浮世床の方言談義 | studio7の映像実験室

浮世床の方言談義

 「浮世床」と「雪男」の発音が似ている、と言ったのは学生時代の漫画サークルの友人だった。

 と、言う話はさておき。

 さすがに式亭三馬の時代と違って床屋さんに若い衆(わかいしゅ)が集まって世間話をするようなことは無いだろうが、理容師さんと客とのコミュニケーションには世間話が欠かせない…と思う。

 私が困るのは、いや、実際に困るのは理容師さんの方なのだが、私には「スポーツネタ」「芸能(&テレビ)ネタ」「政治ネタ」という、世間話三大ネタが通じないこと。
 自慢じゃないが、世情に思いっきり疎いのだ。

 申し訳ないので、逆にこちらから世間話のネタを振ってあげることにしている。


 今日はいつも担当してくれている人がお休みで、初めて付いてくれる理容師さん。
 いつもの担当なら既にお互いの「手持ちネタ」はわかっているが、初めての人だと気を遣う。


 どういう流れだったか、その理容師さんが秋田出身だということが判明した。
 
 秋田の言葉は、「ピ」の発音が「ピ」と「シ」を同時に発音したような感じになる。また、「キ」も「キ」と「シ」を同時に発音したような音。
 
 これのネタをその理容師さんにかましてみたのである。

 「え…? 「ピ」…「キ」…ホントだ、それって秋田っぽいですよ!」

 理容師さんの出身エリアではこうした発音の傾向は無かったようだが、食いついてきた。

 さらに、『秋田音頭』で歌われる「ハタハタ」も「ハダハダ」って発音ですよね、と言うと…
 「え~~~~っ?! どうしてあんな歌まで知ってるんですかぁ? 秋田の名産をただ並べただけの歌ですよ、あれ!」

 いや、『秋田音頭』はけっこう全国的に有名だと思うんだが、地元の人にとっては意外だったらしい。
 しかもラップでしょアレは、と指摘した。
 「そうですそうです。僕も秋田が誇るラップだと思ってます」


 そのうちに、何故か全国各地のことばについて話が広がった。

 近畿エリアのことばに話が及んだとき、イキナリ店長が口を挟んできた。

 「和歌山出身の僕から言わせてもらうと…」

 店長によれば、和歌山・奈良・徳島は、“近いことば”だという。
 試しに、学習中(笑)の阿波弁を披露してみると「うんうん、そんな感じ。近いですよ、やっぱり」。
 また、近畿圏では北に行くほど「上品な感じ」という印象だそうな。


 方言ネタ、強いなあ。
 店長まで巻き込んで、ホントに「浮世床」なノリに持って行くパワーを持っている。


 その一方で、「東京のことばの特徴は?」と訪ねられて困ってしまった。
 乱暴に言うとね、歴史的に(現在もなお)あっちこっちの地域(&文化)のことばがごちゃ混ぜになり平準化されちゃったのが東京のことばなんだからさあ。って、思いっきりわざとらしい東京方言だが。

 とりあえず、ウチの父方の祖母(東京・葛飾出身)は、「ヒ」の発音が出来ず「シ」になる。江戸弁の名残り。
 もっとも、神奈川・茅ヶ崎出身の母方の祖父も「おい、デッパートっていうのは、シャッカテン(百貨店)のことかい」と、江戸弁に近い喋りだったっけ。

 なお、学術的にはどうか知らないが、私は東京方言はほとんど絶滅したと感じている。