心理学者のエリクソンは、自分が常に同一の自分であるという、自分についての一貫した自覚を持つことをアイデンティティー(自我同一性)と呼んでいる。
「自分とは何者か」と言う問いに答え、「自分とはこのような人間なのだ」と言う自己のアイデンティティーを確立することが、人生の大きな課題である。
しかし、ときには自分がわからなくなり、毎日が空虚に感じられ生きることへの不安や無力感に悩むこともある。
今まで確かだと思っていた人生の足元が崩れ、自信を喪失することもある。
エリクソンは、そのような自我の危機的な状況をアイデンティティーの危機と呼んでいる。
人間は、ただ何となく毎日を過ごしているだけでは、自分の存在感が薄れ、自我意識が解体する危機に陥る可能性がある。
このような危機を乗り切るためには、
第一に自分は何を目指して生きているのかと言う将来の目標や生きる意味を見つけることが大切である。
自分が向かう目的を見つけ将来への方向性を見定めて、時間の中で一貫した姿勢で生きるのである。
第二には社会集団に所属し他者と共有できる現実の中に自己の居場所を確保することである。
他者との関係の中で一定の役割や使命を果たし、他者から必要とされ仲間の一員として承認されることによって、自己の存在を実感することができる。
他者と結ばれた絆に生きることでしっかりとした人生の現実感を得ることができる。
このように今を位置づけてくれる目標や使命と、他者と共有できるリアリティーの中で、自己のアイデンティティは確立されていく。
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アイデンティティとライフサイクル
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