鳥取絹子・訳 宮津大輔・解説 紀伊國屋書店
アート市場はグローバル化によって発展をつづけ、アートは「世界
的にお得な取引」となったのだ。アート界の大物たちは、ふたたび
黄金郷を探している。アジアが新たな約束の地となり、コレクター
の顔ぶれはロシアの新興財閥からラテンアメリカ系に変わりはじめ、
夢のようなボーナスの額は上昇しつづけている
将来性のあるアーティストを発掘し、貴重な作品を見出すにも、ア
ーティストを売りだすにも、ネットワークにすべてがかかっている
上海の北東に位置するギャラリー地区、かつての紡績工場跡地は
「莫干山路(モーガンシャンル─)50号(M50)」と呼ばれ、その
面積は日に日に広がっている
「重要なのは、アートから生じる議論で、それは限りなく広がる可
能性がある。現代アートでは視覚と同じくらいに、いかに精神に訴
えられるかが問われる」(『インターナショナル・ヘラルド・トリ
ビューン』紙記者ソーレン・メリキアン)
アートは経済成長期には投機的な価値があり、不況時には金や宝石
のようなインフレヘッジになる
「東京が近代化するのに100年かかったところを、上海は10年とか
からなかった。アートでも同じことが起こっています。数年前まで
ならアジアのアーティストが有名になるには欧米へ渡らなければな
らなかった。ところがいま、アートはいたるところに開かれている。
さらに、新興国のアーティストを同国人がコレクションしはじめて
います」(ロレンツォ・ルドルフ)
2009年のコレクター部門でのトップはフランス人実業家のフラン
ソワ・ピノー
最初の発見者はどちらかというと中小のギャラリストであることが
多い。すでに名のあるアーティストを抱えたくとも資金的に余裕が
ないところだ。彼らの運命は直感と、そのアーティストがどう成長
していくかを判断する能力にかかっている
売上は折半するのが普通で、特別な注文で制作費が必要になる場合、
依頼者がそれを負担するが、ギャラリストはそこから25%ほどをと
るので、そのぶんアーティストの取り分は少なくなる
アート市場のグローバル化に巻きこまれた中国の現代アートは、
2004年ごろから急激に発展し、08年には世界的な競売会社の総売
上の3分の1を占めるにいたっている。
『巨大化する現代アートビジネス』ダニエル・グラネ、カトリーヌ・ラムール・著
鳥取絹子・訳 宮津大輔・解説 紀伊國屋書店
目次
イントロダクション
第1章 人気アーティストはいかに生みだされるのか?
第2章 アート界を牛耳る「100人」とは?
第3章 億万長者はなぜアートに大金をつぎこむのか?
第4章 競売──アートにどのように値段がつくのか?
第5章 金融危機は市場をどう変えたか?
第6章 アートを利用する高級ブランド?
第7章 アート・ラッシュ──アートが流行した背景とは?
第8章 中国の例外──世界最大級のアート市場はいかに生まれたか?
第9章 フランスの例外──芸術大国はなぜ国際市場で立ち遅れたのか?
巨大化する現代アートビジネス [ ダニエル・グラネ ] |