最初の音が出たときから凄かった・・・
ルイージ&N響がブッフビンダーを迎えてのブラームスのピアノ協奏曲第1番。
N響はドイツものが得意といったことは随分昔から言われたことですが「なるほどなぁ」と腑に落ちたことはありませんでした。
ドイツであれフランスであれ、何をやっても巧いので、とりたててドイツうんぬん言うかなあ・・という印象でした。
ところが、今日は、のっけから仄暗く、ズシリと重みのある太い音が響き渡りました。
ルイージはサイトウ・キネンでマーラーの1,2,5で大名演を繰り広げ、チャイコフスキーのオネーギンでオペラ指揮者としての実力を遺憾なく発揮するのを目の当りにしているので、その素晴らしさは知っているつもりでした。
それにしても今日のオケをドライブする敏腕にはほとほと感心しました。
音楽が生き物のように刻々と変化していく様は、眼前で奇跡を見せられているようでした。
それに加えてブッフビンダー!
私はコロナが蔓延する前年にウィーンのムジークフェラインザールでウィーンフィルとともにブッフビンダ―がベートーヴェンの三重協奏曲を弾いたのを聴いています(指揮はネルソンズ)。
その時は、曲が地味と言えば地味な曲だったということもあるでしょうが、あまりピンときませんでした。
今日のブッフビンダーの演奏は、とても鮮烈な演奏でした。
そもそもオケが音を出した瞬間にブッ飛ばされているのに、ピアノが入ったら、この人たちはどこまでの高みに駆け上がるつもりなの・・・というくらい凄まじい演奏でした。
ピアノが入らないときもとてもいいんです。
ピアノが入らないときはオケが語りまくるから、その音に包まれているだけで至福を味わい尽くしました。
ピアノが入ってもよし、入らなくてもよし、こんな素晴らしい演奏は実演、CDを通じて経験がありません。
意識してチェックしていたわけではないから見落としていたのかもしれませんが、ルイージとブッフビンダーはアイコンタクトありませんでした。このレベルの達人になると間合いを気で読み合っているのでしょうか・・難所も見事に、かつ軽々と合わせていました。
私は、土日は庭仕事があるのでコンサートを基本入れませんが、ルイージとN響は来春マーラー3番をやります。これはもう外せないですね。
ヨーロッパツアーもやるそうですが、ヨーロッパの聴衆は度肝を抜かれるのではないでしょうか。
先にウィーンフィルのことを書きましたが、私はその年ヨーロッパ各地を代表するオケを聴きました。オケも国際化が進んでいるのでそのオケの色みたいなものは希薄になっているように思います。
ウィーンフィルなど顕著にそれを感じます。
ベルリンフィルは多国籍集団ですが、圧倒的な機能美をカラーと言ってよいと思います。後はチェコフィル。確実に独自の音を持っています。ベルリンではハーティングの振るマーラー1番を聴きましたが、ビシュコフが振ったマーラー9番はベルリンよりさらに魅力的でした。
こんな強者たちがたむろしているヨーロッパですが、N響はその独自の存在感をきっと聴衆に刻み込んできてくれるものと思います。
私は今日の演奏を聴いてそれを確信しました。
クラシック音楽を聴く幸せを今日は心から堪能させていただきました。
後半は割愛します。
ブラームスで胸がいっぱいなもので・・・
ホールに向かう道から見えた夕映え
今日の2楽章が蘇るようです・・・