展覧会見聞記 その3 だまし絵に挑戦 | studio7の映像実験室

展覧会見聞記 その3 だまし絵に挑戦

  『奇想の王国 だまし絵展』で私を仰天させてくれたパトリック・ヒューズの『水の都』という作品。
 怪しいくらいにあっちこっちから眺めまわしました。その時点で「自分でも作ってみたい」という想いが湧いていたからです。

 もう一度、図録の写真をご覧ください。

studio7の映像実験室-図録より『水の都』

 水の中に並び立つ建物です。

 現物を見ると、本当に不思議な“現象”が目に飛び込んできます。
 パトリック・ヒューズはこの技法を『リヴァースペクティブ reverspective』と呼んでいるようです。これ以外にも様々なテーマでこのシリーズを作っているとのこと。
 展覧会の物販コーナーでレプリカ(?)が販売されていましたが、240,000円…。

 作品を観た瞬間から実験する気満々でしたので、買いません(…買えません…)。

 とにかく実験結果を早く見たいので、極めて単純な絵にしました。
 単に、水上にレンガ(段違いに重ねることすらしませんでした)みたいな物で作られた四角い物体を配置しただけです。

 もう一度言います。
 「水上にレンガみたいな物で作られた四角い物体」。
 とにかく、そういう先入観で動画をご覧ください。…工作も絵も稚拙なので、そう思って観ていただかないと効果が出ませんので(笑)

 また、例によって横長のハイビジョンで撮影したんですが、左右が詰まって縦長になってしまっています。





 …どうでしょう?
 「妙な遠近感」を感じていただけますでしょうか?
 感じていただけなかった場合は、もう一度上記の先入観をしっかり叩き込んでご覧になって下さい。


 『リヴァースペクティブ reverspective』というのは、リヴァース(reverse)=反転と、パースペクティブ(perspective)=遠近法という言葉を合わせた造語です。


 以下、実験プロセス…というか、単なる工作プロセスです。

 まず、設計図兼下書きをAdobe Illustratorで作りました。

studio7の映像実験室-下書き

 恐らく、パトリック・ヒューズは緻密な計算と試行錯誤で、最も効果的な角度や大きさを作っているのでしょう。
 私は経験がありませんし、理論的なこともわかりませんから適当にやりました。

 この図を、Adobe Photoshopに読み込んで着色します。

studio7の映像実験室-着色

 これをA4サイズでプリントアウトして、輪郭で切り出し、テープで貼り合わせます。

studio7の映像実験室-裏側

 裏側です。

 まず、完成品を真正面から見ると…。

 studio7の映像実験室-真正面

 …図録の絵とよく似た構図のものが出来上がりました。
 一見、平面に見えますが、裏側の写真でおわかりのとおり立体作品です。

 形状がわかる角度で完成品を見ると…。

studio7の映像実験室-完成品

 …こんなです。

 つまり、一番手前に見える部分(この場合、四角い物体の突き出した角)は一番奥に描かれ、一番遠くに見える部分(この場合、物体と物体の間の水平線の部分)が一番手前に描かれているんです。

 私の工作だと、両眼で見ると錯覚を起こしてくれません。片方の目をつぶって見ると何とか…。
 大きさのせいなのか、凹凸の角度のせいなのか、工作がテキトーなせいなのかはわかりません。


 凹凸を逆にした錯視のトリック・アートというのがあるのは知っていました。
 確か、ディズニーランドのホーンテッドマンションにも凹凸が逆(人の顔を型取りしたときの雌型みたいなヤツ)の彫刻を使ったトリックがあったように記憶しています…ずいぶん行ってないので定かではありませんが。それだけでも不思議な錯覚を起こすんですが、パトリック・ヒューズさんはこれに遠近法を組み合わせることで一層不思議な錯覚を見せてくれました。


 稚拙な絵と工作による私の実験作品では、本家が持つ不思議さは十分に伝えられません。

 是非、実物を見に行ってください

 
 『奇想の王国 だまし絵展』、渋谷では8月16日までで、8月26日~11月3日は兵庫県立美術館で開催されます。
 この『水の都』という作品そのものは、パトリック・ヒューズ自身が所蔵しているそうですので、イギリスに立ち寄った時には是非(笑)。

 この展覧会で唯一残念だったと感じるのは、今年亡くなった福田繁雄さんの作品が1点しか無かったこと…。正直言って「福田繁雄さんには、もっともっと凄い作品が沢山あるのに…」と思ってしまいました。


 前の記事で「心地よく騙される」のが楽しいと書きました。
 手品にしてもだまし絵にしても、優れた作品を見ると(騙されたにもかかわらず)笑いがこみ上げてきます。
 優れていない作品だと、いかにトリックや技術が凄くても「ただ不思議なだけ」…場合によっては不気味だったり後味が悪かったりします。
 その分かれ目の一つに、演人や作者自身に遊び心があるかどうかということがあるように思います。

 「この不思議さを一緒に楽しみたい」

 そういう雰囲気を感じさせてくれる作品が大好きです。