議長の間で懸案事項になり、2月16日以降の予算執行が未定である。

(注;米国の連邦予算は、前年10月から当年9月までに執行される。2019年度予算は昨年10月から施行されることになっているが、本予算は、防衛とエネルギー分野のみ施行され、他の分野はその都度のつなぎ予算(暫定)で運営されている。)
 

2019年度の連邦予算の状況

 

https://www.congress.gov/resources/display/content/Appropriations+for+Fiscal+Year+2019

 

朝日 1月19日
日米の貿易交渉、春以降か 政府機関閉鎖、米の手続きに遅れ

https://www.asahi.com/articles/DA3S13855150.html
朝日英文記事(全内容記載)
http://www.asahi.com/ajw/articles/AJ201901190026.html

 

日経 1月25日朝刊
TAG交渉、来月以降に先送り
米中協議の行方、妥結内容を左右

 日米の物品貿易協定(TAG)交渉の開始が2月以降に先送りとなる見通しとなった。米国が中国との貿易協議を優先することに加え、米政府機関の一部閉鎖で日程調整がつかなくなった。日本政府は6月に予定するトランプ米大統領の来日を交渉妥結に向けたヤマ場とみている。交渉期間と米中協議の行方が妥結内容にも波及する。

 

 日米首脳会談まで期間短く

 

 日米貿易交渉は日本側は茂木敏充経済財政・再生相、米国側は米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が担当する。
  米国の国内法では他国と交渉を始める際は30日前に政府が交渉目的を議会に通知する必要がある。USTRは昨年12月21日に交渉目的を議会に通知し、1月下旬にも交渉が始まるとみられていた。

 

 政府閉鎖足かせ

 

 ライトハイザー氏は3月1日が期限の中国との貿易交渉の責任者でもある。トランプ氏は中国の不公正な貿易慣行の是正に意欲を示しており、ライトハイザー氏は当面、対中協議に取り組む。3月1日の期限が延長された場合、日米交渉は4月以降にずれ込む展開もある。
 米政府機関の閉鎖も日米交渉に影を落とす。業務ができないUSTRの職員は多く、日本の交渉担当者は「電話してもつながらない状態が続いている」と語る。
 米国が日本と交渉に入るために米国国際貿易委員会(ITC)が日米協定の経済的な影響を報告書にまとめる必要もある。ITCの業務が本格的に再開できなければ取りまとめが遅れ、交渉開始も後ろずれする。
 6月下旬に大阪で開く20ヶ国・地域(G20)首脳会議に合わせてトランプ氏が来日し、阿部進藤首相と会う。TAG交渉の節目と成り、その前に茂木氏とライトハイザー氏が何度か話し合うとみられる。首脳会談までの交渉期間は3ヶ月程度となる。

 

トランプ氏次第

 

 政府内には数ヶ月の短期決戦で妥結をめざす筋が行きもある。環太平洋経済連携協定(TPP)に続き、日本と欧州の経済連携協定(EPA)が2月1日に発効する。
 輸出競争力が落ちる米農家からは日米協定の早期妥結を求める機運が強まっている。米国が協定妥結を急げば、農業の関税引下げはTPP水準までという日本の主張が通りやすくなる。安倍政権にとっては受け入れやすい。
 交渉が長期にわたるとの予想もある。元日銀審議委員で野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「米国は日本が簡単に飲めない要求を突き付けてくる。決着には1年くらいはかかる」とみる。
 トランプ氏が日本車の輸入に数量規制の導入を要求したり、対日貿易赤字の要因は日本の通貨安誘導だと主張してきたりするシナリオだ。トランプ氏の発言に市場が反応して円買いが進めば、日本は自動車や農業といった分野で妥協を迫られる厳しい交渉になりかねない。
 米中交渉も変数となる。米中が何らかの貿易促進策で合意した場合、トランプ氏の貿易赤字削減の矛先が日本に向かう可能性がある。
 米中協議が決裂したときは米国が日本との連携強化に動くことも、逆に日本との貿易協議で成果を上げようとする事態も考えられる。米中協議の結果が日本に有利に働くかどうかは分からない。
 日米両政府は昨年9月下旬の共同声明でTAG交渉の範囲について、 物品関税と「早期に結論が得られるサービス分野も加えるとした。12月には茂木氏とライトハイザー氏が電話し、共同声明を順守して交渉する方針を申し合わせた。
 それでもトランプ氏の意向次第で交渉方針は変わる。米国がサービス分野で薬価制度の見直しや金融サービスの規制緩和などを要求してくると日本にとっては難題だ。
 藤崎一郎元駐米大使は「一旦交渉が始まったら日本が遅らせようとしているとの濡れ衣を着せられないように、速やかに対応していく必要があると」と指摘する。

 

ロイター 1月26日

米上院、3週間のつなぎ予算を可決 政府閉鎖解除へ

https://jp.reuters.com/article/usa-shutdown-trump-deal-idJPKCN1PJ2KY