TPPの議論の中で、24部門の内容が非公開と言われ、政府もマスコミも発表していない。内容が分からないのに交渉に参加できないと言うのは正直な行為であろう。参加してから内容を知らされ、知った以上は抜けられないと拘束される気配である。
 何らかの方法がないかと思案していたら、これまでの日米の通商交渉を調べてみたらと思い立った。捜してみると、国際経済交流財団「各国のEPA/FTAの交渉方針に関する調査報告書」を発見し、目を通した。米国のこれまでの主張と行動が整理されている。
http://www.jef.or.jp/PDF/j21-2-03.pdf

 さらに、その引用文献を調べてみた。米韓FTAのfinal textのリンク先が記載されていた。
http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/korus-fta/final-text

気の遠くなる膨大な資料である。また、付属書などのリンクがないので、全貌を知るのは困難である。
概要版があったので、以下紹介する。ネットで流布されている「毒素条項」なる項目はどれか判らない。読んでいくと、投資、金融(郵便、共済、保険)、サービス(放送、通信、医療、教育)は、米国の法律が適用され、韓国の主権が消えてしまうような条文である。韓国は51番目の州を希望していると考えざるを得ない。

米国の通商代表部のHPのU.S.- South Korea Trade Agreementに「More Exports More Jobs」と大きなタイトルが掲載されている。5800億ドル市場の韓国に輸出を増やし、7万人の雇用を増やすと明記されている。その分野は、工業製品、農産物、サービスである。
http://www.ustr.gov/uskoreaFTA

(かなりの意訳をしています。また、外交的専門知識も持ち合わせていませんので誤訳があると思います。誤訳と思われたら原文で確認して下さい。)

米韓FTAの概要
http://www.ustr.gov/about-us/press-office/fact-sheets/2009/april/summary-us-korea-fta

 米国と韓国は、2007年6月30日に二国間自由貿易協定を締結した。この包括的な貿易協定は、物品及びサービスの貿易、経済成長を促進し、米国と韓国との経済関係を強化する関税その他の障壁を排除する。
(省略)

New Market Access for U.S. Consumer and Industrial Products(製品)
消費製品、工業用製品の95%協定発効から3年以内に免税、残りは10年以内に免税。

Increased Access for U.S. Autos(自動車)
(省略)
・米国の乗用車およびトラックにかかる関税を除き、自動車にかかる自動車税などの徴税システムを改善し、新しい徴税システムを作らないこと。
・米国の自動車の販売を阻害しないように、特定の自動車の安全性や環境基準を改善する。そのため自動車WGを設置する。(米国規準?)
・韓国は、貿易障壁をつくるような技術基準を作らない。
・韓国側の契約違反や、米国車の韓国における販売に関する障害が認められる場合は、米国が免税を停止することができる。(Snap-back)

Expanded Markets for U.S. Farmers and Ranchers(農産物)
韓国への輸出品は、協定発行時、2年後、5年後に(それぞれ品目指定)に免税あるいは減税とする。牛肉、豚肉も含む。
(25日追記;品目別協定と州別割当)
http://www.fas.usda.gov/info/factsheets/Korea/us-koreatafactsheets.asp#States

Textiles and Apparel - Promoting Cooperation and Benefits(衣類)
"yarn forward" rule 原糸が米国産であれば、米国製とみなす。
この監査のため、両国の税関は予告無しで工場査察が可能。
(省略)

Important New Protections for U.S. Investors(米国の投資家保護)
・韓国で活動する米国の投資家はこの協定により守られ、韓国内の投資活動は韓国の投資家と同じ待遇を受ける。
・外国人(米国、韓国以外)の投資家は同じルールで活動できる。
・この投資家の保護規定に政府が違反した場合、投資家は国際仲裁機構に提訴出来る。
・外国人投資家の権利は、米国、韓国の投資家の権利を超えない。
(米国法律>米韓FTA>韓国法律の可能性が高い)

Open Services Markets(サービス)
・国境を越えるサービスの提供が可能。
・韓国は、米国のサービス提供者の保証、国際配送サービスへの国内便宜をはかる。
・韓国内での外国人弁護士と会計士の活動の自由。(韓国の資格者と共同で)
・医療と高等教育の改革と活動の自由。
・研究開発、保守、環境サービスの活動の自由。

Improved Financial Services(金融)
・米国金融機関の韓国における完全な活動の保証。
・支点開設の自由。
・韓国における投資ファンドの国際的なサービスの保証。
・韓国は、外貨準備、保険販売など金融サービス分野における規制改革を行う。
 郵便局と共済組合は、民間保険会社と同じルールに改革する。

A more open broadcast market for U.S. audio-visual products(放送と視聴覚)
・米国の放送と視聴覚サービスの会社が、韓国内において100%所有の会社が設立できること。3年以内に。
・韓国の映画やアニメーションの比率を減らし、単一の国(USか?)のコンテンツを増やすこと。
・それ以外のコンテンツは現状通り。
・米国のIPTVの投資を可能にするため、韓国のコンテンツを統合することが可能。
 (注;日本における放送局の外資比率は、20%以内)

An Open and Competitive Telecommunications Market(通信)
・米国の通信業者が韓国において100%所有の企業として活動できる。
・米国企業は、韓国の電話、海底ケーブルなどへアクセス出来る。
・米国の優れた無線技術を採用すること。

(続く)