(2011年5月6日 読売新聞)
 鳩山氏は5日には中国の習近平国家副主席と北京の釣魚台国賓館で会談し、東京電力福島第一原子力発電所の事故について、「空と海が毎日汚染されてしまっていることを申し訳なく思う」と陳謝。習氏は「一刻も早くこの問題を解決していただきたい」と語った。

 小沢元代表は、東京電力福島第一原子力発電所事故への菅政権の対応に関し、千葉県いすみ市内で記者団に「週明けから国会で審議が始まる。『政府の対応がこのままではいけない』といろいろな機会に今まで以上に声を大きくしていきたい」と語った。野党が内閣不信任決議案を提出した場合の対応については「今そんなことを考えているわけではない」と述べるにとどめた。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡る菅政権の対応は「後手に回った」として世論の評価が低く、民主党内の「菅降ろし」にもつながっている。首相に近い閣僚の一人は6日夜、「今回の決断で国民の支持が戻れば、党内も落ち着くのではないか」と語り、倒閣に動いてきた小沢一郎元代表グループも首相を批判しにくくなるとの見方を示した。

 管首相が中部電力に浜岡原発の停止を要請したが、法的には拘束力がない。中部電力にとってみれば、今回の東電の福島原発事故のように巨額の補償を行わなければならない恐怖もあるが、直面する問題としては需要家との契約がある。
 中部電力地域は、トヨタを始め主なる日本の製造業が操業を行っているところである。契約の電力が供給されなければ、生産を落とすか他の地域に移さざるを得ない。需要家から損害賠償を求められる可能性も有る。中部電力は、昨年12月9日に変電設備の不具合で0.07秒の瞬停の事故を起こしている。最も被害を受けたのは東芝の四日市工場で、完全復旧まで2ヶ月かかり数百億円の損失を受けた。東芝は中部電力に求償していると考えられるが当事者同士のことなので表には出てこない。
 さらには、原発を停止させることによる損失が増加し、株主から責任を問われる。
 法律がなければ、優先すべきは、「契約」「株主の利益」であろう。本日の中部電力の取締役会で結論が出なかったのは、このような私企業としての優先事項が問題になったのだと思う。

 原発3基が停止すると360万kWの減少になり、中部電力の発電能力の1割に相当する。予想される需要・供給は、余裕がない。まして、周波数変換所を通して東電に120万kWも送れない。
 頼りは、関西電力からの融通である。関西電力から融通できるのは、送電線の最大能力が577万kWであり、浜岡原発のバックアップはできそうだ。
 しかし、浜岡だけではなく、関電の福井原発まで止めろ、中国電力、九州電力の原発まで止めろと言う話になれば、送電能力が無くなる。

 60Hz地域の電力連系系統は概略次のようになっているが、それぞれの電力会社の能力に限界があるので連系系統の最大能力まで送電できない。(2004年のデータ;RIETI 05-J-033 戒能一成著 日本の地域間連系系統送電網の経済的分析より)

中部電力<->関西電力  557万kW
中部電力 ← 北陸電力  30万kW
関西電力<->北陸電力  557万kW
関西電力<->中国電力  833万kW+833万kW(電源開発)
関西電力 ← 四国   直流140万kW(電源開発)
中国電力<->四国    240万kW(電源開発)
中国電力<->九州電力  557万kW

方谷先生に学ぶのブログ

 北陸電力は、発電能力が極めて小さいので、関西電力、中国電力、九州電力、四国からの玉突き融通をしたとしても、関電と中部電力間の送電線557万kWが限界である。
後は、中部電力内での遊休設備の稼働や、揚水発電所の稼働を高める方法があるが、これから準備して間に合うかどうか。

管首相は、企業活動および経済活動への影響と、この要請が世界に与える影響をよくよく考え、発表する時期も配慮したのであろうか。米国やフランスやその他の諸国が多くの福島の支援をした意味を理解していないのではないか。

「恐怖に駆られ、十分考えもせず、相談することもなく、発表してしまった。」
「鳩山、小沢の包囲網に対し、先制攻撃をし延命を図った。」と思われても致し方ない。
知の器が小さい小心者の行動がよく理解出来る事例である。