(本)「世界のクロサワ」をプロデュースした男 本木荘二郎 | STUDIO F+

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鈴木義昭著 「世界のクロサワ」をプロデュースした男

本木荘二郎という本を読みました。

 

ルポライターの鈴木義昭氏の手によるこの著作は、

日本映画界の巨匠、黒澤明を支えていた

プロデューサー、本木荘二郎の生涯にスポットを当てた本である。

 

現在、黒澤明に関連する書籍は多く存在するが、

プロデューサー、本木荘二郎に関する本は珍しい。

 

本木荘二郎という名前を聞いて、真っ先に頭に浮かぶ

黒澤映画は何だろうか?

 

私がこの漢字名をパッと見て、思い出したのは、

あの名作「七人の侍」だった。

 

本を読んで思い出したのは、あのベネチアで金獅子賞を

受賞した「羅生門」である。

 

「酔いどれ天使」「羅生門」「生きる」「七人の侍」などなど

本木荘二郎がプロデューサーとして活躍した黒澤映画は

どれも名作ばかりなのである。

 

もちろん、黒澤映画とはいえ、お客が入らない

興行収入的に失敗した作品群もある。

儲からなかったから駄作であるとは、

決して限らないが。

 

果たして、その本木荘二郎の晩年はどうだったか?

 

本木荘二郎の晩年は、実に寂しいものだったと

この本では描かれている。

 

本木は東宝の花形映画プロデューサーから、

なんと晩年は、ピンク映画の監督・プロデューサーに

なっていたというから驚きである。

 

しかも、亡くなった時は新宿のオンボロアパートで

孤独死だったという。

 

ピンク映画で本木の世話になった役者が、

本木の葬儀を手伝ったというエピソードは、

映画人のたどる人生の悲哀を感じてしまう。

 

私が思うに、古今東西、昔も今も、世界の映画人で

大成功をおさめた人の最後は、両極端である。

 

後世に名プロデューサー、名監督としての名誉を

保ったままこの世を去るか、全財産を失って

寂しい末路でこの世を去るかのいずれかである。

 

本木荘二郎の場合は、残念ながら後者の方だった。

 

 

この本は本木荘二郎の華やかなプロデューサー時代と、

転落した人生の両方を描いており、読み応えがあった。

 

黒澤明を「世界のクロサワ」にしたプロデューサーだったにも

関わらず、本木荘二郎は黒澤から絶縁されている。

その理由は何であったか?

 

詳しくはブログでは描かないが、本木荘二郎が自らの

人生を狂わせたもの、それは「お金」であった。

 

株に手を出し莫大な借金を抱え、東宝プロデューサーの

職を失い、黒澤の信用も失ってしまうのである。

 

読後、思わずため息が出てしまった。

何という波乱万丈な人生か。

 

今となっては黒澤明を知る数少ない人物となった、

野上氏の手紙には、黒澤明は決して本木を悪く

言わなかったそうだ。

 

本木のオンボロアパートの押入れの奥から、

あの「羅生門」で受賞した金獅子賞の

トロフィーのレプリカが出てきたそうだ。

 

当時も、今も、日本映画界に燦然と輝く、

映画「羅生門」。

 

プロデューサー、本木荘二郎の生涯を読み解く

書籍として、この本は貴重なのかもしれない。

 

黒澤映画ファンはぜひ、読んでおくべき本である。

 

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