今朝も濃霧の朝。

連日、幻想的な風景の中、庭を巡っています。

昨日よりもっと霧深しです。

今朝は右端の塔すら濃霧で見えません。

(これは隣の田んぼで私の土地ではありません)

 

昨日はこんな感じ…右端に塔がぼんやり見えます。

 

昨日は、あまりに盛りだくさんの一日で、とてもワンテーマで絞れないので徒然なるままに記させていただきます。

相変わらず、ひとつの伏線から、その伏線に少しかすった程度の伏線に話が飛びそうな予感がしておりますが・・・ともかく昨日の朝、手にとった文庫から。

 

吉田秀和さんの「マーラー」(河出文庫)・・2011年初版で、初版を購入しているのでもう13年経ちました。

マーラーに関するたくさんのテーマで書かれた玉稿の集積で折りにふれて手にとります。

といいつつ、コロナ禍以来、私はマーラーと疎遠になり、もっぱらシューベルトにはまっているので、この文庫を再読したのは、最近、ショルティのベートーヴェンについて投稿したときに、この文庫の中の「ショルティのマーラーの交響曲」を再読した限りです。

そのままテーブルの上にあったのでパラっと開くと、「マーラー」という論考の一行目からいきなり凄い文章が登場します。

「マーラーはむずかしい、私には。」

たった一行です。

しかも次の文章は改行。

 

「メロスは激怒した。」

太宰治の「走れメロス」の第一文です(太宰は改行しないで第二文に続きます)。

小学生の頃、この一文に触れ、とても衝撃を受けましたが、それ以来の衝撃かもしれません。

高校生になって、なぜ私はメロスのこの第一文にかくも衝撃を受けたのか考えて自分なりに納得しました。

「そうか、太宰は音楽でいうとイントロなしにいきなりサビから入ってガシっとつかみにかかったんだな」

 

吉田秀和さんの「マーラー」の一行目も、いきなりつかみにかかります。

あの吉田さんが「マーラーはむずかしい、私には。」ですよ。

ほとんど「マーラーはむずかしい、全人類には。」に等しいです。

このあと、シェーンベルクの論文を引き合いにマーラーの魅力を存分に論じられておられます。

私が要約して紹介するなんて失礼なことはできないので興味のある方は是非河出文庫を手にとってください。

 

吉田秀和さんは、水戸芸術館の館長をなさっていたので、私はそのお姿を何度も芸術館でお見かけしております。

吉田さんが、私の視界に入る席にいらっしゃると、あのリストのようなヘアスタイルですぐに「ああ、いらっしゃる」とわかるのですが、いつも感心したのは、音楽を聴くときの「お姿」。いつも背筋をのばして凛とステージを真っ直ぐ見つめていらっしゃいました。

こんな風に音楽に向き合っていらっしゃるから、音楽のことをあれだけ深く深く論ずることができるのだなあ・・といつも感じ入っておりました。

「音楽は音楽以外の何物をも表現しない」

これはストラヴィンスキーの言葉ですが、音楽のみを表現している「音楽」を、内容はとてつもなく高度な内容であるにもかかわらず、私のような市井の人にもわかるように文章になさった氏の玉稿の数々。つきることがない学びがそこにはあります。

 

本当は、まだまだ、この伏線から続く伏線が山のようにありますが、既に相当の駄文を連ねてしまったので、今朝はあと少しだけにします。

 

太宰治の生年は1909年ですが、その10年前に太宰の故郷青森の隣の岩手県に宮沢賢治が生を受けています。

宮沢賢治がコートを羽織って畑をうつむきがちに歩いている写真は、ベートーヴェンの姿に憧れてあのポーズをとったという話の真偽はともかく、宮沢賢治は「雨ニモマケズ」で誰もが知っている詩人であり童話作家です。

はい、これが「雨ニモマケズ」です。

 

はっ・・・ですよね。

これは宮沢さんと同郷の育種家吉池貞蔵さんの手になる「雨ニモマケズ・リバーシブルピンク」という作品です。

吉池さんの作品には、このほかにも「イーハトーブ」等、宮沢賢治にちなんだ作品がたくさんあります。

うちの「雨ニモマケズ」の周囲はスズランが群生しており(スイセンの葉っぱのようなのがスズランです)「こんなところでバラを育てるな」と怒られてしまいそうな環境ですが、ピンクのバラと白い可憐な花をつけるスズランの競演はなかなかのものなので折り合いをつけながら育てています。

 

今、聴いているのはケント・ナガノ&モントリオール交響楽団のベートーヴェン田園。

もともとは吉田さんの文章にふれ、小澤征爾さんが水戸室内管弦楽団を振った第九を聴きたくなり、第九を聴いたあとに、

もっとベートーヴェンを聴きたいと思い、CD部屋のベートーヴェンコーナーを漁ったところ、たまたま引っ張り出してきたCDですが、これとてもいいです。昔ながらの大きな編成のベートーヴェンです。

ちなみに私は水戸室内管弦楽団のような小編成のオケも大編成のオケもどちらも好きです。

演奏がよければ編成はどうでもいいです。

英雄を聴いてみたら「あれっ、こんなによかった」と少し驚き、あれこれ聴いてます。

今日は(今日もか)庭仕事に明け暮れますが、おそらく今日中に残り全曲聴くと思います。