菅前総理に較べたら少しはまともな総理になったのかと思ったが、人事や幼稚園児まがいの発言をする閣僚をみて暗澹たる気分に落ち込んでいる。
 菅前総理が望んだ「再生可能エネルギー電気調達特措法」(FIT;Feed in Tariff)が、野党の修正案を受入れ参議院で8月26日可決成立した。
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/whole.html


方谷先生に学ぶのブログ

主な修正条項は、
1.買取価格・期間の決定プロセスの透明化(第3条)
  農水、国交、環境、消費者担当大臣と協議した上、第三者の「調達価格等算定委員会」の意見具申を尊重し、
経済産業大臣は、毎年度買取価格を決め、根拠、算定方法を国会に報告する。
2.賦課金(サーチャージ)の請求
  再生可能エネルギー電力の買取に要した費用を電力需要家に請求できる。(第16条)
  ただし、大口電力需要家(第17条)と東北大震災被害者(附則9条)の賦課金の軽減をはかる。
3.法律施行日
  平成24年7月1日より。調達価格は事前に決定できる。(附則2条)
4.施行後3年間の優遇買取価格
  利用拡大のため、特定供給者の利潤を考慮して買取価格を決定する。(附則7条)

 買取価格と期間の決定は、算定委員会の意見具申を待たなければならないが、住宅用太陽光発電の場合、現状制度(10kW未満、10年間、余剰電力、42円/kWh)を継続維持すると附則に書かれているので、これを基準として大規模発電システムを含めて決定されるだろう。
この買取価格・期間が、投機に走るようなレベルになると、ドイツのFITが引き起こした各国のFIT制度の破綻、太陽光発電メーカの破綻、多くの投資家達の損失と言った悲劇が繰り返されるだろう。
 昨年このブログで、FITの問題指摘と太陽光発電(PV)業界の今後の予想を掲載した。
http://ameblo.jp/study-houkoku/entry-10678920085.html#main

 昨年の予想がほぼ一致し、先月から今月にかけて、PV業界の悲報が続いている。
http://www.climatespectator.com.au/commentary/solyndra-shining-light-solar-policy
http://www.bloomberg.com/news/2011-08-26/q-cells-hires-houlihan-lokey-to-look-into-mid-term-financing-1-.html
http://news.livedoor.com/article/detail/5790052/
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920017&sid=a0ZMHrBxGmw4
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aK6P.hbSMknU
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381959FE2E6E2E2868DE2E6E2EBE0E2E3E39494EAE2E2E2

 米国では、Sunpower社がフランスTOTAL社の傘下に入り、Evergreen solar社が倒産、Ascent Solar社が中国企業の傘下に、BP Solar社がメリーランドの工場を閉鎖、この他、欧州、米国での減産、工場閉鎖の報道も続いている。
 2006年には、シャープを追い越し世界一位になったドイツのQ-Cellsの株価は、2007年12月81ユーロであったが、昨日(9月6日)の株価は、1/100の0.8ユーロを切った。Bloomberg.comによれば、Q-Cellsが倒産寸前であり、顧客に与えた25年保証の解決法を探している。
 現在世界一の中国Suntechの株価も2007年12月(88ドル)の約1/20になっている。
PVの不安定な市場で、トップ企業でも生き残れる保証はない。Suntechは、日本で25年保証を強調しているが、この会社の設立は2001年で、本格的に販売を始めたのが2004年である。25年保証の根拠が理解できないし、25年以上企業が存続するかどうかも不安である。

 このように極端なPV市場の浮き沈みは、国の補助政策に投機筋が入り込みメガソーラーに投資し、また他方では、多くの資金を集めて一気にPV工場を設立して補助金を最初に確保する投資家達の活動によるものである。
 太陽光発電(PV)の技術は、さほど高度な技術を必要としなく、装置メーカーからノウハウ付きの装置を購入すれば、誰でもそこそこのPVを製造できる。技術的にはリスクが低い事業である。このような事情があるから、中国企業のように何の経験もない方々でも資本を集めたらすぐ参入できる。

 今日の日経の社説に奇妙な説が掲載されていた。長期保証の問題をJPEA代表(シャープ片山社長)が問題提起をしたら、「外国製品を排除」と非難、「安価な中国製品に米国企業が負けた」と意識しながら「日本はガラパゴス化」と言う。東日本大震災による電力不足問題と関係が浅い太陽光発電を、この話題に取り上げ無理に結びつけている。(太陽光発電では、電力不足問題を解決出来ない。絶対量が乖離している。)
 この社説を書いた方は、世界的な太陽光発電(PV)の状況、特にFITとPV産業の問題を勉強していないようだ。
政府補助による製品の普及については、前のブログでも述べたように、地産地消が望ましく、米国の通商法301条の適用のように、貿易障壁が必要だと思う。(米国は、この法律の適用が遅れた。)
 日経の社説を書いた方は、皆さんの納める税金(FIT)を、他国の企業が最初に奪って行くことを理解していないか、日本人でないか、どちらかであろう。
 PV産業は、世界的に競争するのではなく、如何に持続するかを考えることの方が重要である。顧客の運用保証のためにも。

http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E6E4E2E5E6E6E2E2E5E2EBE0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D

太陽電池の競争を妨げないか 2011/9/7付日経社説 (日経はリンク先を消すので、魚拓を残します)

 10年、20年と長く使うものだから長期的な保証がほしい。そんな消費者の声にこたえる形で、太陽電池の業界団体が長期的な品質をチェックする仕組みの検討を始めた。
 消費者に安心感を与え市場を広げる試みなら歓迎だ。間違っても外国製品を排除し競争を阻害する制度にしてはならない。
 太陽光発電協会の片山幹雄代表理事(シャープ社長)は8月下旬、「太陽電池の長期使用時の耐久性をチェックする制度が必要」と話し、販売後の太陽電池の点検制度を検討していることを明らかにした。
 太陽電池は工場出荷段階では性能を検査し保証する共通の認証制度がある。しかし家庭の屋根に設置後の保証はメーカーごとまちまちだ。客観的な目安がなく消費者は選択に迷う。設置後に期待通りの発電ができないといった苦情も出ている。
 住宅用太陽電池の普及は急ピッチだ。住宅の屋根に載せた太陽電池が起こす電気のうち家庭内で使わない余剰分を電力会社に売れる制度が、 2009年11月に発足したのが引き金だ。国や自治体の補助金の効果や、東日本大震災後の電力不足もあり、今年4~6月の国内出荷量は2年前の約3倍に増えている。
 通常の家電製品と違い、太陽電池は店頭やカタログでは性能比較すら容易でない。必要な情報を提供し消費者の賢い選択を助け、信頼を裏切らないことが産業の成長に不可欠だ。長期間の発電を保証する点検制度は有用だ。ただ制度をつくるにあたり外国製品の参入を妨げるようなものにしてはならない。
 米国では太陽電池の国内市場が急拡大しているにもかかわらず、太陽電池メーカーが相次いで破綻している。安価な中国製品との競争に負けたためだ。日本でも同様の事態を心配する声がある。
 国産品の保護を狙う制度は日本だけの特殊な仕様を生みやすく、「ガラパゴス化」を招く。究極的には日本の太陽電池産業の弱体化につながるだけだ。競争が市場を育てる。
 太陽電池の世界市場は向こう20年で約4倍(約13兆円)に膨らむとの試算がある。国内で外国勢に勝てない企業は世界での優位もおぼつかないだろう。