ヴォーグに中村祥子さんの記事が素敵な写真と共に掲載されてます❤
http://www.vogue.co.jp/lifestyle/interview/2016-02-09/page/5#moveto
『VOGUE JAPAN』3月号「人はなぜ、踊るのか」では、国内外で活躍中の注目ダンサーや舞踊集団にクローズアップ。彼らの“踊り”にかける熱い想いをもっと読みたい! そんな声にお応えすべく、本誌では書ききれなかったインタビューの一部をwebで特別に公開。話題のAyabambi、Noism、中村祥子さんの素顔に迫る。
女性として、母として、輝き続けるバレリーナ。
16歳でローザンヌ国際バレエコンクールにてダブル受賞。以来10年以上の月日の間ヨーロッパのカンパニーで踊り続けてきた中村祥子が昨年から活動の拠点を日本に移した。常に主役を踊る重責を担うプリンシパルのもうひとつの顔は、一児の母。包容力のある夫、やんちゃな育ち盛りの息子、そうした家族を持ったことで中村祥子の表現力にはますます磨きがかかっている。出産を経てなお輝き続ける国際的ダンサーが注目を集めている今、中村祥子はその代表的なひとりでもある。
―これまで踊ってきて、特に印象に残っている作品、好きな作品、は何ですか?
以前は、『白鳥の湖』などに代表されるクラシック・バレエの王道作品が好きだったんですけれど、キャリアを重ねるごとにドラマティックなストーリーのある作品が好きになってきました。はじめて踊ったドラマティック・バレエは『ロミオとジュリエット』でしたが、当時の私は若すぎてまだ恋愛の経験もなく、ジュリエットになりきれなかった。けれども最近、ベルリンで踊ったときには自然に気持ちが入って、ラストシーンでは本当に涙を流していました。翌日、瞼が腫れて大変だった程です。
―『マノン』や『オネーギン』のような大人の女性の役、そして昨年はKバレエカンパニーで『カルメン』を踊りましたね。
『マノン』は一度踊ると虜になるよ、と言われていましたがその通りでしたね。ひとりの女性の人生にある欲望、恋愛、お金、病気すべてをつないで表現していく。濃い作品でした。キスシーンのリハーサルでは、指導者から「もっと激しく口づけしろ!」なんて注意されたり。『オネーギン』のタチアーナは女性としてとても魅力のある、引き込まれる役でした。苦悩のラストシーンでは感極まって自分の首に爪を立ててしまい、流血してしまったほどです(笑)。『カルメン』は楽しかったですね。カルメン、というキャラクターに自分を当てはめるのではなく、自分のままでカルメンの人生を生き、表現できました。
―祥子さんの恋愛観が踊りにでているのでしょうか。
いえ、むしろ、バレエ作品を通して恋愛を体験してきたと言えるかもしれません(笑)
―バレリーナは恋多き人生ですね!
その通りです! 家族があるから、仕事にも楽しく集中できる。
―現実生活でのパートナー、ご主人のヴィスラフ・デュディックさんは祥子さんが拠点を日本に移すことに抵抗は示さなかったのですか?
ないです。東京はすばらしい街だ、って言って毎日自転車で街を走り回っていますよ。和食が大好きなので、早速自分のレパートリーに取り入れています。
―ヴィスラフさんは料理も家事も得意と聞きましたが。
私が苦手な分(笑)、とても助かっています。息子の面倒もよく見てくれるし、出産後、なかなか身体がもとに戻らず落ち込んでいた時なども“祥子はまずはバレリーナである自分を取り戻すことに集中すればいい”と言ってサポートしてくれた。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。家族は何よりの私の支えです。
―とはいえ、子育てとの両立は、疲れませんか?
大変なことはたくさんあります。夫が協力的だからと言って、お母さんであることには変わりありませんから。息子はまだ小さいので、具合が悪くなったりすることはしょっちゅう。リハーサルのさ中、高熱を出した息子を一晩中抱きしめて見守っていたこともあります。でも不思議、体は確かにつらいですが、そうしたからといって踊りに集中できないということはありません。反対に、本番を終えてへとへとになって帰宅したとき、息子の元気な笑顔に迎えられるとすべての疲れが吹っ飛んでしまうくらいです。
―家庭や子供を持つ以前の自分と、今の自分は違いますか?
はい。わかりやすく言うと、自然になりました。自然の自分のままで表現ができる。今まではバレリーナとして踊ることで自分の居場所を作っているようなところがありましたが、子供や家族という大切な存在ができたことで、バレエだけにしがみつかなくても生きていけるようになった。バレエも家族も、私にとってかけがえのない大切なものです。家族に対する愛情が、私を自由にしてくれているような気がしています。
―ところで日本に活動の拠点を移そうと思ったのはなぜですか?
体力的にも精神的にも円熟期を迎えつつある今、故郷の日本のお客様の前でたくさん踊りたい、と思ったからです。年齢とともに体力が衰えるのは自然なことですが、反対に身体の感覚や表現力、もっと大切なところでは作品や役柄への読解力などは経験を重ねることで充実してきます。30代半ばに差し掛かる今は、体と精神性の交わりが高い位置で結ばれる絶妙なタイミングだと思っています。ヨーロッパで吸収してきたことを、母国である日本の皆さんに伝えたい。そして、次世代のダンサーたちへとつないでいきたいと思っています。
―海外のバレエ団の公演にゲスト出演する予定もあると聞いていますが。
2016年前半はベルリンで『オネーギン』『白鳥の湖』『ジュエルズ』などのを踊る予定になっています。拠点は日本のKバレエカンパニーですが、海外からの出演依頼にも積極的に応えていこうと思っています。

