Photoshopでミニチュアを作る | studio7の映像実験室

Photoshopでミニチュアを作る

 昨年、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催された『だまし絵展』。
 その中に、写真家・本城直季さんの『small planet』というシリーズから何点か出展されていた。
 
 いや~、やっぱり凄い。
 メディアに紹介されている作品は何度か目にしたことがあったが、現物を観たのは『だまし絵展』が初めてだった。

 街の写真がミニチュアのセットのように見える…というよりミニチュアにしか見えない。
 が、よくよく観察するとそれが正真正銘の実在する街の風景を写した写真であることがわかる。
 私が知る限り、少なくとも2005年の愛知万博の頃には活躍していた方なので、どこかで作品をご覧になった方も多いのではないか。
 未見の方は「本城直季」「small Planet」で検索をかけるといくつかの画像がひっかかるので是非。

 そもそも「街」というものが作り物であって、この作品群は…などといった芸術的な視点はさておく。単純に観てるだけで面白い作品なのだ。

 
 …真似したい。
 どうも真似とかパロディばっかりでいかんなオレは、と思いつつ、やっぱり真似したい。
 などと思っているうちに、「ミニチュアっぽく見せる機能を持ったデジカメ」が登場してしまった。やっぱりみんな真似したいんだろうなあ。このデジカメもかなり気にはなるが、Photoshopを使った加工で何とかならないものか。


 本城さんご自身は、4×5(しのご)の大判カメラを使って「遠近法によるゆがみを補正する機能を応用して撮影」なさっていると展覧会の図録に書いてある。

 どういう補正かというと…

 ちょいとPhotoshopを使って極端にやってみよう。

studio7の映像実験室-ビル補正無し
▲これが普通に撮った写真。ビルの中心のラインはほぼ垂直だが、遠近法で中心から離れるほど角度がつく。

studio7の映像実験室-ビル極端な補正
▲前の写真に補正(ってか変形)をかけたのがこれ。縦のラインを全て垂直にした。

 漫画で高い建物を描く時に、普通なら2点透視で描くところを3点透視を使って迫力ある遠近感を出すことがあるが、その逆をやっているわけである。…わかりづらい説明だな。

 つまるところ、この補正をやると「遠近感が抑えられる」ことになるのだ。ナルホド、これでミニチュアっぽく見える第一関門はクリア。

 しかし、上記の補正写真を観てもミニチュアには見えない。
 で、改めて本城作品を眺めると、おしなべて俯瞰で撮影されていることがわかる(ずいぶんと空撮もなさっているらしい)。
 そこらへんの理屈は全く理解していないのだが、とにかく上から見下ろした構図の写真が「ミニチュア化」に適しているようだ。

 Wikipediaによれば、この補正だけではなく「擬似的に被写界深度の浅い写真を撮」っている、とある。
 えっと、被写界深度が浅いっていうのは、確か「ピントが合う領域が狭い」ってことだよな(今、調べた)。
 本城作品は確かに上下がボケている。もしかすると、もっと厳密にボカす部分とピントが合った部分を分けているのかもしれないが、ちょっと見には上下のボケしかわからない…。

 さらに、どうもコントラストが強くなり、色も鮮やかになっているのではないかと思われる。
 その方が何となくミニチュアっぽいよな、と納得。

 そういうことか。
 漫画家が迫力を出すために遠近法を強調するのと反対のことをやっているのと同時に、特撮美術の人たちがミニチュアをリアルに見せるためにエイジングやウェザリングを施したりとか強制遠近法を使うなどして色々工夫しているのとも反対のことをやっているわけだ、多分。


 では、自分でも作ってみましょう。

 数年前に徳島を訪れた時、ホテルの窓から徳島駅の電車区(?)を見下ろして撮った写真がある。こいつを素材に使おう。

studio7の映像実験室-徳島駅ノーマル
▲これがオリジナル。

studio7の映像実験室-徳島駅あおり補正
▲軽く遠近法の補正をした。

studio7の映像実験室-徳島駅コントラスト補正
▲コントラストと彩度を強くした。


studio7の映像実験室-徳島駅ミニチュア?
▲上下をぼかして完成。何となくミニチュアっぽく見えるだろうか?


 調子に乗ってもう一つ。

studio7の映像実験室-道路ノーマル
▲ウチのマンションの高層階から見下ろした写真

studio7の映像実験室-道路ミニチュア化?
▲まあまあ、言われてみればミニチュアのように見えなくはない。

 「ミニチュアっぽくなったか」というあたりは自信が無いのだが、こういう加工でずいぶんとイメージが変わってくることは間違い無いだろう。


 実は、この一連の実験は「動画への応用」のために静止画でまずやってみたもの。

 現在編集に追われている映像で「やや俯瞰気味」のカットがあるので、それに使えないかと考えたのである。
 結論から言うと、ビルの2階から撮影したもので「見下ろす」ほど角度がキツくないこともあってそんなに目立つ効果は出なかった。まあ、何となく他と違う感じだな、と気づいてもらえればラッキーといったところだが、そもそも奇をてらったエフェクトやら強烈なインパクトが求められる映像では無いので(ましてや特撮作品ではない)、隠し味としては使えるだろうと思う。
 
 
 それにしても、映像制作というのは極端な話「何にも知らなくても出来ちゃう」という部分が無きにしも非ずである。
 実際、これまでの作品は何も知らずに作ってきた。

 しかし、カメラやレンズの知識や様々な技術を知っていればそれだけ引き出しが増えるわけだし、色々勉強したり実験してみることは財産になるのではないか。

 だから映像は面白い。
 「写真(的な)技術」、「時間軸」、「音楽」、「生理的な編集リズム」、「デザイン」、「個性」…色々な要素が総合的・有機的に結合したものが映像作品なんだと思う。

 一度ハマると、抜けられませんな。