日本以外の諸国で、再生可能エネルギーを普及させるフィードインタリフの根本的な問題が発生している。
スペイン、チェコの例を紹介したが、ドイツも同じ現象が見られることが次の報道で判明した。

Bloomberg誌
「ドイツにおける太陽光発電(PV)の導入価格が、今年13%低下、合計8GWが導入されるだろう。2012年には、PVの売電価格と従来の電力料金が同じになるだろう。」
http://www.bloomberg.com/news/2010-10-05/german-solar-panel-equipment-prices-fell-13-this-year-on-efficiency-gains.html

「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによると、ドイツの太陽光発電施設の発電能力は、9786メガワットから1万8000メガワットへ2倍近く増大する見通し。UBSによれば、太陽光による発電量はほかのエネルギー源と比べて最も急速に伸びており、昨年のリセッション(景気後退)以後から過剰となっている電力供給をさらに増大させているという。」
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/101006/mcb1010060505025-n1.htm

ドイツは、2009年までの累積量に等しい8GWを今年導入する。EPIAの全世界の導入量予測が10~15GWであるから、中間(12GW)を取れば全世界の2/3を導入することになる。
2009年中国のシェアは54%であったが、今年は2/3を超えている可能性がある。2009年における中国国内の導入が0.16GWであり、予測では2010年0.25GWに過ぎない。
PVの世界で価格破壊をもたらしたファーストソーラー(米国)は、自国での増産を抑制し、マレーシアに集中投資をし,カドミウムとテルルの材料を用いる薄膜PVを製造し、他国へ輸出している。

方谷先生に学ぶのブログ

http://www.pv-tech.org/news/_a/first_solar_to_add_4_new_production_lines_sold_out_through_2010/

マレーシア政府の優遇政策により、多くのPV関連企業が進出している。ドイツのQ-cells、米国のSunpower社(シリコンでは最高効率、最古参のメーカー)、日本のトクヤマ(ポリシリコン)など。

自国に再生可能エネルギー産業を持たない、あるいは育てるまでに、FITの制度を実施すると、スペインやチェコのように制度存続ができない状態に陥る。
また、自国の産業を守る政策・法律がないと、安価な外国製が市場を席巻する。ドイツでもこの事態が進行していて、Q-cellsに至っては、ドイツの工場を閉鎖し、マレーシアに移管することも計画している。
http://www.q-cells.com/medien/ir/ad-hoc/2010/10_02_23_preliminary_figures_2009.pdf

米国においては、グリーンニューディール政策の実施に当たって、鉄鋼労働組合が米通商代表部に中国製品の調査を請願し、10月15日、その調査を開始したと報道があった。
この問題は、9月30日に下院で可決され、まもなく上院でも可決される「元切り上げ制裁法案」と密接な関係がある。

USTR、中国の環境技術製品調査 不当補助金の疑い 2010/10/16 1:26 日経
【ワシントン=御調昌邦】米通商代表部(USTR)は15日、中国の風力・太陽光発電などの「グリーン技術」製品に対して、米通商法301条(不公正貿易慣行国の特定・制裁)に基づく調査を始めたと発表した。同条の調査はオバマ政権では初めて。中国が関連製品の供給を国際的に独占するため、不当な補助金や外国企業の締め出しなどを実施しているとの疑いを調査する。
全米鉄鋼労働組合(USW)の訴えを受けたもので、USTRのカーク代表は声明で「この分野は米国にとって極めて重要であり、精力的に調査する」と指摘した。蓄電池や次世代自動車なども対象となるもよう。調査と並行して中国政府とも協議するが、解決しない場合は世界貿易機関(WTO)への提訴も選択肢となるという。

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE3E7E2E4EA8DE3E7E3E2E0E2E3E29494E3E2E2E2;at=ALL
詳細は、Bloomberg誌
http://www.bloomberg.com/news/2010-10-15/china-aid-to-clean-energy-industry-brings-u-s-probe-after-union-complaint.html

米国は、環境政策に関する輸入品の問題について、理解していると言える。

コスト高の再生可能エネルギー源の普及を促すため、発電した電力を高額で買い取り、消費者料金に上乗せして初期投資を回収、その投資でエネルギー源の製造業を育成しコスト低減を誘導することがフィードインタリフの考え方である。(日本では、2011年4月より上乗せが始まる。)
ここで、問題なのは、エネルギー源に投資した方々は将来利益を得ることになるが、投資出来ない方々は、上乗せ料金を数十年にわたり負担させられる。
また、エネルギー源の製造業が外国であると、その初期投資分が最初に流出、国内の産業と雇用が守れなくなる。

日本では、臨時国会に再び「温暖化対策基本法案」を提出すると閣議決定をした。今春このブログで、法案の問題について指摘をしたが、国民皆さんから集めた電気料金を外国に貢ぐことの無い制度も制定すべきだろう。
また、諸外国には、地産地消を説得すべきである。

フィードインタリフ(FIT)については、結末が見えて来たので、このテーマを今回で終了する。

「追加」 10月19日

Bloomberg誌にスペインの悲劇が掲載された。(かなりの長文)
「スペイン レリダのJaume氏は、5エーカー(2ヘクタール)の西洋梨の畑をつぶし、40万ユーロ(約6千万円)をかけて、80kWの太陽電池を設置した。アパートを抵当に入れて銀行より借りた。
2008年9月のFIT補助率変更、2010年6月の40%削減により、ローン返済が困難を極めている。毎年、1エーカー当たり10トンの西洋梨の生産を犠牲にした。
農作物を犠牲にしてまで推進した欧州環境派のばかげた政策の結末である。

http://www.bloomberg.com/news/2010-10-18/spanish-solar-projects-on-brink-of-bankruptcy-as-subsidy-policies-founder.html

日本語
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=akJlKaeGKh9o