ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第93章 ストリップと同性愛(ホモ) ~三島由紀夫「仮面の告白」を読んで~ の巻

 

 

 さて、前回、ストリップで同性愛とくればレズビアンとして話したわけだが、さすがにストリップでホモセクシャルはないだろうと思うだろう。ところがどっこい、最近は時代の流れか、ストリップのステージでホモセクシャルを演ずるものまで出てきた。男同士ではなく、もちろん女性が男装して演ずるものである。男同士が演じたら気持ち悪くてひいちゃうよね。ご安心下さい。でも、最近はほんと綺麗な男の子がいるよね。そういうAVジャンルもあって、表紙を見ると並みの女の子では全然叶わないような可愛さをもっているのに驚いちゃうもんね。おっ! 話を戻します。

   既に、この童話シリーズで最初の方(第8章 踊り子‘TEAMまんこ三姉妹’、BL(Boys Love)に挑戦の巻)で採り上げました。忘れているかもしれないので、もう一度ご紹介しますね。

 2016(平成28)年だから、今から5年ほど前のことになるか。

SMパフォーマンス系の栗鳥巣さんと京はるなさんの二人に、東洋所属のアイドルである渚あおいさんが加わった三人のチーム「TEAM BOYS LOVE」は、女性でありながら男装してホモ(レズ?)ショーを演ずる。2016年の2月頃、TSミュージックで、この三人に美月春さん(渋谷道劇)とが一緒にチームショーを演じたのが始まりのようだ。それがTwitterで漫画家(たなかときみ)に紹介され、人気が爆発した。彼女たちの男装がかわいい&かっこよく、特に女の子の心を激しく掴んだようだ。熱心なストリップ女子が連日劇場に顔を出すようになり、ストリップ界に革命を起こした。いわゆるスト女の台頭という社会現象がこの辺から本格化する。

私の観たチームショーの内容は次の通り。

二人ずつの組み合わせでそれぞれ別々の演目を行っていた。

栗&京は『コウシン』。「エッチな動画でひと儲け」、「パンチラ高校生」。

栗&渚は、『コウヒロ』。

京&渚は、『天使』。渚が男の子の守り神のような天使を演ずる。

コウシンとかコウヒロって何? アニメのキャラクターで、コウ役は栗、シン役は京、ヒロ役は渚、そして前者がタチ(攻め役)で後者がネコ(受け役)ということらしい。

このチームTEAM BOYS LOVE」が始まると、たくさんの男女ファンがペンライトを片手に熱く声援をおくる。場内が異常な盛り上がりをみせる。中には感動で涙する人までいる。

もう渚あおいさんと美月春さんが引退してしまったので、今や、このチームショーは観れなくなってしまった。非常に残念である。

 

 ストリップ界に、こうした「TEAM BOYS LOVE」が登場した背景には、LGBTの社会的認知が進んでいることがあげられる。いうまでもなくLGBTとは、女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の各単語の頭文字を組み合わせた表現である。あえて説明を要しないと思うが、トランスジェンダー(T)とは、“自身の性と心の性が一致しないが、外科的手術は望まない人”のこと。

 

 さて、先に同性愛(レズ)の話で文豪ネタが少ないと話したが、こと同性愛(ホモ)の方はネタが豊富である。ネットを見たら、わんさか出てくる。

 

 【偉人】歴史に残る同性愛者10人として、颯爽たる名前があがっている。

 織田信長、ピョートル・チャイコフスキー、オスカー・ワイルド、サマセット・モーム、折口信夫、川端康成、三島由紀夫、ジャン・ジュネ、媚癒夢姉貴、田所浩二 

  今だったらジャニー喜多川も入ってきたかな(笑)

 

 次に、同性愛文学作品で検索したら、次の作品が出てきた。

『秋月物語』上田秋成

『ヰタ・セクスアリス』森鴎外

『卍』谷崎潤一郎

『仮面の告白』三島由紀夫

『ソドム百二十日あるいは淫蕩学校』マルキ・ド・サド

『カラマーゾフの兄弟』フョードル・ドストエフスキー

『ヴェニスに死す』トーマス・マン

『泥棒日記』ジャン・ジュネ

『女神問弧印(めがとんこいん)』媚癒夢姉貴

『淫夢物語』というジャンルがあるんだね!!!!

 なるほど、この文豪シリーズに採り上げたものもあるけど、知らないものもたくさんある。『卍』だけレズもので、他は全部ホモもの。それにしても私の勉強不足を痛感する。世界は広い。こりゃ、文豪シリーズもまだまだ先が長いなぁ~と思わせられる。

 

 ということで、今回の文豪ネタは、この中から三島由紀夫を取り上げる。

 今やLGBTなど性の多様性が認められる時代であるが、全くそんなことが認められていなかった昭和初期の時代に同性愛を赤裸々に描いた文豪がいる。今回採り上げるのは三島由紀夫の『仮面の告白』である。これは当時一大センセーションであった。

 

 三島由紀夫にはひとつ因縁がある。

 なぜなら、今回の私の文豪シリーズは、もともと太宰治からスタートしている。

 三島由紀夫は太宰治が嫌いだったというのは、文学通なら誰もが知っている有名な話である。三島はボディビルで身体を鍛えたムキムキマンだし、男色だし、鉢巻をして割腹自殺した三島事件のイメージからすれば、女にだらしがない、女々しい作品が多い太宰とは相いれなかったは想像に難くない。三島は大学在学中の21歳のとき、既に文壇デビューしていたこともあり、ホテルで太宰の記念パーティ(『人間失格』発表?)があったときに出席した。そこで立ち話として、三島は太宰に向かって「私はあなたのことが嫌いです」と言った。それに対して、太宰は「私に会いに来たくらいだから本当は嫌いじゃないのでしょう」と受け流したというエピソードがある。まだ学生で文壇新人である三島に比べ、太宰の方が一枚も二枚も上手だったようだ。三島はカリカリしたと思う。

 ところが、その翌年に、太宰は女性と入水自殺してしまう。三島としても相当ショックだったと思う。感情のぶつけ先がいなくなってしまったわけだ。自殺とともに太宰の『人間失格』は話題を呼び売れまくる。いまや『人間失格』は日本で一番売れた小説である。

 しかし、三島は負けなかった。その翌年に三島は24歳で『仮面の告白』を発表して文壇にセンセーショナルを巻き起こすことになる。この『仮面の告白』で三島は若くして文壇の第一人者になる。

まぁ後々には、三島は、太宰が書いた童話集『御伽草子』を読んで感激し、先の嫌い発言を撤回したらしいが。天才である三島は同じく天才である太宰の凄さを見抜いていたことは間違いないことだろう。

 そのエピソードからも、太宰に傾倒していた私としては最初、三島文学に触れるのは、どこか抵抗があったことも確かである。また三島文学は難解だという先入観もあった。しかし、同性愛(男色)を書いた文豪作品をネタにするなら、三島の『仮面の告白』を読むしかないなと思った。

 

 ちなみに、三島20代の総決算として書き上げた長編小説『禁色(きんじき)』(三島28歳で刊行)も男色がテーマである。女性に裏切られ続けた老作家が、同性愛者の美青年を利用して女性たちに復讐する物語です。しかし、センセーショナルな内容であるため、『仮面の告白』と同様、同時代の評論家からは高い評価は受けられませんでした。

 

『仮面の告白』を読んで、印象に残った箇所を紹介したい。

 主人公の「私」は、子供の頃からじわじわと自分の男色について気づいていきます。そのじわじわ感がたまらなく丁寧に描かれる。

1つ目は、糞尿汲み取り人の若者です(当時はいわゆるぼっとんトイレが主流だったため)。私は、糞尿を運ぶ彼の姿に釘付けになりました。そして「彼の股引(ももひき)になりたい」という欲求に襲われます。

2つ目はフランスの英雄・ジャンヌダルクです。私は、凛々しくて勇敢な彼に夢中でした。ところが、ある時ジャンヌダルクは「彼」ではなく「彼女」であることを知ります。私はその時、裏切られたようなショックを受けたのでした。

3つ目は汗です。軍隊の行列が家の前を通るとき、多くの少年たちは銃や軍服に憧れました。ところが私が惹かれたのは、彼らの汗の匂いでした。

そして決定的だったのが「聖セバスチャン」との出会いでした。13歳の時、私は「聖(サン)セバスチャン」という絵と出会います。そこには、杭にたくましい腕をくくりつけられた美青年が描かれていました。腰に布をゆるく巻いた、ほぼ全裸の青年の身体には矢が刺さっていて、彼は憂いに満ちた表情を浮かべています。私は、この絵を通して初めて官能的な悦びの存在を知ったのでした。つまり、この絵で射精しちゃったんだね。

三島を理解するためのキーワードは、血・死・筋肉質な肉体です。小説の中の主人公が強く惹かれたのは、ギリシャ彫刻でよく描かれるような強靭な肉体を持つ青年が、矢で射られて血を流して苦しんでいる絵です。

物語は、その後中学2年生になってから、近江という男に出会います。近江は素行が悪い生徒で、筋肉質な体の持ち主でした。彼が体育の時間に懸垂をしたとき、その二の腕の筋肉の隆起から、私は目が離せなくなります。それは「聖セバスチャン」と重なりました。そして彼に恋愛感情を抱きます。しかし素行が悪かった近江は、退学処分になってしまい、主人公は近江との突然の別れを経験します。

後半は、園子という女性と出会い「美しい」と感じます。しかし本質的に男色の主人公は「自分は男と女のどっちが好きなんだ?」と悩み葛藤します。

 決定的なのは物語の最後のシーンです。

園子とデートしていた喫茶店の中で、浅黒い半裸の若者が目に入ります。筋肉によって凹凸のある立派な身体の持ち主です。そして次の瞬間、私は彼から目が離せなくなりました。彼の腕には、牡丹の刺青が入っていたのです。その瞬間、もう目の前の園子のことは見えなくなります。

 別れ際、私は若者の方を振り返りました。しかしそこには誰もおらず、こぼれた飲み物だけがぎらぎらと光りました。ラストシーンがとても印象的です。

 

 

 ちんぽ三兄弟は「TEAM BOYS LOVE」の話が出たときにニヤリと微笑んだ。

 彼等は「TEAM BOYS LOVE」が大好きだった。個人的には、渚あおいさん(東洋所属)や京はるなさんを応援していた。だからチームショーが始まるとペンライトを夢中で振ってステージを盛り上げていた。お陰で、たくさんの女性客とも親しくなれた。

 彼らはストリップ太郎から三島由紀夫の話を聞いて怪訝な顔をした。

「ところで、三島って本当にホモだったのかな…?」

というのは、三島由紀夫がふつうに結婚しているのを知っていたからである。

ストリップ太郎がこの点について補足した。

「そう、三島由紀夫は33歳のとき川端康成の媒酌で画家杉山寧(やすし)の長女瑤子(ようこ)と結婚している。相手は日本女子大2年生。友人に彼女の写真を見せられ一目ぼれして見合いした。一回りも歳が違う21歳の若妻。娘と息子の二人の子供をもつ。」

 余談になるが、三島(本名平岡)の息子さんの名前は平岡威一郎(ひらおかいいちろう)さんと言う。生年月日は1962年5月2日、慶応大卒。映画監督の市川崑に師事し、父・三島の原作の映画「春の雪」(2005年)では、「三島威一郎」を名乗って、企画・監修をしている。

「こう見ると、ほんとうに男色なのかなぁと疑問をもつね。文学者というのは往々にして、読者の関心を引くため、みんながおっ!と思うような面白いテーマを選ぶものだし。なんせ三島が23歳で『仮面の告白』発表した昭和23年当時は、今のようにLGBTが認められるような時代とは全く違うからね。」

 これに対しては、ちんぽ三兄弟の一人は「きっと彼の結婚は世の中の目を欺くためのもんだった。彼が男色だったのは間違いないと思うよ」と言う。

たしかに、この『仮面の告白』は自伝的な告白小説だと世間的に認識されているし、小説を読んでいると納得させられてしまう。本物の男色でなければ、これだけの心理描写は書けないからね。

「まぁ今となれば、男性も女性も愛せるバイだったという結論になるのだろうね。」

 みんなは頷き合った。

 

                                     つづく