2024年1月23日 サントリーホール

プレトニョフ&東フィル

 

「ブログ開設のご挨拶」を2月初旬に下書きしてから、ご挨拶すら投稿できないまま早一月が経過してしまいました。

去る3月6日になって、ようやく2月初旬に書いた「ブログ開設のご挨拶」を投稿することができました。

今年は年初からコンサートの当りが続いたこともあり、今年こそきちんと記録を残そうと決意したのに仕事が集中して入ってしまい未記載のコンサートが山積みです。

未記載のコンサートは現時点で12本。気を取り直してこつこつと書くことにします。

 

令和6年のクラシックコンサートの幕開けはプレトニョフ指揮&東京フィル。

なお、12本分溜めてしまったこともあり、追いつくまでは、コンサートの演目を全て記載しない場合もありますが、このコンサートは全て触れます。

シベリウスのカレリア。

最初の音が出た瞬間に溶けました。

東フィルは、指揮者によってとんでもなく繊細な音を出すことがあります。

今年初のサントリーでの実演ということで私自身テンション高めですが、それを割り引いても、最初の音から深く心に刺さりました。

指揮者によってオケの音はこんなに変わるんだということはしばしば経験することです。

 

例えばスクロバチェフスキが振る読響はコクが明らかに深まりました。

今日の東フィルはお見事というほかありません。

それにしてもプレトニョフの指揮は10年以上のご無沙汰でしたが、こんなにミニマリズムの極致のような最小限の振りで細やかなニュアンスとダイナミズムを操る指揮者でしたっけ・・という感じでした。

カッコよかったです。

定期会員になるかどうかは、年間プロを見てから判断するので、その年のプログラムの内容によって会員になるかどうかは年ごとに変わります。

今季は東フィルとN響、読響の会員です。

東京交響楽団も非常によいプログラムが目白押しですが、週末は東京から約200キロ北上したところでバラ栽培に精を出すので、土日が中心となる東京交響楽団は見送りとしました。

この日は、東フィルの会員になって本当によかったと思いました。

私は、定期会員になってはいるものの、全プロにメッチャ行きたいというわけではありません。行きたいプログラムが相当割合を占めるので今年は会員になろうかな、といったところが実際で、実はプレトニョフはメッチャ行きたい指揮者ではありませんでした。

プレトニョフはベートーヴェンのピアノ協奏曲(DG)がとてもよかったので、交響曲全集も期待して購入したもののこちらはかなりがっかり。田園の終楽章の入りの手前、つまりスコア上は4楽章の最後の箇所の扱いがあまりに恣意的。

英雄の1楽章の揺れも船酔いになりそうな気持の悪さでした。

私は、基本的にスコアからあまり離れた演奏は好みません。

加えてその頃に報道されたあまり芳しくない事件も「この人引くなあ・・」といったネガな印象を加速させました。

 

横道にそれますが、アーティストが事件を起こしたときに映画がお蔵入りになったりCDが撤去されたりすると

「作品には罪がない」といった議論が起きます。作品に罪がないことは当然ですが、それでも事件の内容によってはその作品に接したくないなと感じてしまうこともあります。

そのアーティストに対するネガな印象によって「私の」そのアーティストの作品に対する印象がくすんでしまう場合もあれば、作品の圧倒的な素晴らしさゆえに作品の輝きが失われない場合があるからです。

アーティストの愚行と完全に切り離された独自の生命を持つに至った作品は確実に存在すると思います。

その典型がレヴァイン指揮ウィーンフィルのモーッアルト交響曲全集。

報道されたレヴァインの行為は許されるものではないし、犯罪の中でも私の嫌悪度がかなり高い犯罪でした。

でも、その後も彼のモーッアルトは私の中ではくすむことはありませんでした。

25番1楽章の切れば血潮が噴き出るような演奏はレヴァインならではのもので、報道後もそれは些かも変わりません。21番といったあまり縁がない楽曲が、かくも魅力的な音楽だということを教えてくれたのもレヴァインでした。

 

ただ、プレトニョフは、ベートーヴェンの交響曲全集が??だったことに加え、報道された事件のこともあり、約10年強距離がありました。

定期会員でなければ縁はなかったでしょう。

でもプレトニョフのシベリウスは抗しがたい魅力に満ち満ちていました。

ガルシア・ガルシアとのグリーグピアノ協奏曲もガルシアの若さ弾けるピアノを余裕の包容力でがっちりサポートしていました。

特に3楽章のフルートには心が震えました。いつ聴いても雲間から冷気をさいてキラキラした光が降ってくるような感じがしますが、今日のキラキラ感はハンパなかったです。

中学生の頃は1楽章の冒頭から豪快に鳴りまくるピアノが好きで好きでたまらなかったのですが(当時はリヒテルのレコードを愛聴していました)、今は3楽章のフルートを楽しみに聞いているといっても過言ではありません(最近の愛聴版はアリス・紗良オットさん)。

 

圧巻はシベリウス交響曲第2番。

シベリウスはなかなか仲良くなれない作曲家で、ベルグルンドの3種の全集もヤルヴィの全集もなんとか仲良くなりたくて聴きましたがどうにもソリが合いません。去年の秋にサントリーでマケラ&オスロフィルで2番と5番を聴きましたが(そうだ、マケラも全集持ってます)、私のコンディションが万全でなかったことも多分にありますが、どうも刺さりませんでした。

この日の第2番は最初から最後まで刺さりまくりました。

他の曲もプレトニョフで聴いてみたいなと思いました。

ちなみに、ここ最近のCDでは沖澤さん&読響の2番が出色の演奏です。沖澤さんのことは一昨年の松本のフィガロ等々、書くことがたくさんあるので別の機会に譲ります。

 

今年、最初のコンサートは大当たりでした。

演奏のクオリティや聴衆のマナーの関係で「コンサートはもういいか」と思うことが時々ありますが、年初早々「やっぱりコンサートはいいなあ」と思わせてくれる一夜でした。