ストリップ童話『ちんぽ三兄弟』

 

□第85章 ストリップと脚フェチ ~谷崎潤一郎の世界と絡めて~ の巻

                          

                                    

 谷崎潤一郎の作品は『痴人の愛』から読み始めたが、読んでいて、作家の谷崎がかなり強烈なる脚フェチであることがすぐに分かった。脚フェチこそが本長編における最高の味付けであり、一度読み始めた読者を絶対に放さないという刺激フルなモチーフなのである。『痴人の愛』では主人公が何度も悪女であるナオミの言動に振り回され嫌気をさして彼女から離れようとするも、物語の最後の最後には、主人公は憧れの女性ナオミの足に踏まれることで彼女の魅力にひれ伏していく。谷崎の他の作品にも、『富美子の脚』など脚フェチをテーマにした作品は多く、晩年の名作『瘋癲(ふうてん)老人日記』では「女の足をかたどった墓石の下で、死んでも踏まれ続けたい」 と書くほど。

 

  現代では、脚フェチを公言する男性は多い。

 私としても、女性の美しさを語るうえで、脚の魅力に気づいている男性はとても粋だと思う。人間は視覚から80%の情報を得るという。相手が美人であるかどうかはルックス・スタイルを見て決めるが、スタイルの重要なポイントが足なのである。太くて短い、いわゆる「大根足」ではダメなのである。

 だからこそ、女性は足の美しさに過敏なる神経を使う。とにかく長くほっそりとして見せたいので、かかとの高いハイヒールを履く。本来、ハイヒールは歩行上かなり危険なのであるが、女性にとっては美が最優先になるので、危険なんてかえりみない。

 脚フェチというのは、そうした男女の共通の認識のもとに生まれてきた男性の性癖である。これを変態と呼ぶにはいささかかわいそうなところ。品の高い変態さんなのである。

 

 ストリップのステージで、脚の綺麗な踊り子さんは最高である。長い脚に形のいいヒップライン、颯爽と歩く姿を見ているだけで崇高なビーナスになる。同時に涎が出る。(笑)

 

 さて、ストリップと脚フェチについて語ろうと思うと、このストリップ業界で非常に有名な客がいる。名前は知らない。でも一度、彼の行動を見たら忘れられなくなる。

 彼は、女性の足の裏に強い興味がある。ポラ撮影では、せっせと踊り子さんの足の裏だけ撮る。誰もが性器を撮りたがっている中に、性器には目もくれず、ひたすら足の裏だけ撮るのだから目立つ。異様な光景ではあるが、決して違反行為ではない。ストリップでも局部のアップ写真は異常行為とみなされるわけだが、考えてみれば、中には顔のアップ、それも目だけ鼻だけ唇だけ耳だけ、中には臍だけを撮る人もいる。ただ、そういう人は好きな女性の全てを知りたい、写真に収めたいと考えるのであって、全身を撮っている。しかし、さすがに足の裏までは撮らない。だから、彼のようにたくさんの踊り子の足の裏を撮りたがる客は珍しいのである。

 足の裏というのは撮影を禁止されている特段マズイ箇所ではない。だから踊り子も笑って応ずる。これに気をよくして彼は何枚もパチクリと写真を撮る。周りの客は唖然として見ている。

 ある意味、踊り子も周りの客も彼の行動を微笑ましく見ているところがある。誰も非難なんかしない。そういう趣味の人もいるんだねと面白そうに眺めているのである。

 踊り子は、彼の性癖を理解し、足の裏を観ると興奮するのだからと、オープンショーでは、かぶりに座っている彼の顔先に足の裏を近づける。彼は真剣な表情で足の裏を眺める。彼が興奮しているのを踊り子は喜ぶ。ふつうの客は局部を近づけると喜ぶわけだが、踊り子としては客個人ごとに好みが違えばそれに合わせるのが商売上の上手である。彼が自分の客になり、また足の裏のポラを撮ってくれれば嬉しいわけである。

 踊り子の中には、オープンショーのときに、足の裏を近づけるだけでなく、直接彼の顔に足の裏で踏みつけるサービスをしてくれる。本当はストリップのルールとして触れてはいけないのであるが、踊り子の厚意なので問題ない。それを見て、客が羨ましく思うこともあるだろうが、だからといって、同じことをやってくれと踊り子に頼む客はいない。それだけ特殊な行為なのである。

 

 なにに興奮するのかな? ちょっと妄想してみよう。

 まず、足といえども一人一人違うのかな? スポーツ選手だと全然違うだろうな。踊り子も激しいダンスで足の裏が一人一人違うのかもしれない。一日中立ち仕事をしている女性の足の裏にはタコやマメができるらしい。ある夫は妻のそんな足の裏が愛おしいと言ってマッサージする夫婦の話を聞いたことがある。足の裏も愛情の対象となりえるわけだ。

 やはり、女性一人一人、顔が違うのと同じく、足の形も指の形も違うのだろう。女性の顔にキスしたくなるのと同じく、足の指や指の間を舐めたくなる。女性の足をかいがいしく持ち上げて、女神様への奉仕として舐める。女性としても、そこまで愛撫してくれる男性のことには愛おしく思うことだろう。

そう思えば、足の裏に興味を持つという行為は、全然異常な変態どころではない。フェミニズムの世界では一般的なことであろう。単に異性のある特定の部所に興奮するだけの話である。

 

 ストリップでは、ポラだって自由にたくさん撮れるわけだから、この趣味を味わうことも可能である。思えば、安上がりな趣味かもしれないな。プールや海水浴に行ったらいくらでも見れそう。しかし、足の裏って、いつでも見れるわけではない。いつもは靴や靴下の中に隠されているからね。それを見せてくれ!と女性に頼むのも変だ。やっばり難しいのかな。足の裏だけの写真集やビデオなんて滅多にないし。だからお金をだしてストリップ劇場でポラ写真を撮っているのかぁ~と思う。そう思うと同情したくもある。

 

 足の裏のように特殊な部位に異常に関心をもつフェミニストというのは、隠れてこそこそ楽しむのがいいのかもしれない。彼の場合、ストリップ劇場で周知にさらされるから目立ってしまったが、本来そういう趣味の人はアングラに楽しむものなのであろう。

 世の人はそれを変態と呼ぶ。でも彼の行動を見ていると、かわいくも感じられる。変態なんて、人に迷惑をかけなければ当然に許されていいのだと思う。だから、踊り子さんたちは彼のことを面白がり、かつ愛しい対象として過剰サービスをしているのだろう。気持ち悪い変態なら寄せ付けないはずだからね。

 特殊な変態というのは、アングラの世界で、お金を使い楽しむもの。そういう人がけっこういて、アングラなSMクラブなどは流行っているようだ。男の客側にそういう要望があれば、それに応えてくれる女性側もいて、商売として成り立つ。趣味の世界で楽しむクラブでもいい。そういう刺激を求め叶えてくれる場があることが、選択の自由を貴ぶ、今の世の中の平和な象徴だと思える。

 だから、隠れてやる分には問題ないと思う。

 金のない変態さんは、先ほどの彼のようにストリップ劇場にやってくる。ストリップ劇場というのは、安い料金で、女性のヌードを楽しめ、ときにエロポラ収集、下着収集など男性の異常な性癖を慰める。足の裏を好む彼もそう。中にはSM趣味でチップをやって頬を叩いてもらい喜ぶお客さんもいる。つまり「変態さん、いらっしゃい!」というのがストリップ劇場のひとつの顔でもある。それが安い料金、庶民の小遣いで楽しめのがストリップ劇場の良さでもある。

 

 ただ、ストリップ劇場は公共の場だとの考え方が大事だと私は思う。

 ステージの上では人の目がある。そこで本番行為とかエログロ行為を演ずるのはやはり行き過ぎである。ふつうの一般人である客が眉を顰める企画ものは避けた方がいい。

 昔はなんでもアリということで、本番生板ショーまであった。エログロ企画として、白黒ショー、SMショー、獣姦ショー、出産ショーなんてものもあった。風営法の規制もあり、これらは一掃された。そして、人気の高いSMショーなどはアングラな世界に移っていった。

 ときに変わった企画は、通常のストリップに飽きた客層の刺激になる。だから、SMショーなどを特別企画として期間限定で開催することもある。しかし、私はストリップ劇場は健全なストリップに限定すべきだと思う。せっかく女性客も増えたし。やはりダンス鑑賞やヌード鑑賞など美としてみんなが楽しめるものがいい。ストリップは今のアイドル路線でダンスパフォーマンスを主として続けていくべきだと思う。そうすることがストリップを生き残していく唯一の道だと思う。

 

                                     つづく