長いこと人物を撮影してるけど男女問わずやはり色気が漂う写真は美しいね。艶っていうかね、そんなものを写し出すことをあれこれやってきたんだよね。最近、ニューハーフとかおなべみたいにわかりやすくないカテゴリーの人達がいてちょっと戸惑う時があって、そんな時は先入観を消して感じるままに撮る事にしてるよ。
前回の結果なんだけど、あくまで結果であってどうなろうと「詳細も聞かずに現場にきてありえない状況で逃げることもできないバカ」って資質が必要ということはスタート前に学べたからね。だからオレのみぞ知る事実を記録するよ。この時のことは同行したAD K氏が有名なライターでもあったので、たしか「狂気の夜」だったと思うけど自分の連載サイトに書いていて他から見た描写と真実のギャップって意味ですごく面白いよ。最後の5試合のすでに3試合目が始まったころAD氏やスタッフの視線はピークの圧力を放っていて、とうとう我慢できなくなったAD氏が「いつ撮るんだっ!終わっちゃうだろっ!」って怒鳴ったのも当然なんだけど、そこは政府と軍と興行を仕切ってる方々の権利が交錯してる緊張感マックスの空間で異例な事をしようとしているヤカラは最重要な監視の対象なわけで「こわっ!動きたくありません」のみのカタマリになってるからね。とうとう最後のメインイベントになってチャンピオンが登場したときリング下で祈りを捧げてる彼を撮影してスタートしちゃったのよ。祈るチャンピオンの震える肩と祈りを終えて上げた目におびえたようなものを写した瞬間彼が少し微笑んだ気がしたのを覚えてるけど、試合は相当早めにチャンピオンの勝利でリングを降りてくる彼を撮ろうとした時は既に許可された2分間はとっくに過ぎていて3人くらいの大きなやつに引っぱりまくられて服がのびのび状態だったのよ。これ以上はって時に階段を降りかけたチャンピオンがオレに向かって笑いながらファイティングポーズして周りの男達に目で合図してなんか言ったのよ。通訳が「ついてこいって言ってるよ!」て叫びながら近づいてきたんで花道をついて控え室に入って興奮しながらまくしたてられたけどさっぱりわからなかったけどきっと「オレは強いだろ」とかかなって聞いてたら突然控え室から連れ出されて「オレの今日のフィニッシュブロー」を撮れよって急に右のハイキックを1回見せてくれて戻っていった。「撮れよ」がわかってただ1度のハイキックがなぜ撮れたのかはわからないんだけどね。
初めてのタイロケの話なんだけど、本番の2ヶ月くらい前にロケハンで1週間行って本番で撮れないものを1部だけ先行で撮った時のこと。同行の東京から来たAD K氏と他数人プラス通訳兼ボディーガードでムエタイの賭け試合を撮影に行ったのね。10mくらいの金網に守られたリングで何試合もやっててさ当日予定の最後の5試合中の2分間が許可された撮影時間だということとガチだから1R10秒で終わるかもしれないこと、いつ撮るかの判断はまかせるっていうなんとも易しい条件と今日の稼ぎをつぎ込む客達の異様なトランス状態の中できっと1番クールだったに違いないね。だってさ「リング上のドラマティックな瞬間」とアポなしの「チャンピオンのいい感じの」2カットなんて「無理だろうよ」って口に出さないだけで全員が確信してただろうし、責任の所在も成否に関わらずはっきりしてたもんね。こんな時こそプロって孤独だなーなんて感傷にふけってる暇無く、プロを続ける資質がわかったりするよね「少しだけいい感じのバカ」ってこと。