米議会は3月28日より4月12日までのイースター休会に入り、議員はワシントンを離れ、外遊に出発、あるいは地元に戻った。


 TPP交渉に不可欠はTPA法案は、上院財政委員会のハッチ委員長(共和)からワイデン民主筆頭理事に草案が渡されたまま休会に入った。

 3月27日米政界にリード院内総務の引退声明という激震が走った。彼の引退声明を考察すると、2016年選挙において民主党の復活、特に上院多数党の獲得を目指す戦いに、民主党の政治資金を効率的に利用するため、ネバダをはじめとする費用のかかる選挙区より他の選挙区に振り向けることを語っている。2014年4月、米最高裁が政治行動委員会(PAC)への献金上限設定を違憲とした判決を出したこともあり、今後、天井知らずの選挙資金集めになる可能性がある。


 民主党大統領候補がクリントンかウォーレンかと言う議論は、ウォール街とセレブが支援する前者かそれともウォール街を敵に回し中産階層を引きつける後者かという選択になる。しかし、ウォール街を味方にした民主党候補は、さらに富を持つ大富豪の保守派(共和党)との政治資金の集金競争になる。2014年中間選挙で共和党が勝ったのは、大富豪の支援があったからだと言われている。
 リード院内総務が集金能力の落ちる民主党の戦い方を考えて、主戦場を避け当選者数を増やす戦略を立てた結果が、彼自身の引退声明であったと考えられる。
 少ない資金で戦うとすれば、中産階層を集められるヒーローいやヒロインを先頭に立てて戦うだろう。その意味で、来月4月は大きく政治的潮流が変わる重要な節目になる。以下、米政界の動向を紹介する。


TPA法案
 3月24日にハッチ上院財政委員長(共和)からワイデン民主筆頭理事にTPA法案の最終草案が送付され、ワイデン議員およびスタッフが調査中とのコメントを発したまま、3月28日から始まるイースター休会に入った。
 ワイデン議員の地元オレゴン州では、左派の民主党支持者が、TPA及びTPPに反対して2016年改選の予備選でのワイデン議員への支持を材料にして圧力を加えている。この2週間の休会の間、ワイデン議員は地元有権者との対話で立場を固めると思われる。

 従って、TPA法案の公式的な処理は、休会明けの4月13日以降になる。

POLITICO Morning Trade 2015年4月3日


 米上院財政委員会の補佐官達が、TPA法案について、4月13日委員会上程、15日公聴会、21日マークアップ(委員会態度決定)の仮の予定を立てた。議会休会の間、ハッチ上院財政委員長、ワイデン筆頭理事、ライアン下院歳入委員長のスタッフレベルの協議を行っている。ワイデン筆頭理事は、議会により大きな力とTPAを越える監督権を与える基準を含めるよう求めている。

 この法案に関する早い動きは、マッコネル上院院内総務に、来たるべき6週間の立法期間に割り込むよう合図を送ることになるが、その6週間は、予算承認からイランとの原子力エネルギー協定に関する政治的影響まで、そしてサイバーセキュリティ法案からハイウエイ資金提供法案までの大きな課題がいっぱいである。


(コーク(Koch)兄弟が、輸出入銀行法案反対の宣伝と議員への要請の活動を開始)


ペロシ議員団の日本訪問
 ペロシ院内総務とレビン歳入委員会筆頭理事は、「民主党員は、TPAを支持する前に、最終のTPP協定を明確に理解すべきだ」と語った。

(以上POLITICO記事)

リード院内総務引退声明(注1)
 3月27日、ハリー・リード上院議員(民主党院内総務)が、2016年の改選選挙の出馬を見送ると引退声明を行った。1月1日に使用していた健康器具が潰れ、右目を傷め肋骨を骨折した。この事故で2月中旬頃まで登院せず治療に努めていた。この負傷が原因ではないと語っているが、今75歳、来年76歳そして6年の任期を終えるまでに82歳に到達する。

 引退の理由は、2016年選挙で民主党が勝利するために資金を配分したいとのこと。ネバダでは大富豪のコーク(Koch)兄弟のような保守派との戦いに多くの費用がかかること、メリーランド、ペンシルバニア、ミズーリ、フロリダのような費用がかかる選挙区に浪費すべきではないと語っている。(注2)


 リード院内総務は、後継の院内総務にチャールズ・シューマー上院議員(ニューヨーク州選出)を推薦していると語っている。また、共和党のマッコネル院内総務には、2016年末会期を終えるまでは、仕事をすると宣言している。

ニューヨークタイムズ 3月28日
http://www.nytimes.com/2015/03/28/us/politics/senator-harry-reid-retire.html?_r=2
リード院内総務本人の引退声明
http://www.reid.senate.gov/press_releases/thank-you


(注1)議員の去就決定時期
 ワイデン前財政委員長(現筆頭理事)の前任者のボーカス元財政委員長は、2014年中間選挙で改選をむかえる予定であったが、共和党寄りの政策を推進してきたこと、最終的には2013年4月の銃規制法案に反対したことが地元モンタナ州の民主党員の怒りを買い、ボーカス議員を推薦しないことを決定、そしてボーカス議員は2013年4月23日に引退声明を行う。オバマ大統領は、ボーカス議員を中国大使に指名、2014年2月上院満場一致で承認され北京に赴任した。

 連邦議員は各州の代表であり、各政党の地元組織が候補者を選出する。日本のように全国的な党中央が候補を公認するのではない。キャンペーン組織設立や政治資金集めなどの準備の日程上、選挙1年前の春がその地域の候補者を選出する時期である。従って、リード院内総務もワイデン上院議員も、さらには大統領候補も4月中には決意表明が必要になる。ヒラリー・クリントン氏が4月にも決意表明を行うだろうと言われていることも同様の事情だ。


(注2)コーク(Koch)兄弟
 2014年中間選挙で共和党の躍進を支えたコーク兄弟が、リード議員を追い出すために2016年選挙に多額の資金を投入すると予想されている。二人の資産を合わせるとビル・ゲーツを越える大富豪の資金力は脅威である。
http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=763


 2010年、ネバダの上院議員選では、リード上院議員は共和党(茶会党)の女性候補に追い上げられ、50.3%で当選。この時、リード上院議員は政治資金集めに、かなり苦労されたようだ。(2010年の資金集めでダーティハリーと著名なメディアが表現した。)


ウィキリークスのTPP協定投資章漏洩
 3月25日、ウィキリークスが2015年1月20日付TPPの投資章の草案を漏洩した。
ウォーレン上院議員とホワイトハウス並びにUSTRとのISDS議論に格好の資料を公開したことになる。
 下記の付属書には、各国のISDSに対する例外扱い要求が書かれている。(日本の要求はない)
WikileaksTPP投資章漏洩文書(56頁)
https://wikileaks.org/tpp-investment/WikiLeaks-TPP-Investment-Chapter/page-1.html

例外要求の詳細は上記ウィキリークスの漏洩文書の46ページからの下記項目
Annex Ⅱ-H
Annex Ⅱ-I
Annex Ⅱ-J
Annex Ⅱ-L


ロイター報道 3月27日
TPP交渉焦点、豪加など例外扱いの可能性=告発サイト
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MM0GZ20150326
[ワシントン 26日 ロイター] - 環太平洋連携協定(TPP)交渉の焦点のひとつで、企業が投資先の政府を訴えることを認める「ISDS条項」について、オーストラリア、カナダ、チリなどの政策の一部が例外扱いとなる可能性がある。内部告発サイト「ウィキリークス」が25日、合意案を明らかにした。
 1月20日付のISDS条項の草案は、加盟国が外国企業に対し差別的な扱いをすることを禁じている。また企業は資産を没収されたり国有化されたりした場合は補償を受けられ、紛争解決のための措置を開始できるとしている。
 ISDS条項が適用されなければ、外国企業が投資先の国の政策により不当な損害を受けてもその国を訴えることができなくなる。同条項をめぐっては企業の力が強くなり過ぎるという批判が出ている一方で、差別的な政策から企業を守るために必要との指摘もある。
 オーストラリアは医薬品の購入補助制度など、カナダは映画などの芸術産業をISDS条項から除外するよう求めているという。チリは必要に応じて資本管理制度を中銀が導入することや、外国人投資家が資産を売却した資金を国外に持ち出す際の制限を維持することを要求している。
 コロンビア・センター・オン・サステイナブル・インベストメントの投資法責任者、ライズ・ジョンソン氏は、環境や公共利益の目的で規制を行う政府の権利が「非常に弱いようだ」と指摘した。
 フロマン米通商代表部(USTR)代表は26日、TPP交渉について、確固とした期限はないものの、数カ月以内の妥結を望むと述べた


下院超党派議員団、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、韓国、日本を歴訪

首相 米議会で日米同盟の役割発信へ
NHK 4月3日 18時29分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150403/k10010037771000.html

 安倍総理大臣は日本を訪れているアメリカ議会の与党・民主党のペロシ下院院内総務と総理大臣官邸で会談し、今月下旬にアメリカ議会で行う演説では、日米同盟が地域や世界の平和と安定に今後も主導的な役割を果たしていくことを発信したいという考えを示しました。

 この中で安倍総理大臣は今月下旬からのアメリカ訪問で行う議会演説について、「日本の総理大臣として初めて上下両院の合同会議で演説できることを大変楽しみにしているし、大変光栄なことだと思っている」と述べました。
 そのうえで安倍総理大臣は「日米同盟が地域や世界の平和と安定のために主導的な役割を果たしていくということを発信したい。普遍的価値を共有する国どうしの同盟関係は強固であり、世界をよりよいものにしていくために大きな役割を担っていく。そういう意味、意義を発信したい」と述べました。
 また、安倍総理大臣が、TPP=環太平洋パートナーシップ協定について、「早期の妥結に向けて日米でリーダーシップを発揮していきたい」と述べたのに対し、ペロシ下院院内総務は、「われわれもはっきりとした道筋をつけたいと考えており、最善の努力をしていきたい」と応じました。

(以上NHK)

ペロシ院内総務の挨拶中のTPPに関する発言(4月3日)
「 All of our Members want to be a ‘Yes,’ but we have some concerns. 」
「我々全員がイエスと言いたいが、未だ課題を抱えている。」
http://www.democraticleader.gov/newsroom/pelosi-bipartisan-delegation-meet-with-japanese-prime-minister-abe/

2015年3月28日、グアムでの発表

 ナンシー・ペロシ民主党院内総務、サンダー・レビン歳入委員会筆頭理事ら合計10名の議員団が、訪問先に出発。3月28日グアムで給油後、カンボジアに到着すると発表されている。目的は、安全保障、人権、貿易問題に関する米国との重要な関係について集中することである。特にTPP協定が地域の市場経済にどのような影響を与えるか理解を深めたい。
ペロシ院内総務の声明文(グアム、アンダーセン空軍基地 3月28日付)
http://www.democraticleader.gov/newsroom/pelosi-leads-bipartisan-congressional-delegation-to-asia-2/
Twitter
https://twitter.com/nancypelosi


議員団は、委員会の任務に関して豊かな経験を持つ年功者と一年生議員からなる。
(特に、ペロシ院内総務、歳入委員会のレビン筆頭理事、ランゲル議員は最重要人物)
Nancy Pelosi D-CA), Democratic Leader, Represents Democrats on the House floor.
ナンシー・ペロシ 民主党リーダー、下院院内総務(75歳)
Charlie Rangel (D-NY), Ways and Means Committee, Veteran of the Korean War
チャーリー・ランゲル 歳入委員会、朝鮮戦争退役軍人(84歳)
Sander Levin (D-MI), Ranking Member, Ways and Means Committee
サンダー・レビン 歳入委員会、民主党筆頭理事(83歳)
Anna Eshoo (D-CA), Energy and Commerce Committee, former Member of the Intelligence Committee (エネルギー商業委員会、前情報委員会)
Zoe Lofgren (D-CA), Judiciary Committee, Science, Space and Technology Committee, Committee on House Administration(司法委員会、科学宇宙技術委員会)
Mike Thompson (D-CA), Ways and Means Committee, former Member of the Intelligence Committee, Veteran of the Vietnam War(歳入委員会、前情報委員会、ベトナム戦退役軍人)
Doris Matsui (D-CA), Energy and Commerce Committee (エネルギー商業委員会)
Mike Fitzpatrick (R-PA), Financial Services Committee (金融委員会)
Dan Kildee (D-MI), Financial Services Committee; Member, President’s Export Council
 (金融委員会、大統領輸出協議会メンバー)
Mark Takai (D-HI), Armed Services Committee, Natural Resources Committee
 (軍事委員会、天然資源委員会)


3月28日グアム経由でカンボジア入り、30日カンボジア首相と会談、31日ベトナム国家主席および政府高官と会談、4月1日ミャンマー、4月2日韓国、4月3日日本入り。


ペロシ院内総務の公式HP これまでの行動は下記 The Latest Newsに掲載
http://www.democraticleader.gov/

(ベイナー下院議長(共和党)ご一行は、英国とイスラエルを含む中東地区を訪問中。)