菊池寛と言えば、戦前戦後にわたり、あの文藝春秋社を設立した文豪。
芥川龍之介と親交が深く、芥川が亡くなった時は号泣しながら弔辞を読み上げたとか。
そのせいもあってか、現在も文筆家の登竜門になっている「芥川賞」や「直木賞」を創設し、大いに文芸界に功績を残した人物だったりします。
その菊池寛の孫にあたる方が書いたのがこの本で、大映の永田雅一と菊池寛の交流をベースに描かれている内容となっていました。
永田雅一と言えば、過去には京都のヤクザ「千本組」に属していた事があったり、軍部の戦時中の映画業界再編成に巧みな工作をして大映を設立させた
立役者だったりと、何かと話題の多かった人物。
あの黒澤明監督の「羅生門」がヴェネチア映画祭で金熊賞をとった時も、永田雅一の大映時代のエピソードの一つになっています。
文芸界の大物菊池寛と、映画界の大物永田雅一の交流がどのようなものであり、いかにして菊池寛が大映の社長になったかなど、興味深いエピソードが散りばめてあるのがこの本でした。
どういった経緯で永田雅一は大映の社長に菊池寛を推挙し、社長になってもらったかという部分については、永田氏は以前から菊池寛をかなり尊敬いて、菊池寛の人物に惚れ込んでいたというくだりがありました。
話は変わりますが、私の好きな漫画家、長谷川町子の「サザエさん打ち明け話」にも菊池寛が登場するくだりがありました。
長谷川町子の妹が、菊池寛との面談を受け、大学を中退して文藝春秋社に入社する話です。
この中でも菊池寛という人物はかなり変わった人だったらしく、「帯を引きずりながら現れたり」「腕時計を二つもしてたり」などなど書かれていたのを覚えています。
個人的には、菊池寛が書いた小説「恩讐の彼方に」が好きで、この小説の舞台となっているのは、故郷大分の耶馬溪という場所なんです。
さて、話を戻すと、日本の映画界に君臨していた大映の歴史や、永田雅一、菊池寛のひととなりをうかがい知る本としては、なかなか面白い本だと思いました。
私が日芸大学院時代に書いた論文が、日本映画興行界の歴史とデジタルシネマについてだったこので、永田氏についても少しだけふれています。
日本映画史に興味がある人向けの本ですが、菊池寛、永田雅一という人物を別の角度でうかがい知るにはいいのかもしれません。
