「TPA(大統領貿易促進権限)が今年6月末で失効する」と語っている方々がいる。TPP11協定と関連法案の本格的な審議が昨日5月16日より始まった。
今日17日の衆院内閣委員会・TPP11関連法案審議の参考人意見陳述において、中川淳司東大社会学研究所教授がTPAが6月末で失効すると語っている。(中川正春議員の質問に答えて1時間26分過ぎ)
「通商交渉権限TPA法は6月末失効する。新しい交渉権限を議会に認めてもらわない限り、日米FTA交渉は始められない。」
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=48153&media_type=fp
中川東大教授の「TPA法6月末失効」説は誤りであり、TPA法の読解が不十分であること、そしてトランプ政権と議会の動きを見ていないことが原因と思われる。
「CRS(議会調査局)レポート」
本年4月10日に発行されたCRSのTPAに関するQ&Aに、今年7月1日に期限を迎えるTPAの2021年7月1日までの延長の手続きに入っていることを解説している。
もし大統領が延長を申請し、(大統領は今年3月20日に延長申請した)議会が延長反対決議をしなければ、TPAは2021年7月1日まで有効。
CRS report R43491 April 10, 2018
Trade Promotion Authority (TPA): Frequently Asked Questions
Summary
TPA is authorized through July 1, 2021, if the President asks for an extension — as he did on March 20, 2018, and Congress does not enact an extension disapproval resolution within 60 days of July 1, 2018.
The United States is now engaged in renegotiation of the North American Free Trade Agreement (NAFTA), for which TPA could be used to consider implementing legislation.
The issue of TPA reauthorization raises a number of questions regarding TPA itself and the pending legislation. This report addresses a number of those questions that are frequently asked,
including the following:
https://fas.org/sgp/crs/misc/R43491.pdf
「3月の大統領貿易政策・公聴会」
下院歳入委員会のブラディ委員長は、3月21日ライトハイザーUSTR代表を招聘して大統領貿易政策についてヒヤリングを行った。その際、3月20日に大統領よりTPA法の2021年7月1日までの延長申請を受領し強く支持する旨を発表した。(TPA法有効期限は2018年7月1日)
“I strongly support the President’s request for TPA renewal, which he submitted to Congress yesterday, and I’m glad to see in his report that he intends to use TPA to negotiate new agreements consistent with Congressional objectives. TPA establishes a vital partnership between the Executive Branch and the Legislative Branch, in which Congress sets out the detailed objectives for negotiations as well as specific rules for consultation with Congress and the public.
https://waysandmeans.house.gov/brady-opening-statement-hearing-presidents-trade-policy-agenda-ustr-lighthizer/
3月22日の上院財政委員会の公聴会でもハッチ委員長がTPAの延長申請を歓迎すると発表した。
Finally, I welcome the Administration’s decision to seek a renewal of Trade Promotion Authority. I particularly welcome the President’s announcement that he would use an extension of TPA to aggressively negotiate new trade agreements.
https://www.finance.senate.gov/chairmans-news/hatch-opening-statement-at-finance-hearing-on-us-trade-agenda-
大統領のTPA法延長申請に対して、両院のどちらかが反対決議をしない限り承認されたものとする規定があり、法案提出権を持つブラディ委員長もハッチ委員長も反対決議案を提出することはなくなった。(議会が何の行動も起こさなければ自動延長)
「NAFTA再交渉合意期限」
6月30日まで有効なTPA法においては、NAFTA再交渉協定の署名が最終期限の6月30日になり、合意の議会通知は90日前の4月1日になる。
下記WSJ記事で、ライアン下院議長は、年内に協定の批准と国内法審議を終えるためには、5月17日までに事務手続き(合意の議会通知)を行う必要があると語っている。すると協定署名は90日後の8月15日頃になり、それまでTPA法が有効であることが前提となる。
つまり、米議会もトランプ政権もTPA法が2021年7月1日まで延長されたと認識しているはずである。
WSJ記事
By Siobhan Hughes and William Mauldin
2018 年 5 月 11 日 14:26 JST
北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の期限が迫る中、米国とメキシコ、カナダの加盟3カ国は、最大の争点である自動車関連規則の見直しに焦点を絞っている。米国は11月に中間選挙、メキシコでは7月に大統領選挙が迫っており、意見が分かれているその他の部分の大幅な変更は見送られる公算が大きい。事情に詳しい関係者が明らかにした。
議会共和党の補佐官は、NAFTA再交渉で担当者らは、自動車・自動車部品関連規則の全面改定などにとどまる「中身の乏しい合意」に達する可能性があると述べた。2人の業界関係者は、新しい自動車関連規則での合意が優先され、トランプ政権が修正を目指している他の項目が交渉の場で取り上げられるのはその後になるとの見通しを示した。
NAFTA再交渉というまたとない機会に恵まれ、3カ国はできるだけ多くの問題に対処しようとしている。メキシコのイルデフォンソ・グアハルド経済相は、自動車関連規則での合意を実現するために譲歩するとみられるが、協定には他の重要な項目も盛り込むよう繰り返し要求している。
米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表とグアハルド氏はカナダのクリスティア・フリーランド外相とともに自動車関連規則の見直しに尽力している。3氏は先ごろ、自動車部品の域内調達比率を引き上げる規則に幅広く取り組むことで合意した。この規則には、高賃金労働者による部品を使用した車両数がかなりの割合に達していることを免税適用の条件とすることも盛り込まれる予定だ。
だが残された時間は少ない。ポール・ライアン下院議長は9日、年内に下院でNAFTA修正案を審議するには17日までに事務手続きを終える必要があると述べた。この期限はライトハイザー氏が示した目安と一致する。同氏は、来週大筋合意する必要があり、合意できなければ、年内に議会での採決に至る見込みはかなり薄くなると語った。
共和党は来年、議席を減らすか、あるいは下院での多数党としての地位さえ失う可能性がある。そうなれば、NAFTAなどのドナルド・トランプ米大統領の優先事項の実現を支援できなくなる。
http://jp.wsj.com/articles/SB11564419389268263594104584217221382570900
この方も、TPA法の延長手続きをご存じ無かったようだ。
双日総合研究所
吉崎達彦氏
ブログ「かんべいの不規則発言」
<4月15日>(日)
○日本側としては、うまく時間稼ぎをしたい。なにしろ7月になれば、TPA(貿易促進権限)が切れますので。今の連邦議会の雰囲気では、トランプ政権にTPAの延長を認めはしないだろう。それさえなければ、いくら交渉を求められても怖くないんですよねえ。さて、アメリカ側はどんな手を使ってくるんでしょう。
http://tameike.net/diary/apr18.htm
4月19日テレビ朝日「報道ステーション」での解説
「議会から取り付けている貿易交渉権限が6月30日で切れる」
2015年TPA法の解説:CRSレポート
(14頁に延長手続 Extension Disapproval)
https://fas.org/sgp/crs/misc/RL33743.pdf
2015年TPA法
(SEC. 103. TRADE AGREEMENTS AUTHORITY.に延長手続き)
https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/PLAW-114publ26/pdf/PLAW-114publ26.pdf