既に仕事にとりかかっていた朝方に、クラ友から骨子「今日と明後日のグリゴリアンを聴いてくる、特に明後日のサロメはとても期待できる」といったメールが届きました。

「推し」とか一言も書いてなくて、ただ自分はこの日にこれを聴きます・・というメールですが、行間に込められた圧(行くよねぇ、もちろん行くよねぇ、行かないわけないよねぇ)は凄まじく、グリゴリアンって何者なの?と思いました。

 

不勉強な私はグリゴリアンのことを知らなかったのですが、ザルツブルグで相当活躍し評判を獲得している方のようで、かつ、クラ友が薦めるのだから間違いないだろう・・とは思いつつ「明日もヒラリー・ハーンだしなぁ」といった後ろ向き思考も明滅しておりました。

 

プログラムを見ると、これは相当魅力的。

【第一部】

アントニン・ドヴォルザーク作曲

―歌劇「ルサルカ」

序曲 
“月に寄せる歌”

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲

―弦楽のためのエレジー「イワン・サマーリンの思い出」 

―歌劇「エフゲニー・オネーギン」

タチアーナの手紙の場 “私は死んでも良いのです”
ポロネーズ 

―歌劇「スペードの女王」

“もうかれこれ真夜中...ああ、悲しみで疲れ切ってしまった”

アルメン・ティグラニアン作曲

―歌劇「アヌッシュ」

“かつて柳の木があった”


【第二部】

ジャコモ・プッチーニ作曲

―歌劇「マノン・レスコー」

“捨てられて、ひとり寂しく”
間奏曲 

―歌劇「蝶々夫人」

“ある晴れた日に”

―「菊」 

―歌劇「ジャンニ・スキッキ」

“わたしのお父さま”

―歌劇「トゥーランドット」

“氷のような姫君の心も”

(実際にはトゥーランドッドは二部の最初に変更されました)

 

プッチーニにどっぷり浸かる時間・・というのも、これはなかなか贅沢な経験ができるなぁと思い、万難を排することにしました。

 

今日のような展開になることなど、もちろん想像もしていないわけですが、1週間程前から歌物を聴く機会が突如増えました。

ガランチャが、ティーレマン&ウィーンのバックでワーグナーとマーラーを歌っているアルバムを東京の家で、ピアノ伴奏でシューマンとブラームスを歌うアルバムを仕事場で。昨日は仕事場で、シューマン&ブラ―ムスがエンドレスで流れていました。

そこにグリゴリアンのコンサートへの誘い。

なにか「ご縁」のようなものを感じます。

ちなみに運転中は、アントニーニのハイドンにドップリですが、このCDについてはまた後日に。

 

クラ友は金曜のサロメをより楽しみにしているようですが、私はシュトラウスの暗黒系オペラ(私の勝手な命名です)のサロメとエレクトラは苦手だし、金曜は土曜からの庭師生活に入るため200キロ北にあるセカンドハウスに向かうので金曜は外しました。

 

今日は空模様が怪しく文化会館に着いたときにはじき雨が降りそうな感じでした。

実際終演時は降っていました。

 

無事、当日券を入手して開演へ・・・

 

オケが鳴り始めたとき、少々ビックリしました。

ガサガサしていて、これが最後までとなるとちょっときついな、と思ったのも束の間。

歌伴になったらとても生き生きとした良い演奏になりました。

 

グリゴリアン、初めて聴く方ですが、まあ次から次へと才能プラス研鑽を積まれた方が出てくるものだと驚きました。

弱音も綺麗だし、どれだけ声を張っても絶叫になりません。

前半は私にとって今日は暖気運転レベルでも構わなかったのですが、チャイコの段階でエンジン全開でした。

 

今日のメインのプッチーニは、まず私がプッチーニを大好きなので、曲からして文句なしでした。

中学の頃から敬愛するクラウディオ・アバドはプッチーニを全く認めていなかったそうですが、なぜなんでしょう。

真偽は定かではありませんが、アバド家の家訓でプッチーニNGとなっていると何かで読んだ記憶があります。

たしかにアバドにプッチーニの録音は全くないです。

ヴェルディはあれだけ録音してるんですけどね。

 

たしかにプッチーニって「歌謡曲」みたいだな・・と20歳の頃に感じたことがあります。

でも「歌謡曲」全然いいじゃん、という感覚なので、私は好きです。

長崎のグラバー邸にある銅像の前に立つと蝶々夫人が心を去来してジーンとしてしまいます。

歌無しのマノン・レスコーの間奏曲も、序曲とか前奏曲とかその類の中では一番好きで(シノーポリの演奏が初体験というのもラッキーでした。実演ではなくCDですが)、今日もしみじみといい曲だなぁと感じ入りました。

 

今日のプログラムなどヒットメドレーと言っても過言ではなく、期待どおりの夢心地の時間を過ごすことができました。

アンコールはトスカの「歌に生き、愛に生き」でお約束どおりのエンディングがこれまたよかった。

 

グリゴリアンのデヴューは、2017年のベルクのヴォツェックだそうで、私はヴォツェックのように音楽とガチで向き合う時間も好きですが(アバド&ウィーンではまりました。こちらも実演ではなくCDで)、気楽に優雅な時間をたゆたうプッチーニのような世界も好きで、今日はそういう時間を欲していたので大満足の2時間でした。

 

6月にロイヤルオペラハウスのシネマシーズンなるものでグリゴリアンの蝶々夫人を上映するようです(とチラシに書いてありました)。6月7日から13日。

今日の蝶々夫人のアリア「ある晴れた日に」もとてもよかったので、映画館を探して妻にも見せてあげたいなぁと考えております。

なにより私自身、オペラのセットの中で歌うグリゴリアンをとても観たいし、聴きたいです。