漫画の描き方 その6 | studio7の映像実験室

漫画の描き方 その6

 『how to draw Manga』を見る限り、著者である17歳の少女・Katyは主に製図ペンと色鉛筆を使っているようです。
 しかし、彼女は自分だけの方法を押し付けることはありません。最終章で様々な画材について教えてくれています。


 「漫画を描くための画材ってホントに沢山の種類があるわね。その中には無くてはならないものもあるし、あなたにとっては必要が無いものもあると思うの。(訳せないので中略)質の良い画材で、素敵なスタートを切りましょう!」
 弘法筆を選ばずというのは確かに真理ですが、Katyの言うとおり可能な範囲で良い道具を揃えられれば言うことはありません。


 「シャープペンと鉛筆の両方を揃えるといいわよ。シャープペンはいちいち削らなくてもいいしね」
 意外と無精なKatyですが、私も大きなイラストを描く時以外はシャープペンを使っています。
 「鉛筆で、柔らかいものは濃淡を自在に表現できるけど、注意しないと(擦れて)ぼやけちゃったり汚れちゃうからね」と、非常にまともな説明をしてくれています。まとも過ぎてつまらな…いえ、独り言です。

 鉛筆、紙、ペン、絵の具…と様々な画材が紹介されています。

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 白黒で漫画を描く際に中間調を出すためにしばしば使われる「スクリーントーン」については全く触れられていません。
 僭越ながら、私が簡単にご説明させていただきます。

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 写真は、私が持っているスクリーントーンです。透明な亜粘着性シートにアミ点などの柄が印刷されています。この「61番」というのは10%のアミ点で定番中の定番でした(過去形…現在はラインナップが変わっているらしいです)。

 これをカッターで切って絵の必要な部分に貼ります。貼りが甘いと浮いてしまい、印刷でもバレバレになるので丁寧に圧着します。“トーンを圧着するためだけに存在する道具”も売られていますが、私はガラス瓶の底などを使うことが多いです。

 また、表面に印刷されている柄を削ったり重ね貼りするなどして効果を付けることもあります。

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 削り方が思いっきり汚いですが、これは私がKatyと同じ17歳の時に描いた漫画の一部です。
 当時の自作を見返すと、あんまりスクリーントーンは使っていません。上記61番と63番(30%アミ点)がたま~に出てくる程度です。理由は簡単で、買うお金がなかったからです。

 だからと言うわけではありませんが、最近の漫画はスクリーントーンの使い過ぎのように感じます。
 また。アミ点だけでなく、掛け合わせやフラッシュなど「手で描けよ」という柄のトーン…それどころか建物や木が印刷されたトーンまで発売されている現状はいかがなものかと思います。
たぶん、Katyも同じ思いを抱いているために敢えて説明をしなかったのでしょう。
 なお「スクリーントーン」という名称は、レトラセット社の商標です。


 さて、Katyはペンについて製図ペンを勧めてくれています。

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 …思いっきりピグマだったりします。
 昔は製図ペンと言えばロットリングだったのですが、あれは手入れが大変でした。今は各メーカーから使い勝手の良いものが出ています。
 私の手元にはサクラクレパスのピグマとパイロットのドローイングペンがあります。
 ただ、線の強弱を出すのにはあまり適していません。筆圧をかけると、ペンの先が割れたり曲がったりしてしまうからです。

 日本でも製図ペンやマーカーを使う漫画家が増えています。が、やはり「漫画」と言えば伝統的には付けペン(ペン軸にペン先を差し込み、インクに浸けて使うアレです)ですよね。

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▲これはKatyではなく、私が愛用しているペンです。左が丸ペン、右2本はGペンです。

 当然、Katy先生も付けペンについて紹介してくれています。
 「付けペンは、プロのアーティストが使ってるわ。色々な太さの線を描くことが出来るんだけど、使うのは難しいの
 …説明、以上。
 一応、これは原文の全てを引用しておきます。

Dip-pens:These are used by professional artists. You can get much more variety in line thickness with these, but they are harder to use.

…。

“but they are harder to use”

 私は英語が苦手なので、たぶん“harder”の訳し方が間違っているのでしょう。Katyは「自由自在に使えるのよ」と言いたかったに違いありません。きっとそのはずです。そう思うことにします。


 彩色用の画材についても色々教えてくれているのですが、マトモすぎて面白くないので長くなるので省きます。
 が、その彩色道具の最後が気になります。

「コンピューター:スキャナーを持っているなら、コンピューターを使って色を塗ることを考えてもいいかもしれないわね」

 さすがはKaty、新しい技術もちゃんとおさえているようです。

 現在は(日本だと)セルシスという会社からCOMIC STUDIOというソフトが出ていてコマ割りから下描き~仕上げまでの全課程をデジタルで行い、さらにそのままデジタル入稿することもできます。
 だからといって、コンピューターを使った彩色が古い技術となったわけではありません。デジタルならではの様々な表現が今なお生み出されているはずです。

 さあ、Katy先生、コンピューターをどうやって使うか教えてください!

「この本では深入りしないわ。あなたが色々研究して、凄い効果をあみだしてちょうだい」
 え"…。
 イキナリ突き放された気分。

 ちょっと英語に詳しい方の助けが欲しいところです。
 この部分、原文は「but we won't go into that in this book」。
 “don't”ではなく“won't”となっているのが気になります。“will not”の略ですよね。
 ってコトは、「~しない」という以上に「~したくない」という気持ちが込められているような気がしてしまうんですけど。
 
 深読みをしてしまうと、「私はコンピューターを使ったことがないの。だから項目としては挙げておくけど、これ以上突っ込まないで」という気持ちの表れではないでしょうか…。
 あ、いやいや、そんな邪推をしてはいけませんね。これまで見てきたように、「自分で考えろ」というのはKaty先生の教育方針です。きっとご自身はPhotoshopやPainterといったグラフィックソフトをバリバリに使いこなしているに違いありません。

 
 さて、これまで6回に渡って『how to draw Manga』に込められた奥義の概略をご紹介してきました。

 著者のKatyによる作例も取り上げてきましたが、彼女の漫画に対する思い入れやその技術の全てが込められたイラストが第5章のトビラ絵として描かれています。カラーではありませんが、まさにKatyワールドの集大成とも言うべきイラストだと私は感じています。

 次回はそのイラストを検証することで、『how to draw Manga』紹介の最終章としたいと思います。

 全米が泣いた!  Manga Super-Fanの少女・Katyがさまざまな困難を乗り越えてつかみ取ったのは、日本人も忘れかけていた漫画の心だった! この最終章を見ずして日本の漫画は語れない。