回復期病院から退院してしばらくしてから電車やバスに乗るようになった。リハビリの頻度を上げたくて自費リハに通い始めたからだ。自費リハ施設に行くのにバスと電車にはどうしても乗らないといけない。

 

 杖をついていて足がヨタヨタしている時期なので優先席に座っている人は私に席を譲ってくれることが多かった。ただ毎回ではないが遠慮していた時があった。いくつかその理由について列記してみる。

  • 動いている車内で動くとバランスを崩す時があり怖かった
  • 座った後に立ち上がるという動作が苦手だった
  • 杖だけで立ち上がることにが不安定だった
  • 麻痺側の腕が外側に動き麻痺側に座っている人に腕が当たってしまう
  • 足が横に動きにくいのでバスの正面向きの席には座りにくい

などがあろうか。もっと他にも理由があったかもしれない。病気になる前は、私は優先席に座ることはなかった。自分が優先席に座ることはちょっと罪悪感を感じるし、席を譲るために他人に声を掛けることが親切心の押し付けに思われるのではないかと恐れがあったからだ。それなら最初から優先席に座らないほうが気が楽だった。私は通常の席に座っている時でも席を譲るほうだったと思うが、遠慮されると実は困る。こちらはささやかな勇気を出して譲っているのに遠慮され立たれると、私が席を譲ろうとしていないように周辺の人から思われるからである。それに譲ろうとして立ち上がってから断られたので座りなおすのもちょっと気が咎める。バスであれば降りる場所じゃないのに降りたことは何度もあったし、電車であれば一旦降りてから隣の車両に乗りなおすこともあった。

 

 体の調子がだいぶ良くなった今は席を譲ってくれる人の言葉に甘えて座るようにしている。席を譲ろうとしている人の気持ちに応えたいからだ。ここでちゃんとお礼を言って座ると譲ってくれる人も気持ちがいいはずだ。この人はこれからも席を譲ってくれるようになるかもしれない。Win-Winである。とはいえ、両側に人が座っていてポールがないところに座るのはちょっと躊躇してしまう。まだ体が安定していないんだろう。

 

 席を譲ってもらうこがと多くなるとそれが当たり前に思ってしまう時があり自分としては困ってしまう。誰も席を譲ってくれないとイラっとしてしまうのが嫌だ。イラっとしたくないのに、席を譲ってもらえないだけでイラっとしてしまう。実際、優先席であっても身体障害者や老人に席を譲ることは義務ではないのだが、慣れとは恐ろしいものである。こういうときは揺れる車内で立っていることはリハビリにも良いのでいい機会を与えられたと思うようにしている。ただ、席を譲ってもらったときにはその親切心に出来るだけ添うようにしたい。