TPP交渉における米国の要求がリークされている。医薬品、知的財産、農産物などについて紹介する。

「米国医薬品業界の知的財産権の拡大と薬価決定要求」

NZ National Business Review
ニュージーランドは従来の特許法のチェックを完了した。両院の新しい要求は、第15節において以下の除外を含む:
(2) 手術または治療による人間の治療の方法の発明は、特許性のある発明でない。
(3) 人間に行われる診断の方法の発明は、特許性のある発明でない。
(3A)コンピュータープログラムは、特許性のある発明でない。
ニュージーランドの議会の全ての党が参加する商業委員会が満場一致の支持があり、上記三つの除外項目がTPPA草案において認められない。
http://www.nbr.co.nz/article/opinion-us-heavies-nz-software-patents-ck-106373?page=1


Public Citizen
 医薬品の特許にかかわる米国要求とTRIPS(WTO)および各FTAとの比較(注1)
http://www.citizen.org/comparative-chart-trips-tpfta-fta

Advocate記事
 米国が要求しているTPPにおける医薬品の特許拡大と制約は、AIDS(HIV)対策に多くの負担をかけるであろう。
http://www.advocate.com/Health_and_Fitness/AIDS_The_30_Years_War/Op_Ed_US_AIDS_Policy_vs_US_Trade_Policy/

米国バイオ医薬品業界の見解(注2)
米国はバイオ医薬品の輸出は2005年の291億ドルから2010年の467億ドルと60パーセントの増加で、この間2320億ドル以上を輸出した。2010年は自動車の輸出より多い。
革新的な薬の導入を遅せる貿易障壁を制定しているだけでなく、適正でない価格設定と政策を実行している外国の政府に、知的所有権を保護することを求める。
米韓FTA(KORUS)の医薬品にかかわる協定は、二十一世紀の貿易協定のモデルである。交渉中のTPPにもそれを含む。
http://thehill.com/blogs/congress-blog/economy-a-budget/198967-biopharma-exports-benefit-the-us-economy-and-global-health

やはり、米国は、TPP = TPP_P4+KORUS-FTAと意識している。米韓FTAを読み解けばTPPへの米国の要求がわかる。
注1、注2の二つの資料を見ると米国の医薬品の輸出戦略がわかる。

「農産物」
米国農業団体が日本が国内プログラムの変更を行うこと、日本をTPP交渉に取り込むようにUSTRに請願状を出した
http://www.nppc.org/UploadedFiles/JapanTPPAgLetter.pdf
(前略)
日本は食品と農業部門における実質的な輸入障壁を維持するにもかかわらず、全体的な米国の第四位の農業輸出市場だ。これらの障壁があるにもかかわらず、2010年に日本に対する米国の輸出はほぼ120億ドルとなった。
(中略)

「対日要求」
日本のTPP参加、車や牛肉譲歩が前提(2012/1/4 日本経済新聞 朝刊)
バーシェフスキーUSTR元代表に聞く

 環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉メンバー国が、昨年参加を表明した日本との個別協議開催へ調整を進めている。クリントン米政権の元米通商代表部(USTR)代表を務め、今も通商政策に深く関わるシャーリーン・バーシェフスキー氏に聞いた。
 世界貿易機構(WTO)の多角的通商交渉(ドーハラウンド)が頓挫する一方で米政府はTPPに重心を移しつつある。
 「TPPの持つ意味はドーハ失敗の対応に止まらない。中国の再浮上と並行する形でアフガニスタンやパキスタン、イランなど安保・外交上の懸案が同時に噴き出し、米は様々な角度からアジアへの関与を強めたいと考えている。米はアジアで軍事力の中心を占めてきたが、経済面の存在感は小さ過ぎた。」
 TPP参加協議で日本に求める行動は。
 「国内で必要な改革を断行できない国を入れても交渉全体を遅らせるだけ、というのが米政府と議会、他のメンバー国の共通の認識だ。日本は参加の前提として、米日間の長年の課題である農業や自動車、牛肉、(規制などの)非関税障壁、日本郵政の保険分野などを巡り顕著な譲歩を示すことが必要になる。
 「米議会は米韓FTA(自由貿易協定)で(米産自動車の輸入拡大など)韓国から引き出した以上の日本の大幅な譲歩を求めたい意向だ。私は(自動車輸入数量割り当てなどの)数値目標の導入まで想定していないが、日本への市場アクセスの問題が改善されない場合に米側が一方的に廃止できるスナップ・バック条項を設ける必要性はある。
 TPPを中国封じ込めとみる向きも多い。
 「中国の経済力は既に強大で、封じ込めなど不可能だ。米通商戦略は成果に乏しい「失われた10年」を経てきたが、貿易は米経済の将来にとってあまりに重要で、オバマ大統領は再び商店を当てている。共和党政権になってもTPPと米日関係の重要性はより増してゆくだろう。」聞き手 ワシントン 矢沢俊樹